鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理代行への引き継ぎで失敗する5つの原因と対策

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経理担当者の退職や休職、経理体制の見直しをきっかけに、経理代行へ業務を引き継ぐ会社があります。

経理代行を利用すれば、社内の作業負担を減らし、特定の担当者だけに業務が集中する状態を見直しやすくなります。

ただし、経理代行への引き継ぎでは、前任者から後任者へ業務を渡す場合とは異なる準備が必要です。

特に、次の点が曖昧なままでは、契約後も業務を開始できない可能性があります。

  • 経理代行へ委託する業務
  • 会社側に残る業務
  • 資料の共有方法
  • システムの利用権限
  • 社内の確認・承認担当者

この記事では、社内の経理業務を経理代行へ引き継ぐ際に起こりやすい5つの失敗原因と、その対策を解説します。

経理の属人化を解消するための考え方を全体から確認したい方は、以下の記事をご覧ください。

合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法

目次

経理代行への引き継ぎで確認すべきこと

経理代行への引き継ぎでは、業務手順を説明するだけでは十分ではありません。

経理代行側と会社側が、どのように資料を共有し、どの段階で確認や承認を行うのかを決める必要があります。

主な確認事項を整理すると、次のようになります。

確認項目確認したい内容
委託範囲経理代行側と会社側が担当する業務
資料共有提出する資料、保存場所、提出期限
システム権限利用するサービス、付与する権限
確認体制不明点への回答者、月次資料の確認者
承認体制請求内容や支払いの最終承認者
開始条件業務を始めるために必要な準備

これらが決まっていなければ、経理代行会社が業務内容を理解していても、実際の処理を開始できません。

原因① 経理代行へ委託する範囲が決まっていない

経理代行への引き継ぎで最初に整理したいのが、委託する業務の範囲です。

例えば、次の業務をどこまで依頼するかを決めます。

  • 記帳
  • 請求書の発行・管理
  • 入金確認
  • 支払予定表・振込データの作成
  • 経費精算
  • 給与計算
  • 月次資料の作成

経理代行へ依頼する業務だけでなく、会社側に残る業務も明確にする必要があります。

例えば、請求金額の決定、取引内容の説明、支払いの最終承認、振込実行、経営判断などは、会社側で対応することがあります。

委託範囲が曖昧なままでは、同じ作業を双方が行ったり、反対に誰も対応しない業務が発生したりする可能性があります。

引き継ぎ前に、次の3つへ分けて整理しましょう。

  • 経理代行側が行う業務
  • 会社側が行う業務
  • 経理代行側が作成し、会社側が確認・承認する業務

経理代行で依頼できる業務や導入までの流れについては、以下の記事で確認できます。

合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説

原因② 資料の共有方法が決まっていない

経理代行会社は、会社から共有された資料やデータをもとに業務を進めます。

ところが、次のような状態では、必要な情報を確認できません。

  • 請求書の保存場所が部署ごとに異なる
  • 領収書が紙とPDFに分かれている
  • 支払予定表が担当者のパソコンだけに保存されている
  • 過去の月次資料が複数の場所に分散している
  • 提出期限が決まっていない

資料が存在していても、どこに保存され、誰が提出するのかが分からなければ、引き継ぎは進みません。

経理代行へ業務を渡す前に、少なくとも次の点を決めます。

  • 共有する資料の種類
  • 資料の保存場所
  • ファイル名の付け方
  • 提出する担当者
  • 毎月の提出期限
  • 不足資料がある場合の確認先

紙、PDF、メールなどに分散した資料を整理する方法については、以下の記事も参考になります。

合わせて読みたい:証憑の保管ルールを統一化!紙・PDF・メールの整理方法

原因③ システムの利用権限が整理されていない

経理代行へ業務を委託する場合、会計ソフトやオンラインストレージなどへのアクセスが必要になることがあります。

引き継ぎ時には、次のような問題が起こりやすくなります。

  • 会計ソフトの管理者が退職予定者になっている
  • 必要なアカウントを発行していない
  • オンラインストレージの閲覧権限がない
  • 経費精算システムの承認者が以前の担当者のままになっている
  • 不要になったアカウントが残っている
  • 誰が管理者権限を持っているか分からない

引き継ぎ前には、利用しているシステムを一覧にし、次の点を確認します。

  • システムの管理者
  • 経理代行側に必要な権限
  • 会社側に残す権限
  • 最終承認を行うアカウント
  • 不要なアカウントの停止
  • 契約終了時の権限削除方法

経理代行側へ必要以上の権限を付与するのではなく、担当する業務に応じて必要な範囲だけを設定することが重要です。

また、銀行に関する業務では、経理代行側が支払予定表や振込データを作成し、会社側が最終承認と振込実行を行うなど、権限を分けた運用を検討します。

特定の担当者だけが管理者権限やログイン情報を把握している状態は、引き継ぎだけでなく内部管理上のリスクにもなります。

合わせて読みたい:ブラックボックス化は危険|不正を防ぐ5つの対策

原因④ 社内の確認担当者と承認者が決まっていない

経理代行へ委託しても、すべての業務を外部だけで完結できるわけではありません。

例えば、次のような場面では会社側の対応が必要です。

  • 不明な取引の内容を説明する
  • 請求内容や金額を確定する
  • イレギュラーな処理を判断する
  • 支払いを最終承認する
  • 月次資料を確認する
  • 経営判断を行う

社内の確認先が決まっていなければ、経理代行会社から質問があっても回答できず、業務が止まります。

引き継ぎ前には、次の担当者を決めておきましょう。

  • 日常的な連絡窓口
  • 取引内容を説明する担当者
  • 支払いの最終承認者
  • 月次資料の確認者
  • 緊急時の連絡先
  • 担当者不在時の代理者

窓口担当者と最終承認者は、同じ人である必要はありません。

誰が回答し、誰が承認するのかを分けて整理することが大切です。

原因⑤ 業務開始前の確認が不足している

資料や権限を共有しただけで、すぐにすべての業務を切り替えると、認識違いに気付かないまま処理が進む可能性があります。

例えば、次のような問題です。

  • 想定していた資料が提出されない
  • 仕訳の考え方が会社の運用と異なる
  • 支払予定表の確認手順が決まっていない
  • 不明取引への回答が遅れる
  • 月次資料の形式が想定と異なる

業務開始時には、一部の処理を実際に行い、次の点を確認します。

  • 必要な資料がそろっているか
  • 経理代行側が問題なくアクセスできるか
  • 会社側の確認・承認が予定どおり進むか
  • 不明点の連絡先が機能しているか
  • 作成される資料が想定どおりか

ここで重要なのは、長期間の並走を前提にすることではなく、正式な運用へ切り替える前に、役割分担と連携方法が機能するかを確認することです。

前任者から後任者へ業務を引き継ぐ際の一般的な改善方法については、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:経理の引き継ぎを楽にする3つの改善策

経理代行への引き継ぎ前に作成したい3つの一覧

経理代行への引き継ぎでは、詳細なマニュアルを最初から完成させるよりも、まず必要な情報を一覧にする方が進めやすくなります。

1.役割分担一覧

業務ごとに、次の内容を整理します。

  • 経理代行側が作業する
  • 会社側が作業する
  • 経理代行側が作成し、会社側が確認する
  • 会社側が最終承認する

2.資料・システム一覧

業務に必要な資料やシステムについて、次の内容を整理します。

  • 資料・システムの名称
  • 保存場所
  • 管理者
  • 提出・更新の頻度
  • 必要なアクセス権限

3.連絡・承認担当者一覧

確認内容ごとに、誰へ連絡するかを整理します。

  • 日常的な質問
  • 取引内容の確認
  • 請求内容の確定
  • 支払いの承認
  • 月次資料の確認
  • 緊急時の連絡

この3つが整理されていれば、経理代行会社も必要な準備を判断しやすくなります。

公認会計士の視点|経理代行への引き継ぎでは役割の境界が重要

経理代行への引き継ぎで重要なのは、現在の担当者が行っている作業をそのまま外部へ渡すことではありません。

外部へ委託する業務と、会社側に残る判断・承認を分け、新しい運用体制をつくることが必要です。

特に認識違いが起こりやすいのは、次のような業務です。

  • 不明取引への回答
  • 請求内容の決定
  • 支払予定表の確認
  • 支払いの最終承認
  • 月次資料の確定
  • 例外的な取引の判断

誰が作業し、誰が確認し、誰が最終判断するのかを明確にしておけば、引き継ぎ後の停滞や二重作業を防ぎやすくなります。

よくある質問

Q1. 経理担当者が退職した後でも経理代行へ引き継げますか?

引き継げる場合もありますが、現在の業務内容や資料の保存場所を確認できる人がいないと、整理に時間がかかる可能性があります。

退職日が決まった段階で、業務範囲、資料、システム権限を確認することが大切です。

Q2. 引き継ぎ資料はどこまで準備すればよいですか?

最初から詳細なマニュアルを完成させる必要はありません。

まずは、業務一覧、資料の保存場所、使用システム、社内の確認・承認担当者を整理しましょう。

Q3. 経理代行側へインターネットバンキングの操作権限を渡す必要がありますか?

必要な権限は、依頼する業務やサービス内容によって異なります。

支払予定表や振込データの作成までを経理代行側が行い、最終承認と振込実行は会社側が行う運用もあります。

どこまでの権限が必要かを契約前に確認しましょう。

まとめ

経理代行への引き継ぎでは、次の5点を確認することが重要です。

  • 経理代行へ委託する業務範囲
  • 資料の共有方法と提出期限
  • 会計ソフトなどの利用権限
  • 社内の確認担当者と承認者
  • 業務開始前の確認方法

経理代行への引き継ぎは、担当者の作業を外部へ移すだけではありません。

経理代行側と会社側の役割を明確にし、資料共有、システム権限、確認・承認が機能する体制をつくることが重要です。

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現在の経理体制や依頼したい業務を確認したうえで、引き継ぎに必要な準備をご案内します。

経理代行を利用した場合の料金相場や費用の内訳については、以下の記事も参考にしてください。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

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