鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

ブラックボックス化は危険|不正を防ぐ5つの対策

経理のブラックボックス化 による不正を防ぐための5選を解説する記事の表示画像

「経理担当者しか業務の内容が分からない」

「必要な資料やシステムの管理方法を、担当者しか把握していない」

このような状態になっている会社は少なくありません。

業務が特定の担当者へ集中すること自体は珍しいことではありませんが、その状態が長く続くと、経理業務の内容や判断基準が周囲から見えなくなり、「ブラックボックス化」が進んでしまいます。

ブラックボックス化した経理では、担当者が変わったときに業務が止まるだけではありません。

不正が見つかりにくくなったり、経営者が会社のお金の動きを正しく把握できなくなったりするなど、会社全体へ大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、ブラックボックス化が会社にもたらすリスクと、不正を防ぐために取り組みたい5つの対策について解説します。

経理の属人化について全体像から知りたい方は、まずこちらの記事をご覧ください。

合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法


目次

ブラックボックス化とは?属人化との違い

ブラックボックス化とは、業務の進め方や判断基準、資料の保管場所、システムの管理方法などが、担当者しか分からない状態を指します。

属人化が進むと、業務が一人の担当者へ集中しやすくなります。

さらに、その状態が改善されないまま続くと、「誰も業務内容を把握できない」「経営者も確認できない」というブラックボックス化へ発展することがあります。

つまり、ブラックボックス化は、属人化がさらに進行した状態と考えると分かりやすいでしょう。

このような状態では、

  • 誰が何を担当しているのか分からない
  • 必要な資料がどこにあるのか分からない
  • システムの管理権限を誰が持っているのか分からない
  • 業務の判断基準が共有されていない

といった問題が起こりやすくなります。

その結果、担当者しか実態を把握できず、経営者や他の社員が状況を確認できない経理体制になってしまいます。

経理の属人化が会社へ与える影響については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理の属人化はなぜ危ない?会社に起こるトラブル


ブラックボックス化が招く3つの重大なリスク

ブラックボックス化は、「担当者しか分からない」という状態にとどまらず、会社全体の経営へ影響を及ぼす可能性があります。

ここでは、特に注意したい3つのリスクをご紹介します。

① 不正が発生しても気付きにくくなる

ブラックボックス化した経理では、一人の担当者が入力・確認・保管まで行っているケースがあります。

このような状態では、第三者が内容を確認する機会が少なくなるため、

  • 架空の経費計上
  • 二重払い
  • 私的な支出
  • 入力ミスの見落とし

などが発生しても、気付くまでに時間がかかる可能性があります。

もちろん、すべての担当者が不正を行うわけではありません。

しかし、「誰にも確認されない状態」をつくらないことが、不正を未然に防ぐうえで重要です。


② 経営判断が遅れる

経営者が会社の数字を確認したいと思っても、

「担当者しか分からないので確認します」

という状況では、必要な情報をすぐに把握できません。

例えば、

  • 銀行残高
  • 売掛金や買掛金の状況
  • 月次決算の進捗
  • 支払予定

などをタイムリーに確認できなければ、資金繰りや設備投資などの判断にも影響を及ぼします。

経理は単に数字を記録する部署ではなく、経営判断を支える重要な役割を担っています。

そのため、経営者が必要な情報へ適切にアクセスできる状態を維持することも、ブラックボックス化を防ぐうえで欠かせません。


③ 担当者が不在になると業務が止まる

担当者の休職や退職によって、突然業務が進まなくなることもブラックボックス化の大きなリスクです。

例えば、

  • 支払い処理
  • 請求書の発行
  • 月次資料の作成
  • 会計ソフトの操作

などを担当者しか把握していない場合、後任者は何から始めればよいのか分からず、業務が停滞してしまうことがあります。

また、ログイン情報や資料の保管場所が共有されていなければ、必要な情報を探すだけでも多くの時間がかかります。

担当者が変わっても業務を継続できる体制を整えることが、ブラックボックス化を防ぐ第一歩です。

ブラックボックス化を防ぐ5つの対策

ブラックボックス化は、一度進んでしまうと短期間で解消することは簡単ではありません。

しかし、業務の進め方や情報共有の仕組みを少しずつ見直すことで、リスクを減らしていくことは可能です。

ここでは、経営者や経理担当者が取り組みやすい5つの対策をご紹介します。


対策① 業務フローを文書化する

ブラックボックス化を防ぐために、まず取り組みたいのが業務フローの見える化です。

経理業務は毎月同じように見えても、

  • 請求書の発行
  • 支払処理
  • 経費精算
  • 月次決算

など、それぞれに決まった手順があります。

これらが担当者の経験だけで進められていると、担当者が不在になった際に業務を引き継ぐことが難しくなります。

そこで、

  • 業務の流れ
  • 実施するタイミング
  • 確認する資料
  • 承認者

などを整理し、誰でも確認できる形で残しておくことが大切です。

詳しい引き継ぎ方法については、こちらの記事でも解説しています。

合わせて読みたい:経理の引き継ぎを楽にする3つの改善策


対策② システムの権限を一人に集中させない

会計ソフトやインターネットバンキングなどの管理権限を、一人の担当者だけが持っている状態もブラックボックス化を招く原因になります。

例えば、

  • 管理者アカウントが担当者だけになっている
  • ログイン情報を経営者が把握していない
  • パスワード変更の方法が共有されていない

といった状況では、担当者が退職・休職した際にシステムへアクセスできなくなる可能性があります。

そのため、

  • 管理者を明確にする
  • 必要な権限を適切に設定する
  • 緊急時の対応方法を共有しておく

といった準備を行い、特定の担当者だけへ権限が集中しない体制を整えましょう。


対策③ 支払い・承認フローを明確にする

支払い業務や経費精算などで承認ルールが曖昧になっていると、担当者の判断だけで処理が進んでしまうことがあります。

例えば、

  • 誰が最終承認を行うのか
  • いくら以上の支払いは承認が必要なのか
  • イレギュラーな処理は誰が判断するのか

といった基準を決めておくことで、不正やミスのリスクを減らしやすくなります。

承認フローは複雑にする必要はありません。

誰が見ても分かるように整理し、担当者が変わっても同じ手順で運用できる状態を目指すことが重要です。


対策④ 証憑の保管ルールを統一する

請求書や領収書、契約書などの証憑が担当者ごとに異なる場所へ保管されていると、必要な資料を探すだけでも時間がかかります。

また、担当者しか保管場所を知らない状態では、確認作業や引き継ぎが難しくなり、ブラックボックス化をさらに進めてしまう可能性があります。

そのため、

  • 保管場所を統一する
  • 提出方法を決める
  • ファイル名や保存ルールを統一する

など、誰でも同じ方法で管理できる仕組みを整えることが大切です。

証憑管理の具体的な進め方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:証憑の保管ルールを統一化!紙・PDF・メールの整理方法


対策⑤ 定期的にチェックする仕組みをつくる

ブラックボックス化を防ぐためには、ルールを作るだけでは十分ではありません。

実際にそのルールが運用されているかを確認する仕組みも必要です。

例えば、

  • 月次資料を経営者が確認する
  • 支払い内容を定期的に見直す
  • 権限設定を定期的に確認する
  • 業務フローを見直す

といった機会を設けることで、小さな問題にも早く気付くことができます。

また、情報共有や業務の見える化を進めるには、経理DXの考え方を取り入れることも有効です。

合わせて読みたい:中小企業の経理DX|導入のための実践7ステップ

公認会計士の視点|ブラックボックス化は「人」ではなく「仕組み」の問題

「経理担当者しか内容を分かっていない」という状況を見ると、その担当者に原因があるように思われることがあります。

しかし、実務では担当者個人の問題ではなく、会社の仕組みが整っていないことが原因になっているケースがほとんどです。

長年同じ担当者が業務を続けていると、効率を優先するあまり、その人しか分からない手順や判断方法が少しずつ増えていきます。

担当者自身も「自分しかできない状態」を望んでいるわけではなく、周囲へ共有する時間や仕組みがないまま業務が積み重なった結果として、ブラックボックス化が進んでしまうことが少なくありません。

実際に経理体制の見直しをご支援する中でも、改善効果が大きい会社ほど、特別なシステムを導入する前に、

  • 業務の流れを整理する
  • 情報を共有できる状態にする
  • チェック体制を整える

といった基本的な仕組みづくりから取り組んでいます。

ブラックボックス化を防ぐために重要なのは、「担当者を変えること」ではなく、「誰が担当しても同じように業務を進められる環境」を整えることです。

その積み重ねが、不正防止だけでなく、安定した経理体制や迅速な経営判断にもつながります。


FAQ

Q1. ブラックボックス化と属人化は同じ意味ですか?

似た言葉ですが、厳密には異なります。

属人化は業務が特定の担当者へ集中している状態を指します。一方、ブラックボックス化は、その状態がさらに進み、業務内容や資料、権限などが担当者しか把握できなくなっている状態です。


Q2. 小規模な会社でも対策は必要ですか?

必要です。

少人数の会社ほど一人が担当する業務が多くなりやすく、ブラックボックス化が起こりやすい傾向があります。

会社の規模に関係なく、情報共有やチェック体制を整えておくことが重要です。


Q3. システムを導入すればブラックボックス化は解消できますか?

システムの導入は有効な手段の一つですが、それだけで解決するわけではありません。

業務ルールや承認フロー、情報共有の方法が整っていなければ、新しいシステムを導入しても担当者しか使いこなせない状態になることがあります。

まずは運用ルールを整え、その上で必要に応じてシステムを活用することが大切です。


まとめ

ブラックボックス化は、経理担当者だけの問題ではありません。

業務や情報が一人へ集中した状態を放置すると、

  • 不正やミスを発見しにくくなる
  • 経営者が必要な情報を把握できなくなる
  • 担当者の退職や休職で業務が止まる

といった経営上のリスクにつながる可能性があります。

ブラックボックス化を防ぐためには、

  • 業務フローを見える化する
  • システムの権限を適切に管理する
  • 承認フローを明確にする
  • 証憑の保管ルールを統一する
  • 定期的なチェック体制を整える

といった基本的な仕組みづくりが重要です。

一度にすべてを変える必要はありません。

まずは現在の経理業務を整理し、小さな改善を積み重ねることで、透明性が高く、誰でも対応しやすい経理体制を目指していきましょう。

経理業務の整理や属人化の解消、経理体制の見直しをご検討の方は、まるまる経理でも現状の課題整理から運用体制づくりまでサポートしています。お気軽にお問い合わせください。

経理代行サービス全体について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説 |

費用や料金の目安について知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

経理代行サブスクサービス「まるまる経理」の詳細はこちら