鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理の引き継ぎを楽にする3つの改善策

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経理担当者の退職や異動により、前任者から後任者へ業務を引き継ぐ場面があります。

しかし、引き継ぎ資料を用意しても、後任者が業務の流れや判断基準を理解できず、何度も前任者へ確認する状態になることがあります。

経理業務には、日々の処理だけでなく、次のような情報が含まれています。

  • 月次・年次のスケジュール
  • 社内の承認ルール
  • 例外的な取引の判断方法
  • 使用するシステム
  • 資料の保存場所
  • 社内外の連絡先

引き継ぎを楽にするためには、退職や異動が決まってから資料を作るのではなく、日頃から誰でも業務を確認できる状態をつくることが大切です。

この記事では、前任者から後任者への経理業務の引き継ぎを楽にする3つの改善策を解説します。

経理の属人化を解消するための全体的な考え方については、以下の記事をご覧ください。

合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法

目次

経理の引き継ぎが難しくなる理由

経理の引き継ぎが難しくなる主な原因は、業務に必要な情報が前任者の記憶や経験に集中していることです。

例えば、次のような状態です。

  • 業務一覧が作られていない
  • 月次・年次の予定が担当者の頭の中にある
  • 例外的な処理方法が記録されていない
  • 必要な資料の保存場所が分からない
  • 判断に迷った場合の相談先が決まっていない
  • 前任者しか利用方法を知らないシステムがある

引き継ぎ期間を長く確保しても、引き継ぐ内容自体が整理されていなければ、後任者は業務の全体像を理解できません。

担当者しか分からない状態を放置した場合のリスクについては、以下の記事でも解説しています。

合わせて読みたい:経理の属人化はなぜ危ない?会社に起こるトラブル

改善策① 業務の全体像を見える化する

引き継ぎを始める前に、現在行っている業務を書き出します。

最初から詳細な手順書を作る必要はありません。

まずは、どの業務が、いつ、誰によって行われているのかを一覧にします。

業務を頻度別に整理する

経理業務は、次のように頻度で分けると整理しやすくなります。

頻度業務の例
毎日入出金確認、経費申請の確認
毎週支払予定の確認、請求書の整理
毎月記帳、給与計算、月次締め、預金・売掛金・買掛金の残高確認
四半期四半期資料の作成、予算実績の見直し、長期滞留項目の確認
毎年年次処理、予算作成、契約更新の確認
随時入退社、設備購入、イレギュラー対応

日次・月次業務だけでなく、年に一度しか発生しない業務も記載しておくことが重要です。

業務ごとに担当者と期限を記載する

業務一覧には、次の内容を記載します。

  • 業務名
  • 実施する時期
  • 現在の担当者
  • 確認者・承認者
  • 使用するシステム
  • 必要な資料
  • 完了期限
  • 関係部署や連絡先

これにより、後任者は個別の作業だけでなく、業務全体の流れを把握しやすくなります。

改善策② 判断基準を含む手順書を整える

業務の全体像を整理したら、繰り返し行う作業から手順書を作ります。

ただし、画面の操作方法だけを記載しても、実務で使える手順書にはなりません。

後任者が迷いやすいのは、「どのボタンを押すか」ではなく、「この場合はどのように判断するか」という部分です。

手順書には、次の内容を記載しましょう。

  • 作業の目的
  • 作業を始める時期
  • 必要な資料
  • 基本的な手順
  • 完了条件
  • 確認者・承認者
  • 判断に迷った場合の相談先
  • よくある誤り
  • 例外が発生した場合の対応

完璧なマニュアルを最初から作らない

すべての業務について、詳細なマニュアルを一度に作ろうとすると、作成に時間がかかり、更新されない資料になりやすくなります。

まずは、次のような業務から整えると進めやすくなります。

  • 毎月必ず行う業務
  • 後任者が迷いやすい業務
  • 間違えると影響が大きい業務
  • 前任者しか分からない業務

実際に後任者が使用し、分かりにくかった部分を追記することで、実務に合った手順書へ改善できます。

資料の保存場所も手順書へ記載する

作業方法が分かっていても、必要な資料を探せなければ業務は進みません。

手順書には、請求書、領収書、契約書、月次資料などの保存場所も記載しておきましょう。

紙、PDF、メールに分かれた資料の整理方法については、以下の記事も参考になります。

合わせて読みたい:証憑の保管ルールを統一化!紙・PDF・メールの整理方法

改善策③ 後任者が実際に処理する期間を設ける

業務一覧と手順書を渡すだけでは、後任者が実際に業務を行えるか判断できません。

引き継ぎ期間中に、後任者が実際の業務を行い、前任者が結果を確認する機会を設けます。

例えば、次のように進めます。

  1. 前任者が作業の流れを説明する
  2. 後任者が手順書を見ながら作業する
  3. 前任者が処理内容を確認する
  4. 分かりにくかった箇所を手順書へ追記する
  5. 後任者が一人で処理できるか確認する

実際に確認したい業務

引き継ぎ期間中には、可能な範囲で次の業務を確認します。

  • 日常的な入出金確認
  • 請求書の発行・管理
  • 支払予定の整理
  • 経費精算
  • 月次締め
  • 社内への確認
  • イレギュラーな取引への対応

特に、月末や決められた日にしか発生しない業務は、実際のタイミングで経験できると理解しやすくなります。

前任者がすべて作業し続けない

引き継ぎ期間中も前任者がすべての業務を処理し、後任者が見ているだけでは、実際に一人で対応できるか確認できません。

早い段階から後任者が作業し、前任者は確認と補足に回ることが大切です。

引き継ぎ完了の判断は、説明を終えたかではなく、後任者が手順書を確認しながら業務を進め、必要な確認先へ自分で問い合わせられる状態になったかで行います。

3つの改善策は順番に進める

引き継ぎの改善は、次の順番で進めると整理しやすくなります。

1.業務を見える化する

何を引き継ぐ必要があるのかを明確にします。

2.手順書を整える

業務の進め方と判断基準を記録します。

3.後任者が実際に処理する

手順書で業務を進められるか確認し、不足している説明を修正します。

いきなりマニュアル作成から始めると、記載すべき業務が漏れたり、業務全体のつながりが分かりにくくなったりします。

最初に業務の全体像を整理することが重要です。

業務や資料をデジタル化し、担当者が変わっても確認できる状態をつくることは、経理DXにもつながります。

合わせて読みたい:中小企業の経理DX|導入のための実践7ステップ

引き継ぎ後も手順書を更新する

引き継ぎは、後任者へ業務を渡した時点で終わりではありません。

実際に業務を行うと、次のような問題が見つかることがあります。

  • 手順書に記載されていない作業がある
  • 現在のシステム画面と説明が異なる
  • 判断基準が曖昧になっている
  • 保存場所が変更されている
  • 担当者や承認者が変わっている

業務内容が変わった場合は、手順書や業務一覧も更新します。

更新日と更新担当者を記載しておくと、古い内容を使い続けることを防ぎやすくなります。

公認会計士の視点|引き継ぐのは作業ではなく判断の根拠

経理の引き継ぎでは、作業手順だけでなく、なぜその処理を行うのかを伝えることが重要です。

例えば、勘定科目を選ぶ場合でも、前任者が使っていた科目名だけを伝えるのではなく、どのような基準で判断しているかを記録します。

次のような情報が残っていれば、後任者は判断しやすくなります。

  • 何を確認して処理を決めるのか
  • どのような場合に承認が必要か
  • 例外が発生した場合は誰へ相談するか
  • 過去にどのような問題があったか
  • 完了したと判断する基準は何か

担当者の経験をすべて文章にすることは難しいため、後任者が迷いやすい場面から優先して記録しましょう。

よくある質問

Q1. マニュアルがあれば引き継ぎは問題ありませんか?

マニュアルだけでは十分ではありません。

後任者が実際に業務を行い、マニュアルの内容で処理できるか確認する必要があります。

Q2. 引き継ぎはいつから準備すべきですか?

退職や異動が決まってからではなく、日頃から業務一覧や手順書を整えておくことが理想です。

普段から整理しておけば、急な担当者変更にも対応しやすくなります。

Q3. 経理担当者が一人でも改善できますか?

改善できます。

まずは、毎月行っている業務、資料の保存場所、締め日、確認先を書き出すことから始めましょう。

Q4. 後任者ではなく経理代行へ引き継ぐ場合も同じですか?

業務の見える化や資料整理は共通しますが、経理代行へ引き継ぐ場合は、委託範囲、アクセス権限、会社側の承認体制なども整理する必要があります。

経理代行への引き継ぎに特有の注意点については、以下の記事をご覧ください。

合わせて読みたい:経理代行への引き継ぎで失敗する5つの原因と対策

まとめ

経理の引き継ぎを楽にするためには、次の3つを順番に進めます。

  • 業務の全体像を見える化する
  • 判断基準を含む手順書を整える
  • 後任者が実際に処理する期間を設ける

引き継ぎは、前任者が知っていることを口頭で説明するだけの作業ではありません。

担当者が変わっても同じように業務を進められるよう、会社の仕組みとして業務を残すことが重要です。

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現在の業務内容を確認したうえで、引き継ぎしやすい経理体制づくりをご提案します。

経理代行を利用する場合の料金相場や費用の内訳については、以下の記事も参考にしてください。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

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