鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

グループ会社の経理ルールを統一する方法|共通化したい7項目と導入手順

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「子会社ごとに勘定科目や月次決算の締め日が異なり、数字を比較しにくい。」

「同じ取引なのに、会社によって会計処理や承認方法が違っている。」

事業や子会社が増えると、グループ全体の経理管理が複雑になります。

各社が独自の方法で経理業務を行っていると、本社が数字を集計するたびに内容を確認し、組み替えや修正を行わなければなりません。

一方で、本社のルールをすべての会社へ一律に適用すると、事業内容や取引量に合わず、現場の負担が増える場合があります。

グループ会社の経理ルールを整えるときは、数字へ影響する基準や報告期限を共通化しながら、各社の事情に応じて残す運用を分けることが重要です。

本記事では、主に国内の親会社と、その支配下にある子会社を想定し、グループ会社で共通化したい経理ルールと導入手順を解説します。

海外子会社、持分法適用会社、異なる会計基準を採用する会社などでは、別途専門的な検討が必要になる場合があります。

資金調達、IPO準備、M&A、子会社の増加などを含め、成長企業に必要な経理体制の全体像については、以下の記事をご覧ください。

合わせて読みたい:成長企業の経理体制|資金調達・IPO準備・子会社の増加に対応する方法

目次

グループ会社の経理ルールを統一する目的

経理ルールを統一する主な目的は、会社ごとの違いを完全になくすことではありません。

グループとして、次の状態をつくることが目的です。

  • 各社の月次決算が決められた期限までに完了する
  • 勘定科目や管理項目の対応関係が分かる
  • 数字と根拠資料を結び付けて確認できる
  • 重要な取引や例外事項が本社へ報告される
  • 担当者が変わっても一定の基準で処理できる
  • グループ全体の数字を比較・集計できる

経済産業省の「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」では、実際の経営がグループ単位で行われる中で、子会社管理の実効性を確保することがグループ経営上の課題として示されています。

参考:経済産業省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」

経理ルールは、グループ管理の方針を毎月の実務へ落とし込むための仕組みです。

ルールを文書化するだけでなく、各社が継続して運用し、本社が結果を確認できる状態まで整える必要があります。

本社と子会社の役割分担を先に決める

経理ルールを作る前に、どの業務を本社が担当し、どの業務を子会社が担当するかを整理します。

例えば、子会社が取引内容を確認して証憑を提出し、本社または経理代行が記帳と残高確認を行う方法があります。

反対に、子会社が月次決算まで行い、本社は提出資料と重要な残高を確認する方法もあります。

担当者や責任者が決まっていなければ、ルールを作っても実行されません。

本社と子会社の具体的な役割分担については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:子会社が増えた会社の経理体制|本社と子会社の役割分担

共通化する項目と各社に残す項目を分ける

グループ会社の経理ルールを整えるときは、すべてを一律にそろえるのではなく、次の3つに分けて考えます。

グループで共通化する項目

  • 月次決算と本社報告の期限
  • 勘定科目の対応関係
  • 重要な会計処理の方針
  • 証憑の保存基準
  • 承認記録の残し方
  • 例外事項の報告方法

数字の比較や本社の確認に影響する項目は、グループで共通化します。

各社で変更できる項目

  • 資料を回収する細かな手順
  • 使用する会計・申請システム
  • 社内での申請経路
  • 担当者の配置
  • 日常的な連絡方法

本社が必要な情報を期限までに受け取れ、事業運営にも支障がない場合は、各社の運用方法を残すことができます。

個別判断が必要な項目

  • 事業特有の売上処理
  • 在庫や原価の管理方法
  • 海外取引
  • 異なる会計基準を採用する会社
  • 法令や税務上の個別対応

専門的な判断が必要な事項は、一律のルールで処理せず、公認会計士や税理士などへ確認します。

グループ会社で共通化したい7つの経理ルール

1.月次決算と報告の締切

最初に整えたいのは、月次決算のスケジュールです。

本社がグループ全体の月次資料を完成させる日から逆算し、各社の期限を決めます。

例えば、次の期限を設定します。

  • 売上を確定する日
  • 経費申請の締切
  • 請求書や領収書の提出日
  • 仕入先請求書の回収期限
  • 不明取引への回答期限
  • 仕訳入力の完了日
  • 残高確認の完了日
  • 子会社内の承認日
  • 本社への月次資料提出日

すべての会社で同じ日付にすることが難しい場合は、本社の確認に間に合う範囲で会社別の期限を設定します。

締切だけを早めるのではなく、各部署や子会社が実行できる日程へ落とし込むことが大切です。

2.勘定科目と管理項目

会社ごとに異なる勘定科目を使用している場合は、グループ共通の科目へ変更する方法と、対応表を作る方法があります。

子会社の科目グループで対応する科目処理上の注意
販売費広告宣伝費・販売促進費内容に応じて区分する
業務委託費外注費・支払手数料契約内容を確認する
雑費複数の費用科目原則として内訳を確認する
売上高商品売上・サービス売上事業別に区分する

勘定科目だけでなく、部門、店舗、事業、プロジェクト、取引先などの管理項目も整理します。

ただし、管理項目を増やしすぎると入力負担が大きくなります。

グループ経営で実際に比較・分析する項目から優先して設定します。

3.売上・費用・固定資産などの処理基準

同じ性質の取引について会社ごとに処理が異なると、各社の業績を比較しにくくなります。

特に、次の項目は基準を明確にします。

  • 売上を計上する時期
  • 費用を計上する時期
  • 前払費用や未払費用の処理
  • 固定資産として管理する範囲
  • 減価償却の方法
  • 引当金の検討方法
  • 外貨建て取引の処理
  • 月次決算で見積計上する項目
  • 重要性が低い取引の簡便的な処理

企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」では、同一環境下で行われた同一の性質の取引などについて、親会社と子会社が採用する会計方針を原則として統一する考え方が示されています。

参考:企業会計基準委員会「企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準」

これは、親会社の個別会計上の処理を、すべての子会社へ機械的に適用するという意味ではありません。

事業内容や取引環境を確認し、必要に応じて専門家から助言を受けたうえで、グループとして採用する処理方針を決定します。

4.証憑の提出・保存方法

請求書、領収書、契約書、申請書などの保存方法を整理します。

最低限、次の内容を決めます。

  • 提出する資料の種類
  • 紙と電子データの取扱い
  • 提出先となるフォルダやシステム
  • ファイル名の付け方
  • 取引と仕訳を結び付ける方法
  • アクセス権限
  • 原本の保管場所
  • 修正や差し替えを行った場合の記録
  • 保存状況を確認する担当者

すべての会社で同じシステムを使用できない場合でも、どの資料がどこに保存されているかを本社が確認できる状態にします。

担当者個人のメールやパソコンだけに資料を保存する運用は避けます。

5.支払・経費精算・承認

支払や経費精算では、申請、内容確認、データ作成、承認、実行を分けて整理します。

工程主な担当例
取引内容の確認子会社の担当者・部門責任者
支払申請子会社の申請者
支払予定表・振込データの作成本社・子会社経理・経理代行
支払の承認子会社責任者・本社責任者
振込の実行権限を付与された担当者
実行結果の確認作成者以外の担当者

金額に応じた承認権限も決めます。

例えば、通常の少額取引は子会社で承認し、高額な支払、新規取引先、役員や関係者に関する取引は本社承認とする方法があります。

会社ごとに金額基準を変える場合でも、誰が、何を基準に、どのように承認したかを記録します。

6.グループ内取引の識別方法

親会社と子会社、または子会社同士で取引が発生する場合は、通常の外部取引と区別できるようにします。

対象となる取引には、次のようなものがあります。

  • 業務委託料
  • 経営指導料
  • 商品やサービスの売買
  • 家賃やシステム費用の負担
  • 立替金
  • 貸付金・借入金
  • 配当
  • 出向者に関する人件費

日常経理の段階で、取引先コードや補助科目などを使用し、相手となるグループ会社を識別します。

また、請求日、計上月、取引内容について、相手会社と認識が一致するようにします。

本記事では、グループ内取引を識別するための基本的なルールまでを扱います。親子会社間の取引や残高を照合する具体的な手順は、別の記事で詳しく解説します。

7.例外事項とルール変更の管理

すべての取引を事前にルール化することはできません。

新規事業、特殊な契約、高額な設備投資、M&A、資金調達などが発生すると、既存のルールでは判断できない場合があります。

例外事項については、次の内容を決めます。

  • どの取引を本社へ報告するか
  • 誰へ相談するか
  • いつまでに報告するか
  • 誰が処理方針を決定・承認するか
  • 判断の根拠をどこへ保存するか
  • 同様の取引へ今後どう適用するか
  • 既存ルールを変更する必要があるか

例外処理を担当者間の口頭連絡だけで終わらせず、判断内容、確認した専門家、承認者、適用開始日を記録します。

グループ共通ルールを作る6つの手順

1.各社の現在のルールを一覧にする

最初から本社のルールを配布するのではなく、各社の現状を確認します。

勘定科目、締切、証憑保存、承認、使用システム、担当者などを一覧にし、会社ごとの差を整理します。

2.数字への影響が大きい差を優先する

すべての違いを一度に解消する必要はありません。

売上の計上時期、月次決算の締切、重要な残高、支払承認など、数字や資金へ与える影響が大きい項目から優先します。

書式や細かな作業手順は、その後に整えます。

3.共通ルールと例外を分ける

グループ全体で守る基準と、会社別に認める例外を明確にします。

例外を認める場合は、対象会社、理由、適用期間、本社への報告方法を記録します。

4.一部の会社や業務で試行する

新しいルールを全社へ一斉に導入すると、想定していなかった負担や問題が生じることがあります。

まず一部の会社や業務で運用し、資料の提出方法、締切、承認などが現実的かを確認します。

5.マニュアルと様式を整える

毎月の運用に必要な資料を用意します。

  • 月次決算カレンダー
  • 勘定科目の対応表
  • 証憑提出の手順
  • 支払・経費精算の承認表
  • 月次報告の様式
  • 例外事項の報告書
  • 問い合わせ先の一覧
  • ルール変更の履歴

最初から分厚い規程を作るのではなく、使用頻度の高い資料から整備します。

月次報告の様式を整える際は、試算表だけでなく、重要な残高明細、固定資産や借入金の増減資料、グループ内取引、未処理事項など、親会社が毎月確認する資料を明確にします。

子会社から親会社へ提出したい具体的な月次報告資料と、毎月無理なく作成・確認を続けるための運用方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:子会社の月次報告資料とは?親会社へ提出したい7つの資料と運用方法

グループ内取引を確認するときは、取引先となるグループ会社、取引内容、当月の取引高、月末残高、差額の原因を記録できる共通の照合表を用意すると、確認しやすくなります。

親会社と子会社で数字が一致しない原因や、照合表を使った確認手順については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:グループ内取引の残高照合|親子会社で差額が生じる7つの原因と確認手順

6.運用状況を確認して更新する

ルールを配布した後は、実際に守られているかを確認します。

月次資料の提出期限、主要残高、証憑、承認記録、例外報告などを確認し、運用しにくい点があれば修正します。

経理ルールは一度作って終わるものではなく、事業や組織の変化に合わせて更新します。

新設子会社と買収した子会社では進め方が異なる

新設子会社では、事業開始前から本社の方針に合わせて、会計ソフト、勘定科目、締切、証憑保存、承認などを設計できます。

一方、M&Aで取得した子会社には、既存のシステムや業務手順があります。

買収直後にすべてを変更せず、日常業務を維持しながら、優先度の高い項目から段階的に統一します。

M&A成立後の日常経理を安定させ、段階的に統合する方法については、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:M&A後の経理統合とは?日常業務を整える7つのポイント

IPO準備では運用記録を残す

IPO準備では、経理ルールがあるだけでなく、実際に継続して運用されているかを確認する必要があります。

月次決算、支払、経費精算、重要な会計処理について、作成者、確認者、承認者を記録します。

経理代行を利用する場合も、会社側が重要な判断、承認、監査対応、数字の説明を担える状態を整えます。

IPO準備中に経理代行へ任せられる業務と、会社側に残すべき業務については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:IPO準備企業は経理代行をどこまで利用できる?社内に残す業務と役割分担

グループ会社の経理ルール統一で起こりやすい5つの失敗

本社のルールをそのまま配布する

本社で運用できているルールが、すべての子会社に合うとは限りません。各社の事業内容や人員を確認し、共通化する目的と範囲を決めます。

会計ソフトの統一を最優先にする

同じ会計ソフトを使っても、処理基準や締切が異なれば数字を比較しにくい状態は残ります。先に会計処理と報告のルールを決めます。

例外を一切認めない

事業内容や取引環境によっては、会社別の対応が必要です。例外を認める場合は、理由、承認者、適用範囲を記録します。

ルールを細かく作りすぎる

細かな手順を増やしすぎると、担当者が理解できず、形だけのルールになることがあります。金額や数字への影響が大きい項目を優先します。

運用確認を行わない

ルールを配布するだけでは実務へ定着しません。月次決算のたびに、期限、残高、証憑、承認、例外報告を確認します。

公認会計士の視点|最初に優先したい4つの項目

経理ルールを整える際、すべての違いを同時に解消する必要はありません。

実務では、まず次の4項目を優先します。

  1. 売上を計上する時期
  2. 月次決算と本社報告の締切
  3. 預金、売掛金、買掛金などの重要残高
  4. グループ内取引の識別方法

これらは、月次業績やグループ全体の数字へ直接影響しやすい項目です。

ファイル名、申請書式、細かな操作手順の統一は、その後でも対応できます。

最初から完成されたルールを目指すのではなく、数字の正確性と月次報告に影響する項目から順番に整えることが重要です。

よくある質問

Q1. グループ会社は同じ会計ソフトを使う必要がありますか?

必ずしも同じ会計ソフトを使う必要はありません。

異なるソフトを使用する場合は、勘定科目の対応表、提出データの形式、月次の締切、確認方法を決めます。

Q2. 勘定科目はすべて同じにしなければなりませんか?

完全に同じにする必要はありません。

会社固有の科目を残す場合は、グループ共通科目との対応関係を明確にします。

Q3. 子会社独自の経理ルールを残してもよいですか?

事業内容や取引環境に合理的な違いがある場合は、子会社独自のルールを残すことができます。

その場合は、共通ルールと異なる理由、対象となる取引、本社への報告方法を記録します。

Q4. 経理ルールはどのくらいの頻度で見直しますか?

目安として半年から1年に一度、運用状況を確認します。

新規事業、子会社の設立・取得、システム変更、資金調達、IPO準備などがあった場合は、定期確認を待たずに見直します。

Q5. 経理ルールの整備を経理代行へ依頼できますか?

現在の業務整理、月次スケジュール、勘定科目の対応表、証憑提出方法、残高確認、業務マニュアルなどは、契約内容に応じて依頼できる場合があります。

重要な会計方針、承認権限、経営上の判断は会社側が決定し、専門的な会計判断は公認会計士などと役割を分けます。

まとめ

グループ会社の経理ルールを整えるときは、数字や月次報告へ影響する項目を優先します。

特に、次の7項目を確認します。

  1. 月次決算と報告の締切
  2. 勘定科目と管理項目
  3. 売上・費用・固定資産などの処理基準
  4. 証憑の提出・保存方法
  5. 支払・経費精算・承認
  6. グループ内取引の識別方法
  7. 例外事項とルール変更の管理

すべてを一度に変更するのではなく、各社の現状を把握し、共通化する項目と各社に残す項目を分けることが大切です。

経理代行の費用は、対象となる会社数、取引件数、月次決算、残高確認、ルールやマニュアルの整備範囲などによって異なります。

経理代行の料金相場と費用の内訳については、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

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現在の各社の経理業務を整理したうえで、グループで共通化する項目と各社に残す項目を切り分け、月次決算まで継続して運用できる体制を設計します。実際の対応内容は、プランおよび契約範囲に応じて決定します。

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