「求人を出しても応募が来ない。」
「経理経験者を募集しているのに、なかなか採用につながらない。」
「ようやく採用できても、短期間で退職してしまった。」
このような悩みを抱える中小企業は少なくありません。
以前は「募集を出せば採用できる」という時代もありましたが、現在は経理人材を取り巻く環境が大きく変化しています。
少子高齢化による労働人口の減少に加え、働き方の多様化や転職市場の活性化により、経験のある経理人材の採用競争は年々激しくなっています。
一方で、同じような採用環境でも、比較的スムーズに採用できている会社があるのも事実です。
その違いは、「採用活動」そのものだけではなく、募集内容や経理体制の整え方にもあります。
この記事では、経理担当者の採用が難しい理由を整理するとともに、中小企業が取り組める現実的な対策について解説します。
経理担当者の採用が難しくなっている理由
「人手不足だから採用できない」と考えられがちですが、実際には複数の要因が重なっています。
まずは、採用市場で起きている変化を見ていきましょう。
理由① 経理経験者そのものが少ない
営業職や一般事務職と比べると、経理経験者はもともとの人数が多くありません。
さらに近年は、企業が求めるスキルも以前より広がっています。
例えば、
- 月次決算の経験
- 簿記資格
- クラウド会計ソフトの利用経験
- 給与計算の経験
- ExcelなどのITスキル
など、複数の経験を求める求人が増えています。
その結果、条件を満たす人材は限られ、経験者の採用競争が激しくなっています。
理由② 中小企業だけでなく大企業とも競争している
現在は中小企業同士だけではなく、大企業や上場企業も積極的に経理人材を採用しています。
求職者は複数の求人を比較するため、
- 給与
- 福利厚生
- リモートワーク制度
- フレックスタイム制度
- キャリアアップの機会
なども判断材料になります。
特に経験者ほど選択肢が多く、中小企業が条件面だけで競争することは簡単ではありません。
理由③ 求める人材像が広すぎる
中小企業では、一人の担当者が幅広い業務を担当することも珍しくありません。
そのため求人では、
- 記帳
- 請求書発行
- 支払業務
- 給与計算
- 月次決算
- 総務業務
など、多くの業務を任せる前提になっているケースがあります。
しかし、求職者から見ると、
「業務範囲が広すぎる」
「責任が重そう」
という印象につながり、応募をためらう要因になることがあります。
経理経験者を求めるあまり、結果として応募の間口を狭めてしまっているケースも少なくありません。
合わせて読みたい:経理担当者が辞める理由とは?退職防止のためにできること
採用できる会社と採用できない会社の違い
採用環境が厳しいことは、多くの企業に共通しています。
それでも採用できる会社があるのはなぜでしょうか。
違いの一つは、「働くイメージが伝わるかどうか」です。
例えば、
- 担当する業務が明確になっている
- 引き継ぎ体制が整っている
- 業務マニュアルがある
- 他の社員へ相談できる環境がある
こうした会社は、求職者も安心して応募しやすくなります。
反対に、
- 業務内容が曖昧
- 一人ですべて担当する
- 引き継ぎ方法が決まっていない
という状況では、「入社後の負担が大きそう」という印象を与えてしまいます。
採用活動だけではなく、受け入れる体制を整えることも重要です。
採用活動を始める前に見直したいこと
「応募が来ない」という場合でも、すぐに募集条件を変更する前に見直したいポイントがあります。
業務内容を整理する
現在の経理業務を書き出してみると、「本当に採用が必要な業務」と「他の方法でも対応できる業務」が見えてくることがあります。
例えば、
- 毎日対応が必要な業務
- 月末だけ発生する業務
- 定型的な業務
を整理することで、必要な人材像も明確になります。
合わせて読みたい:中小企業の経理DX|導入のための実践7ステップ
引き継ぎしやすい環境を整える
採用できても、引き継ぎに時間がかかれば早期に戦力化することはできません。
日頃から、
- 業務マニュアルを作成する
- 手順を標準化する
- 必要な資料を整理する
など、引き継ぎしやすい環境を整えておくことが重要です。
一人に業務を集中させない
経理担当者が一人だけの場合、その人しか分からない業務が増えやすくなります。
このような状態では、採用できたとしても十分な引き継ぎができず、新しい担当者の負担も大きくなります。
日頃から業務を見える化し、複数人で状況を把握できる体制を整えておくことが、採用後の定着にもつながります。
合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法
採用できない場合は「採用」にこだわりすぎないことも重要
経理担当者の採用が難しいからといって、採用活動を続けることだけが解決策とは限りません。
特に中小企業では、「経験者を採用すること」よりも、「現在の人員で経理業務を安定して回せる体制をつくること」の方が重要なケースもあります。
例えば、
- 業務を標準化する
- 一部の業務を他の社員でも対応できるようにする
- 繁忙期だけ外部のサポートを利用する
など、採用以外の方法で課題を解決できることもあります。
採用活動を続けても応募が集まらない場合は、「人を増やす」という発想だけでなく、「業務の進め方を見直す」という視点も持つことが大切です。
採用と外注には、それぞれメリット・デメリットがあります。
どちらが自社に合っているか詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説
採用が難しい今こそ、経理体制全体を見直すことが重要
採用活動が長期化すると、既存の経理担当者へ業務が集中しやすくなります。
その状態が続くと、
- 残業時間が増える
- 引き継ぎが進まない
- 業務が属人化する
- 担当者が退職しやすくなる
という悪循環につながることがあります。
また、「経理担当者が一人しかいない」という会社では、急な退職や休職によって経理業務そのものが止まってしまうリスクもあります。
そのため、採用活動と並行して、
- 業務の見える化
- マニュアル整備
- 引き継ぎ体制の構築
なども進めておくことが重要です。
万が一、経理担当者が退職・休職した場合の対応については、次の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:経理担当が退職・休職したとき、経理代行は“つなぎ”として使える?
公認会計士の視点|採用できない原因は「求人」だけではありません
経営者の方から、「求人を出しても応募が来ない」というご相談を受けることがあります。
もちろん、採用市場が厳しくなっていることも大きな要因です。
しかし実際には、求人票だけでは見えてこない課題を抱えている企業も少なくありません。
例えば、
- 一人で幅広い業務を担当する前提になっている
- 業務の進め方が担当者しか分からない
- 引き継ぎ資料やマニュアルが整備されていない
このような状態では、採用できたとしても早期離職や教育負担につながる可能性があります。
採用活動を改善することはもちろん重要ですが、それと同じくらい、「採用した人が安心して働ける環境を整えること」も重要です。
経理体制を見直すことで、採用しやすさだけでなく、定着率や業務の安定性も向上しやすくなります。
合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説
よくある質問
Q. 経理担当者の採用にはどれくらい時間がかかりますか?
地域や募集条件によって異なりますが、数か月以上かかるケースも珍しくありません。
また、採用後も自社の業務を覚えるための教育期間が必要になるため、すぐに戦力になるとは限りません。
合わせて読みたい:経理担当者は何人必要?従業員数別の目安と経理体制を解説
Q. 未経験者を採用する方法もありますか?
未経験者を採用し、育成するという選択肢もあります。
ただし、教育体制やマニュアルが整っていない場合は、既存社員の負担が大きくなることがあります。
未経験者を採用する場合は、教育できる環境をあわせて整えることが重要です。
Q. 採用できない場合はどう考えればよいでしょうか?
採用活動を継続することも大切ですが、「採用だけ」にこだわる必要はありません。
業務の標準化や役割分担を見直すことで、現在の人員でも経理業務を安定して運用できるケースがあります。
会社全体の経理体制を見直したい場合は、次の記事も参考にしてください。
合わせて読みたい:中小企業の経理体制の作り方|採用・外注・経理代行の選び方
まとめ
経理担当者の採用が難しくなっている背景には、
- 経理経験者そのものが少ないこと
- 採用競争が激しくなっていること
- 求める人材像が広がっていること
など、さまざまな要因があります。
また、採用できない原因は採用市場だけではなく、
- 業務範囲が広すぎる
- 引き継ぎ体制が整っていない
- 業務が属人化している
といった社内の課題が影響している場合もあります。
そのため、中小企業では採用活動だけを見直すのではなく、経理体制そのものを見直すことも重要です。
採用・外注・経理代行など、それぞれの選択肢には特徴があります。
自社に合った経理体制を検討したい方は、まずは親記事で全体像を整理したうえで、必要に応じて各テーマを詳しくご覧ください。
合わせて読みたい:経理を採用する?外注する?年間コスト・メリット・デメリットを比較
