鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理担当者は何人必要?従業員数別の目安と経理体制を解説

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「従業員が増えてきたので、そろそろ経理担当者を採用した方がいいのだろうか。」

「今は社長と事務担当者で対応しているが、この体制でいつまで回せるのだろう。」

会社が成長してくると、多くの経営者が一度はこのような疑問を持ちます。

しかし、「従業員が○人になったら経理担当者を1人採用する」といった明確な基準はありません。

同じ従業員30人の会社でも、

  • 毎月の取引件数
  • 業種
  • 店舗数
  • クラウド会計の活用状況
  • 経理業務の分担方法

によって、必要な経理体制は大きく変わります。

一方で、経理担当者が少なすぎると業務負担や属人化につながり、多すぎると人件費が増え、業務効率が下がることもあります。

大切なのは、「何人採用するか」ではなく、「会社の規模や業務量に合った経理体制になっているか」という視点です。

この記事では、中小企業における経理担当者の人数の目安と、会社規模ごとの経理体制の考え方について解説します。


目次

経理担当者の人数は「従業員数」だけでは決まらない

「従業員が何人なら経理担当者は何人必要ですか」という質問をいただくことがあります。

しかし実際には、従業員数だけで判断することはできません。

例えば、従業員20人の会社でも、

  • 毎月数百件の取引がある会社
  • 少数の取引先と継続的に取引している会社

では、経理業務の負担は大きく異なります。

また、

  • 製造業
  • 建設業
  • 小売業
  • IT企業

など、業種によっても必要な業務量は変わります。

さらに近年は、

  • クラウド会計
  • 銀行口座との自動連携
  • 請求書の電子化
  • 経費精算システム

などを導入する企業も増えており、同じ会社規模でも必要な人数は以前より少なく済むケースもあります。

そのため、従業員数は一つの目安にはなりますが、それだけで判断することはできません。

合わせて読みたい:中小企業の経理DX|導入のための実践7ステップ


経理業務量を左右する主な要素

必要な人数を考える前に、自社の経理業務量を把握しておくことが重要です。

例えば、次のような項目は業務量へ大きく影響します。

毎月の取引件数

売上件数や仕訳件数が多いほど、記帳や請求書処理の負担は大きくなります。

特に店舗数が多い会社では、毎日の取引件数が多くなりやすいため、業務量も増えます。


従業員数

従業員が増えると、

  • 給与計算
  • 社会保険手続き
  • 年末調整
  • 経費精算

などの業務も増加します。

経理担当者の人数を考える際には、売上だけではなく従業員数も重要な要素です。


利用しているシステム

紙で管理している会社と、クラウド会計や経費精算システムを導入している会社では、必要な作業時間が大きく異なります。

例えば、

  • 銀行口座との自動連携
  • クレジットカード明細の自動取得
  • AIによる仕訳提案

などを活用することで、入力作業を減らせるケースもあります。


社内の役割分担

経理担当者だけですべて対応している会社もあれば、

  • 請求書発行は営業部
  • 経費精算は各部署
  • 給与計算は総務

というように業務を分担している会社もあります。

役割分担によっても、経理担当者の負担は変わります。


【目安】従業員数別の経理体制

ここからは、中小企業でよく見られる経理体制の一例をご紹介します。

あくまで一般的な目安ですが、自社の体制を考える参考になります。

従業員10名程度まで

創業間もない企業や小規模事業者では、

  • 社長
  • 役員
  • 事務担当者

が経理を兼務しているケースが多く見られます。

一方で、経理業務をすべて社長が担当している状態では、本来取り組むべき営業活動や経営判断に十分な時間を割けなくなることがあります。

事業が拡大してきた場合は、「誰が経理を担当するか」ではなく、「どの業務を分担するか」を考え始めるタイミングです。


従業員10〜30名程度

この規模になると、

  • 請求書の件数が増える
  • 支払処理が複雑になる
  • 月次決算を早めたい

といった課題が出てくる企業も増えてきます。

専任担当者を配置する会社もありますが、業務量によっては兼任でも十分対応できるケースがあります。

重要なのは、「人数を増やすこと」ではなく、「現在の体制で無理なく運用できているか」を確認することです。


従業員30〜100名程度

この規模では、経理担当者を複数配置する企業も増えてきます。

例えば、

  • 日常の経理業務
  • 給与計算
  • 月次決算

などを役割分担することで、担当者一人への負担を軽減しやすくなります。

一方で、担当業務を固定しすぎると、「その人しか分からない仕事」が増えやすくなるため注意が必要です。


従業員100名以上

会社規模が大きくなると、

  • 財務
  • 管理会計
  • 売掛金管理
  • 買掛金管理
  • 固定資産管理

など、業務ごとに担当を分ける企業も多くなります。

ただし、人数が増えれば自動的に効率化されるわけではありません。

部門間の連携や業務フローの整備も重要になります。

人数より重要なのは「業務が回る仕組み」を作ること

ここまで会社規模ごとの目安をご紹介しましたが、実際には「経理担当者が何人いるか」よりも、「その人数で安定して業務を回せる仕組みになっているか」の方が重要です。

例えば、経理担当者が1人でも、

  • 業務マニュアルが整備されている
  • クラウド会計を活用している
  • 業務の進め方が標準化されている

といった環境であれば、効率よく運用できる会社もあります。

一方で、担当者が複数いても、

  • 担当者ごとに処理方法が違う
  • 引き継ぎができない
  • 業務が特定の人へ集中している

という状態では、人が増えても業務は安定しません。

「人数を増やせば解決する」と考えるのではなく、現在の経理業務を見直し、効率的に運用できる体制を整えることが大切です。

合わせて読みたい:中小企業の経理体制の作り方|採用・外注・経理代行の選び方


人を増やす前に確認したいこと

経理担当者の採用を検討する前に、一度確認しておきたいポイントがあります。

本当に人手不足が原因なのか

経理担当者が忙しい理由は、人手不足だけとは限りません。

例えば、

  • 同じ内容を何度も手入力している
  • 紙の書類を中心に管理している
  • 承認フローが複雑になっている

といった業務の進め方が原因になっていることもあります。

業務そのものを改善することで、現在の人員でも十分対応できるケースがあります。

合わせて読みたい:経理担当者が辞める理由とは?退職防止のためにできること


業務を分担できないか

経理担当者が対応している業務の中には、他部署でも対応できるものがあります。

例えば、

  • 請求書の内容確認
  • 経費申請
  • 領収書の提出

などを各部署で対応することで、経理担当者の負担を軽減できる場合があります。

業務の役割を見直すことも、経理体制を整える方法の一つです。

合わせて読みたい:経理担当者が退職・休職したとき、経理代行は使える?対応範囲を解説


外部のサポートを活用した方がよい業務はないか

すべての業務を社内で行う必要はありません。

記帳や給与計算など、定型的な業務については外部サービスを活用することで、社内担当者がより重要な業務へ集中できることもあります。

採用と外注には、それぞれメリット・デメリットがあります。

どちらが自社に合っているかを比較したい方は、次の記事をご覧ください。

合わせて読みたい:経理を採用する?外注する?年間コスト・メリット・デメリットを比較


公認会計士の視点|適正人数は「経営者が数字を見られる状態」で判断する

「経理担当者は何人必要ですか」というご相談を受けることがあります。

しかし実務では、「従業員30人だから1人」「50人だから2人」といった単純な基準で判断することはありません。

私が重視しているのは、次のような状態になっているかどうかです。

  • 月次決算が毎月安定して完了している
  • 経営者が必要なタイミングで数字を確認できる
  • 特定の担当者しか業務内容を把握していない状態になっていない
  • 残業や休日対応が常態化していない

これらが実現できていれば、必ずしも人数を増やす必要はありません。

反対に、毎月の決算が遅れたり、担当者へ負担が集中したりしている場合は、経理体制そのものを見直すタイミングと考えられます。

「人数」を増やすことが目的ではなく、「安定して経理業務を回せる体制」を作ることが重要です。


よくある質問

Q. 従業員10人未満でも経理担当者は必要ですか?

必ずしも専任担当者が必要とは限りません。

業務量によっては、社長や事務担当者が兼務しながら運用できるケースもあります。

ただし、本業へ支障が出ている場合は、業務分担や外部サービスの活用を検討するタイミングです。


Q. 一人経理でも問題ありませんか?

業務量が適切で、引き継ぎ体制や業務マニュアルが整備されていれば、一人経理でも運用できる場合があります。

ただし、担当者しか業務内容が分からない状態は避けることが重要です。

合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法


Q. 経理担当者を採用するタイミングはいつですか?

月次決算が遅れ始めたり、経営者や他部署の負担が大きくなったりしたときは、経理体制を見直す一つの目安になります。

採用だけでなく、業務改善や外部サービスの活用も含めて検討すると、自社に合った体制を選びやすくなります。

合わせて読みたい:経理が採用できない原因とは?中小企業が取るべき対策


まとめ

経理担当者の適正人数は、従業員数だけで決まるものではありません。

取引件数や業種、利用しているシステム、業務の進め方によって、必要な体制は大きく変わります。

また、「人数を増やすこと」が目的ではなく、

  • 業務量に合った役割分担になっているか
  • 特定の担当者へ負担が集中していないか
  • 安定して月次決算を行える体制になっているか

といった視点で考えることが重要です。

経理担当者の人数に悩んだときは、まず現在の業務量や運用方法を整理し、自社に合った経理体制を検討してみましょう。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

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