鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理代行の契約で注意したい7つのポイント|契約書で確認すべき事項を解説

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経理代行を導入する際は、業務内容や料金だけでなく、契約期間、解約条件、責任範囲、情報管理なども確認する必要があります。

見積書に業務内容と料金が書かれていても、契約終了時の手続きやトラブル発生時の対応まで確認できるとは限りません。

契約内容を十分に確認しないまま導入すると、次のような認識違いが起こる可能性があります。

  • 依頼した業務が契約範囲に含まれていなかった
  • 会社側の対応範囲を把握していなかった
  • 希望する時期に解約できなかった
  • 契約終了後のデータ返却方法が決まっていなかった
  • ミスや納期遅延が発生した際の責任範囲が曖昧だった

この記事では、経理代行の契約時に確認しておきたい7つのポイントと、契約書で見落としやすい項目について解説します。

※本記事は、経理代行の契約で一般的に確認したい事項を解説するものです。個別の契約条項の有効性や法的判断については、必要に応じて弁護士等の専門家へご相談ください。

経理代行を導入する前後の注意点を全体的に確認したい方は、以下の記事をご覧ください。

合わせて読みたい:経理代行で失敗しないための完全ガイド|導入前後に知っておきたい注意点

目次

見積書と契約書では確認する内容が異なる

見積書は、主に業務内容と料金を確認するための書類です。

一方、契約書では、業務をどのような条件で行うかを確認します。

書類主に確認する内容
見積書業務内容、件数、月額料金、初期費用
契約書契約期間、責任範囲、解約、守秘義務、データ管理

見積書に記載されている業務内容と、契約書に記載されている委託範囲が一致しているかも確認する必要があります。

経理代行の料金相場や見積もりの基本については、以下の記事で確認できます。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

契約前に確認したい7つのポイント

契約書では、最低限、次の7項目を確認しましょう。

確認項目確認したい内容
委託業務の範囲経理代行側と会社側が担当する業務
納期と資料提出期限毎月の締め日、資料提出日、納品日
情報管理・守秘義務情報の利用、保管、再委託、返却
契約期間・更新最低契約期間、自動更新の有無
解約条件申出期限、違約金、終了時の手続き
責任範囲ミス、遅延、資料不足が起きた場合の対応
契約変更・運用方法業務範囲の変更方法、連絡や承認の手順

1.委託業務の範囲を確認する

最初に確認したいのは、経理代行側が担当する業務と、会社側に残る業務です。

契約書には、具体的な業務名が記載されているか確認しましょう。

例えば、次のような業務です。

  • 記帳
  • 請求書の発行・管理
  • 入金確認
  • 支払予定表・振込データの作成
  • 経費精算
  • 給与計算
  • 月次資料の作成

「経理業務一式」などの曖昧な表現だけでは、どこまで対応してもらえるか判断できません。

また、経理代行へ依頼しても、会社側には次のような役割が残ります。

  • 必要資料を期限までに提出する
  • 取引内容を説明する
  • 請求金額を決定する
  • 支払いを最終承認する
  • 振込を実行する
  • 経営判断を行う

経理代行側の業務だけでなく、会社側が行う作業も契約前に整理しましょう。

経理代行で依頼できる業務の全体像については、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説

2.納期と資料提出期限を確認する

経理代行会社が業務を完了するためには、会社側から必要な資料を提出する必要があります。

契約書や運用資料では、次の期限を確認しましょう。

  • 会社が資料を提出する日
  • 不明点へ回答する期限
  • 月次の締め日
  • 試算表や月次資料の提出日
  • 支払予定表や振込データの作成日
  • 給与計算に必要な勤怠データの提出日

月次資料の納品日だけを確認しても、会社側の資料提出が遅れた場合にどうなるか分かりません。

資料提出が遅れた場合の納期変更や、急ぎ対応の可否も確認しておく必要があります。

月次処理が遅れる原因と契約前の対策については、以下の記事も参考になります。

合わせて読みたい:経理代行で月次が遅れる罠!失敗事例5選と契約前の対策

3.情報管理と守秘義務を確認する

経理代行では、会社の重要な情報を外部へ共有します。

例えば、次のような情報です。

  • 売上や利益
  • 銀行口座
  • 取引先
  • 従業員の給与
  • 経費
  • 契約内容
  • 資金繰り

契約書では、守秘義務だけでなく、情報の利用方法や保管方法も確認しましょう。

主な確認項目は次のとおりです。

  • 守秘義務の対象
  • 情報を利用できる目的
  • データの保管場所
  • アクセス権限の管理
  • 再委託の有無
  • 再委託先にも同等の守秘義務・情報管理義務が課されるか
  • 契約終了後の情報削除
  • 原本やデータの返却方法
  • 情報漏えい時の連絡方法

秘密保持条項があるだけで安心せず、誰がどの情報へアクセスできるかまで確認することが重要です。

4.契約期間と更新条件を確認する

契約書では、契約開始日と終了日を確認します。

特に注意したいのが、自動更新と最低契約期間です。

次の点を確認しましょう。

  • 契約期間は何か月か
  • 最低利用期間があるか
  • 契約は自動更新されるか
  • 自動更新を止める期限
  • 更新後の契約期間
  • 更新時に料金や条件が変わる可能性
  • 契約内容を定期的に見直す機会があるか

例えば、1年契約が同じ期間で自動更新される場合、期限までに更新停止を申し出なければ、更新後の契約期間中は解約条件や違約金の制約を受ける可能性があります。

契約期間だけでなく、自動更新の有無、更新を停止するための申出期限、中途解約の条件まで確認しておきましょう。

5.解約条件と終了時の対応を確認する

契約時には、導入後のことに意識が向きがちですが、サービスを終了する場合の手続きも確認する必要があります。

主な確認項目は次のとおりです。

  • 解約を申し出る期限
  • 解約方法
  • 解約金や違約金
  • 最低契約期間中の解約
  • 未払い料金の精算
  • 作業中の業務の取り扱い
  • 会計データの返却方法
  • 原本資料の返却
  • アカウントやアクセス権限の削除
  • 後任者への引継ぎ対応

契約を終了できても、会計データや資料をすぐに引き継げなければ、次の経理体制へ移行できません。

終了時に、どの形式で、いつまでにデータを受け取れるかを確認しましょう。

経理代行会社の変更を検討する際の確認事項については、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:経理代行を乗り換える前に確認したい7つのポイント

6.トラブルが発生した場合の責任範囲を確認する

経理業務では、入力ミスや資料不足、納期遅延などが発生する可能性があります。

契約書では、問題が起きた場合の対応と責任範囲を確認しましょう。

例えば、次のような場合です。

  • 経理代行側の入力ミス
  • 会社側の資料提出漏れ
  • 会社から誤った情報が提供された
  • システム障害で作業できなかった
  • 月次資料の作成が遅れた
  • 支払予定表に誤りがあった
  • データが消失した
  • 情報漏えいが起きた

確認したいのは次の点です。

  • 修正作業の対応方法
  • 修正費用を誰が負担するか
  • 損害賠償の範囲
  • 賠償額の上限
  • 免責となる条件
  • 問題発生時の連絡期限
  • システム障害や災害時の対応

経理代行側だけでなく、資料提出や承認を行う会社側の責任も明確にする必要があります。

7.契約変更と運用方法を確認する

事業の成長や社内体制の変化によって、経理代行へ依頼する業務も変わる可能性があります。

契約前には、業務範囲を変更する場合の手続きも確認しましょう。

主な確認項目は次のとおりです。

  • 業務を追加する場合の手続き
  • 業務を減らす場合の手続き
  • 契約変更が適用される時期
  • 契約書の変更が必要か
  • 業務量が変わった場合の見直し方法
  • 担当者変更時の対応

また、日常の運用方法も整理しておきます。

  • 資料の受け渡し方法
  • 連絡手段
  • 不明点の確認先
  • 回答期限
  • 支払予定表・振込データ作成と、最終承認・振込実行の役割分担
  • 緊急時の連絡方法

契約書にすべての運用方法を記載しない場合は、資料の提出期限や承認方法、連絡手段などを、別紙の業務仕様書や運用ルールとして残しておくと、認識違いを防ぎやすくなります。

契約上の役割分担が明確でも、実際の運用方法が社内で共有されていなければ、確認の停滞や手戻りが発生することがあります。

経理代行を導入した後に起こりやすい社内運用上の問題と、その回避策については、以下の記事も参考にしてください。

合わせて読みたい:経理代行で失敗する会社の共通点|導入後の社内運用と回避策

契約書で使用される表現も確認する

契約書には、日常生活ではあまり使わない用語が記載されていることがあります。

こうした契約用語は、言葉の意味だけで判断するのではなく、対象となる業務や適用条件、例外、関連する条項を含めて確認することが大切です。

同じ用語でも、契約書の内容によって適用される範囲が異なる場合があります。

特に、次の用語が契約書の中でどのように定められているかを確認しましょう。

善管注意義務

業務を受託した事業者が、その立場や業務の性質に応じて通常求められる注意を払い、業務を行う義務です。

具体的にどの程度の注意が求められるかは、契約内容や委託された業務の性質によって異なります。

再委託

経理代行会社が、受託した業務の一部を別の事業者へ依頼することです。

再委託の可否に加え、事前承諾や通知が必要か、再委託先にも同等の守秘義務・情報管理義務が課されるかを確認します。

再委託が行われる場合は、どの業務を誰が担当するのか、問題が発生した際に契約先の経理代行会社がどこまで責任を負うのかも確認しておきましょう。

免責

一定の条件において、契約当事者が責任の全部または一部を負わないことを定める条項です。

会社側の資料提出の遅れや、外部システムの障害などが免責の対象になる場合があります。

どのような場合に免責が適用されるのか、例外となる条件も含めて確認しましょう。

損害賠償の上限

トラブルが起きた場合に、経理代行会社が負う賠償額の上限です。

月額料金の一定月数分などに制限されていることがあります。

中途解約

契約期間の途中で契約を終了することです。

中途解約が可能かどうかに加え、解約の申出期限、違約金、残存期間分の料金が発生するかを確認します。

公認会計士の視点|契約書は役割の境界を確認する

経理代行の契約では、「何をしてもらえるか」だけでなく、「どこから会社側の役割になるか」を確認することが重要です。

例えば、支払いに関する業務でも、経理代行側が支払予定表と振込データを作成し、会社側が最終承認と振込実行を行うことがあります。

この境界が曖昧だと、双方が相手の対応を待ち、支払いが遅れる可能性があります。

契約前には、業務ごとに次の点を確認しましょう。

  • 作業を開始するために必要な情報
  • 経理代行側が行う作業
  • 会社側が確認する内容
  • 最終的な判断や承認を行う人
  • 問題が起きたときの連絡先

契約書だけで分かりにくい場合は、業務フロー図や役割分担表を作成すると、認識を合わせやすくなります。

よくある質問

Q1. 見積書だけ確認すれば契約しても問題ありませんか?

見積書だけでは不十分です。

見積書では料金や業務内容を確認できますが、契約期間、解約条件、責任範囲、情報管理などは契約書で確認する必要があります。

Q2. 契約途中で依頼内容を変更できますか?

契約内容によって異なります。

業務の追加や削減ができる場合でも、契約変更や料金の見直しが必要になることがあります。

Q3. 契約書に書かれていない運用ルールはどうすればよいですか?

業務仕様書や運用ルールとして書面に残しましょう。

資料提出日、連絡方法、承認者などを記録しておくと、導入後の認識違いを防ぎやすくなります。

Q4. 契約前に不明点を質問してもよいですか?

不明点は契約前に確認する必要があります。

口頭で説明を受けた重要事項は、契約書や別紙、メールなど、後から確認できる形で残しましょう。

まとめ

経理代行の契約では、業務内容や料金だけでなく、次の項目を確認することが重要です。

  • 委託業務の範囲
  • 納期と資料提出期限
  • 情報管理・守秘義務
  • 契約期間と更新条件
  • 解約条件と終了時の対応
  • トラブル発生時の責任範囲
  • 契約変更と運用方法

契約書は、サービスを利用するためだけの書類ではありません。

経理代行側と会社側の役割を明確にし、契約後の認識違いやトラブルを防ぐための書類です。

内容が分かりにくい場合は曖昧なまま契約せず、業務範囲や責任の境界を確認しましょう。

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