「記帳が数カ月分たまっている」
「請求書や領収書がそろわず、月次決算が終わらない」
「目の前の支払や請求に追われ、過去の処理まで手が回らない」
経理業務が滞り始めると、担当者が残業を増やしても、なかなか追いつけないことがあります。
未処理の取引を確認している間にも、新しい請求書や入出金が発生するためです。
このような状態で、たまった業務を古い順に片付けようとすると、当月の経理まで遅れてしまいます。反対に、目の前の業務だけを優先していると、過去の未処理はいつまでも残ったままです。
経理を立て直すときに必要なのは、すべての業務を一度に終わらせることではありません。
まず、支払や請求など止められない業務を守ります。そのうえで未処理を一覧にし、過去の処理と当月の処理を分けて進めることが大切です。
この記事では、経理が回らなくなった会社が、業務を止めずに通常運用へ戻すための優先順位と7つの手順を解説します。
経理が回らないときは、すべてを一度に片付けない
経理が滞っている会社では、複数の問題が同時に発生していることが少なくありません。
例えば、次のような状態です。
- 会計ソフトへの入力が終わっていない
- 請求書や領収書が不足している
- 入出金の内容を確認できていない
- 売掛金や買掛金の残高が合わない
- 月次決算が数カ月遅れている
- 誰が何を確認するのか決まっていない
- 担当者が当月業務だけで手いっぱいになっている
これらを思いついた順に処理すると、緊急性の高い業務が後回しになる可能性があります。
最初に行いたいのは、現在の業務を優先度ごとに分けることです。
| 優先度 | 業務の例 | 対応方針 |
|---|---|---|
| 最優先 | 給与、期限が近い支払、請求書発行、税金や社会保険に関する対応 | 期限を確認し、業務を止めない |
| 高 | 当月の入出金、証憑回収、請求・入金確認 | 新たな滞留を増やさない |
| 中 | 過去月の記帳、不明取引、残高差額 | 担当者と期限を決めて解消する |
| 低 | マニュアル整備、システム変更、業務改善 | 通常運用へ戻した後に進める |
クラウド会計の導入や業務フローの見直しは大切ですが、支払期限が迫っている状況で、システム変更から始めるのは現実的ではありません。
経理の立て直しでは、今すぐ守る業務と、時間を確保して解消する業務を分ける必要があります。
経理が回らなくなる主な原因
経理が滞る原因は、単純な人手不足だけではありません。
取引件数の増加に業務フローが追いついていない、証憑の提出期限が決まっていない、確認が必要な取引を放置しているなど、小さな遅れが重なっている場合もあります。
業務量と担当者数が合っていない
取引件数や従業員数が増えても、創業当初と同じ人数や方法で経理を続けていると、少しずつ処理が遅れます。
日常業務を終えるだけで精いっぱいになり、残高確認や月次資料の作成が後回しになるケースもあります。
資料の提出方法と期限が決まっていない
請求書や領収書が紙、メール、チャット、共有フォルダなどに分散していると、経理担当者は処理の前に資料を探さなければなりません。
提出期限が決まっていなければ、担当者が何度も社内へ催促することになります。
確認待ちの取引が放置されている
入出金の内容や経費の用途が分からない場合、社内の担当者へ確認が必要です。
確認先や回答期限が決まっていないと、不明取引が毎月積み上がり、月次決算を締められなくなります。
一人しか業務の進め方を知らない
担当者本人は処理できても、周囲が業務の状況を把握できていないことがあります。
担当者が休んだり退職したりすると、保存場所や処理方法が分からず、経理が止まりかねません。
一人に業務が集中する原因や、担当者が変わっても続けられる仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法
経理を立て直す7つの手順
1.期限がある業務を止めない
最初に、今後1カ月程度の支払日、給与支給日、請求書発行日、社内の提出期限を確認します。
過去の記帳が終わっていなくても、取引先への支払や従業員への給与を止めることはできません。
当面の業務を継続するために、期限が決まっているものから担当者と確認者を割り当てます。
例えば、支払業務では次の工程があります。
- 請求書を受け取る
- 取引内容と金額を確認する
- 支払予定へ登録する
- 振込データを作成する
- 支払内容を承認する
- 振込を実行する
振込データの作成を外部へ依頼する場合でも、支払内容の確認・承認・最終実行は会社側に残す運用が基本です。
急いでいるときほど、作業と承認を一人へ集中させないことが大切です。
2.未処理の業務を一つの一覧にする
次に、現在終わっていない業務を洗い出します。
担当者のメールやメモ、会計ソフト内のコメントなど、複数の場所で管理せず、一つの一覧へまとめます。
| 未処理事項 | 対象月 | 現在の状態 | 確認先 | 期限 | 担当者 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上の入金内容が不明 | 7月 | 回答待ち | 営業担当者 | 8月8日 | 経理担当者 |
| 取引先Aの請求書が不足 | 7月 | 資料待ち | 購買担当者 | 8月9日 | 総務担当者 |
| 預金残高に差額がある | 6月 | 調査中 | 経理責任者 | 8月12日 | 経理担当者 |
| 経費の用途が不明 | 6月 | 本人確認待ち | 利用者本人 | 8月8日 | 経理担当者 |
この段階で、原因をすべて解決する必要はありません。
何が終わっていないのか、誰の回答が必要なのか、いつまでに確認するのかが見えるだけでも、業務を進めやすくなります。
売掛金について、請求額と入金後の残高が合わない状態も、原因が分からないまま放置せず、差額の確認が必要な未処理事項として分けておきます。入金消込で差額が生じた場合の原因と確認手順は、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:売掛金の入金消込が合わない7つの原因|差額を解消する6つの確認手順
未処理事項を一覧にするときは、内容だけでなく、担当者、確認先、期限、現在の状況まで整理しておくと、解消漏れを防ぎやすくなります。
未処理一覧に記載したい項目や、月次決算までに解消する管理方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:経理の未処理一覧とは?月次決算までに解消する管理方法
3.立て直す対象期間と基準日を決める
「過去の処理をすべて確認する」と決めても、対象が曖昧では作業量を把握できません。
まず、どの月まで月次決算が完了しているのかを確認します。
例えば、4月までは残高確認まで終わっており、5月以降の記帳が途中であれば、5月を立て直しの開始月にします。
記帳が複数月たまっている場合は、最後に記帳が完了している月を確認し、未入力の期間と必要な資料を整理してから進めます。
たまった記帳を整理し、通常の会計入力ペースへ戻す具体的な手順については、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:経理の記帳がたまっている会社の対処法|会計入力を立て直す5つの手順
次に、次の項目を確認します。
- 最後に月次決算が完了した月
- 会計ソフトへの入力が終わっている期間
- 預金残高を確認できている日
- 売掛金・買掛金を確認できている月
- 不足している資料の対象期間
- 税理士や会計事務所へ渡しているデータ
- 決算や金融機関への提出など、今後の期限
過去数年分を一度に見直そうとせず、現在の月次決算へ影響する期間から着手します。
税務申告後の数値を変更する必要がある場合や、過年度の会計処理に誤りが疑われる場合は、自己判断で修正せず、税理士や公認会計士などの専門家へ確認します。
4.不足資料と確認待ちを分ける
経理処理が止まる理由は、大きく分けると「資料がない」と「内容が分からない」の二つです。
資料がない場合は、請求書、領収書、契約書、利用明細など、必要な資料と提出者を整理します。
内容が分からない場合は、取引先名、日付、金額、入出金口座などをまとめ、誰に確認すればよいかを決めます。
両方を同じ状態で曖昧に管理すると、資料が届いた後も処理方法が決まらず、再び止まることがあります。
確認依頼をするときは、「この取引を確認してください」だけではなく、次の情報を添えると回答を得やすくなります。
- 取引日
- 金額
- 取引先や振込名義
- 確認したい内容
- 回答期限
- 必要な添付資料
また、回答がないまま月次決算を止め続けないよう、期限までに確認できなかった場合の社内対応も決めておきます。
内容が分からない取引を推測だけで確定させるのではなく、未確認であることが分かる状態で管理し、後から確認できるようにします。
5.過去月と当月の業務を分けて進める
経理を立て直すときに最も避けたいのは、過去の処理に集中した結果、当月の業務も遅れることです。
過去月を処理する時間と、当月を処理する時間を分けます。
例えば、午前中は当月の支払や請求を処理し、午後の一定時間を過去月の記帳に使う方法があります。
担当者を分けられる場合は、一人が当月業務を担当し、別の人が過去月の整理を進めます。
資料がそろっている月から処理した方が早く見えることもありますが、月を飛ばして仕訳を確定すると、預金や売掛金などの残高のつながりを確認しにくくなる場合があります。
基本的には、最後に月次決算が完了した翌月から順番に進めます。
6.残高を確認し、月次決算までつなげる
会計ソフトへの入力が終わっても、それだけで立て直しが完了したとは言えません。
預金、売掛金、買掛金、未払金などの残高を確認し、実際の資料と一致しているかを確かめます。
主な確認資料は次のとおりです。
| 勘定科目 | 確認する資料 |
|---|---|
| 普通預金 | 預金通帳、インターネットバンキングの明細 |
| 売掛金 | 請求書、入金明細、未入金一覧 |
| 買掛金・未払金 | 受領した請求書、支払予定表、振込実績 |
| クレジットカード | カード利用明細、領収書 |
| 仮払金・立替金 | 精算書、申請書、利用者への確認結果 |
買掛金・未払金について、請求書や支払実績を確認しても帳簿上の残高が合わない場合は、計上漏れや重複計上、支払後の消込漏れなど、差額が生じた原因を一つずつ確認します。
合わせて読みたい:買掛金・未払金の残高が合わない7つの原因|請求・支払・帳簿を照合する6つの手順
入力件数だけを減らすことを優先すると、二重計上や計上漏れ、不明な残高が残ることがあります。
後から原因を調べられるように、いつ、どの資料と照合したのかも記録しておくと安心です。
残高確認後は月次資料を作成し、前月や予算と比べて大きな増減がないかを確認します。
過去月の処理を入力するだけで終わらせず、経営者や責任者が数値を確認できる状態まで進めることが重要です。
複数月にわたって月次決算が遅れている場合は、入力だけでなく、残高確認や未処理事項の解消まで進め、古い月から1カ月ずつ数字を確定していく必要があります。
過去月の月次決算を通常月まで追いつかせる具体的な手順については、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:月次決算の遅れを取り戻す方法|過去月から通常月へ追いつく6つの手順
7.通常運用へ戻すための担当者と締切を決める
過去の未処理が減っても、元の進め方へ戻れば、再び経理が滞る可能性があります。
立て直しの最後に、翌月以降の担当者、提出期限、確認日を決めます。
最低限、次の内容を整理します。
- 証憑を提出する人と期限
- 取引内容を確認する人
- 会計ソフトへ入力する人
- 預金や売掛金などの残高を確認する人
- 支払内容を承認する人
- 月次資料を確認する人
- 担当者不在時の代替方法
- 未処理事項を確認する日
最初から詳しいマニュアルを作る必要はありません。
毎月行う業務について、「誰が」「いつまでに」「何を確認するか」を一覧にするところから始めます。
請求書発行や支払、記帳、残高確認など、毎月発生する定型業務については、担当者や期限だけでなく、現在どこまで進んでいるかも見える化しておくと、遅れを早めに把握できます。
合わせて読みたい:経理業務の進捗管理とは?遅れを防ぐ7つの管理項目と運用方法
社内担当者の採用、業務の外注、経理代行の利用など、進捗管理だけでなく経理体制そのものを見直したい場合は、以下の記事も参考になります。
合わせて読みたい:中小企業の経理体制の作り方|採用・外注・経理代行の選び方
経理の立て直しを社内だけで進めるのが難しい場合
当月業務だけで担当者の時間が埋まり、過去の未処理を解消する時間を確保できない場合は、外部支援も選択肢になります。
特に、複数月の記帳が滞っている、月次決算を締められる人がいない、決算や金融機関への提出期限が迫っている場合は、社内だけで通常業務と立て直しを同時に進められるかを確認します。
外部へ依頼する場合も、すべての業務を任せる必要はありません。
過去月の記帳や資料整理など作業量が多い部分を外部へ依頼し、取引内容の確認や承認は社内で行うなど、現在の状況に応じて役割を分ける方法があります。
経理代行へ依頼できる業務や、導入までの一般的な流れについては、以下の記事で解説しています。
合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説
外部支援を利用する場合に整理したい情報
外部へ相談する時点で、すべての資料が整理されている必要はありません。
ただし、現在どこまで処理が終わっているのかを伝えられると、必要な作業を整理しやすくなります。
まず、次の情報を確認します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 最後に処理が完了した月 | 月次決算や残高確認が終わっている月 |
| 滞っている業務 | 記帳、請求、支払、入金確認、月次決算など |
| 対象期間 | 何月から何月までか |
| 使用システム | 会計、請求、経費精算など |
| 資料の保存場所 | 紙、メール、共有フォルダ、クラウドなど |
| 希望する期限 | 決算、金融機関への提出、社内報告など |
| 社内の窓口 | 資料提出や質問回答を担当する人 |
| 確認者 | 支払や月次数値を確認する責任者 |
資料が整理されていないこと自体を隠す必要はありません。
何が不足しているか分からない場合は、その状況も含めて共有します。
現在の状態が分かれば、どの業務から進めるのか、社内と外部でどのように役割を分けるのかを整理しやすくなります。
経理の立て直しでよくある失敗
過去の処理だけに集中する
過去の記帳を優先しすぎると、当月の請求、支払、入金確認が遅れ、新しい未処理が増えてしまいます。
当月業務を守る担当者や時間を確保したうえで、過去月の処理を進めます。
入力件数だけを減らそうとする
仕訳入力が終わっても、証憑が不足している、取引内容が分からない、残高が一致していない状態では、月次決算を確定できません。
入力後の残高確認と未処理事項の確認まで行います。
システムを変更すれば解決すると考える
クラウド会計や経費精算システムは、業務を効率化するために役立ちます。
しかし、提出期限や確認者が決まっていない状態では、システムを変更しても資料や回答は集まりません。
まず現在の経理を通常運用へ戻し、その後に必要なシステム変更を検討します。
一人の担当者へ立て直しを任せる
経理を立て直せる経験者を採用しても、その人だけが業務を把握する状態では、新しい属人化が発生します。
作業を行う人、内容を確認する人、承認する人を分け、会社側でも進捗を確認できるようにします。
公認会計士の視点|立て直しは入力件数ではなく「締められる状態」で判断する
経理が滞っていると、未入力の仕訳件数を減らすことが目標になりがちです。
しかし、会計ソフトへの入力が終わっていても、預金残高が一致していない、不明取引が残っている、売掛金の入金状況を確認できていない状態では、月次数値を安心して利用できません。
経理の立て直しは、「入力が終わったか」ではなく、次の状態まで確認して判断します。
- 必要な資料がそろっている
- 不明取引と未処理事項が管理されている
- 預金や売掛金などの主要な残高が確認されている
- 月次資料を責任者が確認している
- 翌月も同じ流れで業務を続けられる
- 担当者が不在でも進め方を確認できる
立て直し作業を一人へ任せきりにすると、その人が新しい属人化の原因になることがあります。
作業を行う人、内容を確認する人、最終的に承認する人を分け、会社側でも進捗を把握できるようにしましょう。
よくある質問
Q1.経理が何カ月遅れたら立て直しが必要ですか?
一律の月数で判断するものではありません。
1カ月の遅れでも、支払や請求、月次決算、決算などの期限へ影響している場合は、早めに状況を整理する必要があります。
また、毎月少しずつ遅れが拡大している場合も、そのままでは通常運用へ戻りにくくなります。
Q2.資料が整理されていなくても立て直しを始められますか?
始められます。
最初からすべての資料をそろえようとするのではなく、現在ある資料と不足している資料を分けて整理します。
資料が不足している場合は、提出者と期限を決め、回収と並行して進めます。
Q3.過去月と当月のどちらを先に処理すべきですか?
支払や請求など、期限がある当月業務を止めないことが優先です。
そのうえで、過去月の処理時間を別に確保します。
過去月については、基本的に最後に月次決算が完了した翌月から順番に進めます。
Q4.経理を立て直すまで、どのくらいの期間がかかりますか?
滞っている期間、取引件数、資料の状態、確認が必要な取引の数によって異なります。
入力だけでなく、資料回収、社内確認、残高照合、月次資料の作成が必要になるため、仕訳件数だけでは判断できません。
最初に対象期間と未処理事項を整理すると、必要な作業量や期間を見積もりやすくなります。
Q5.立て直しが終わったら、どの状態を維持すればよいですか?
毎月の請求、支払、記帳、残高確認、月次決算が決めた期限までに進み、未処理事項を把握できている状態を維持します。
担当者だけでなく、確認者や代替方法も決めておくことが重要です。
まとめ
経理が回らなくなったときは、すべての未処理を一度に片付けようとしないことが大切です。
まず、支払、給与、請求など期限がある業務を止めないようにします。
その後、未処理を一覧にし、対象期間、確認先、担当者、期限を整理します。
過去月の処理と当月業務は分けて進め、会計ソフトへの入力だけでなく、残高確認と月次資料の作成までつなげます。
通常運用へ戻った後は、担当者、提出期限、確認者を決め、同じ滞留を繰り返さない仕組みを整えましょう。
経理代行を利用する場合の費用は、滞っている期間、取引件数、資料の状態、対応する業務範囲などによって変わります。
一般的な料金相場や費用の内訳については、以下の記事で解説しています。
合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説
経理代行サブスクサービス「まるまる経理」では、記帳、証憑管理、売掛金・買掛金管理、月次決算作業、月次資料の整備、業務マニュアル作成などを、プランおよび契約範囲に応じて支援します。
経理業務が滞っている場合は、現在の処理状況、対象期間、資料の状態、希望する期限を確認し、社内で対応する業務と外部へ依頼する業務を整理します。
「何から手をつければよいか分からない」
「現在の担当者だけでは追いつけない」
このような段階でもお気軽にご相談ください。
