鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理業務の進捗管理とは?遅れを防ぐ7つの管理項目と運用方法

経理業務の進捗管理に必要な担当者・期限・ステータスなど7つの管理項目を解説する画像

「請求書の発行は終わっているが、入金確認はどこまで進んでいるのか分からない」

「支払データは作成済みだが、誰の承認を待っているのか分からない」

「月次決算が近づいてから、終わっていない業務に気付く」

経理業務では、複数の担当者や工程が関わるため、一つひとつの業務は進んでいても、全体の状況が見えなくなることがあります。

特に、

  • 請求書発行
  • 入金確認
  • 経費精算
  • 支払業務
  • 会計入力
  • 残高確認
  • 月次決算

などを別々に管理していると、「どこまで終わっているのか」「次に誰が対応するのか」が分かりにくくなります。

そこで重要になるのが、経理業務の進捗管理です。

この記事では、日々の経理業務を遅らせないために、担当者・期限・ステータスなどをどのように管理すればよいのかを解説します。

なお、すでに複数月の記帳や月次決算が遅れており、通常業務そのものが回っていない場合は、進捗管理を始める前に立て直しが必要になることがあります。

合わせて読みたい:経理が回らない会社の立て直し方|優先順位と7つの改善手順


目次

経理業務の進捗管理とは?

経理業務の進捗管理とは、毎月繰り返し発生する業務について、

「何を」「誰が」「いつまでに」「どこまで進めているか」

を確認できる状態にすることです。

例えば、請求書発行という業務でも、

請求内容の確定
→ 請求書の作成
→ 内容確認
→ 送付
→ 入金確認

と複数の工程があります。

「請求書業務をやっている」というだけでは、どの工程まで終わっているのか分かりません。

そこで、業務ごとに担当者や期限、現在のステータスを記録しておくことで、担当者以外でも状況を把握できるようにします。

進捗管理の目的は、細かく業務を監視することではありません。

月次決算や支払などの期限が近づく前に、止まっている業務へ気付ける状態をつくることが目的です。


経理業務は「終わってから確認」では遅れやすい

経理では、前の業務が終わらないと次の業務へ進めないケースが多くあります。

例えば、

請求書が届かない
→ 費用を計上できない
→ 買掛金・未払金を確認できない
→ 月次決算を確定できない

というように、一つの遅れが後工程へ影響することがあります。

月末になってから、

「まだ資料が届いていない」

「承認が終わっていない」

「この業務は誰が担当しているのか分からない」

と気付いても、月次決算までの時間は限られています。

そのため、完了した業務だけを見るのではなく、進行中の業務がどこで止まっているのかを途中で確認することが重要です。


進捗管理表と未処理一覧は役割が異なる

経理業務を管理するとき、「進捗管理表」と「未処理一覧」が同じものに見えることがあります。

しかし、役割は異なります。

管理するもの主な目的
進捗管理表毎月の定型業務が予定どおり進んでいるか確認する請求書発行、支払、記帳、残高確認
未処理一覧通常処理できない個別事項を管理する資料待ち、不明取引、差額確認、承認待ち

例えば、

「8月分の入金消込:作業中」

という状態は進捗管理表で確認します。

一方で、

「A社の入金額が請求額と1万円合わず、営業担当へ確認中」

という個別の問題は未処理一覧で管理します。

進捗管理表で「確認待ち」が発生したときに、具体的な確認事項を未処理一覧へ移すイメージです。

未処理事項を管理する項目や運用方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理の未処理一覧とは?月次決算までに解消する管理方法


経理の進捗管理表に入れたい7つの項目

進捗管理表は、項目を増やしすぎると更新すること自体が負担になります。

まずは、次の7項目から始めると管理しやすくなります。

1.業務名

何の業務を管理しているのかを記載します。

例えば、

  • 請求書発行
  • 入金確認・消込
  • 経費精算
  • 支払データ作成
  • 会計入力
  • 残高確認
  • 月次決算

などです。

業務名は細かく分けすぎず、「完了したかどうかを判断できる単位」にします。


2.対象月・対象期間

何月分の業務なのかを記載します。

毎月同じ業務を行う場合でも、

「7月分」

「8月分」

が分かれていなければ、現在処理している期間が分かりにくくなります。

複数月の業務が並行している場合ほど、対象月を明確にしておくことが重要です。


3.担当者

その業務を進める担当者を決めます。

「経理担当」

「総務」

と部署名だけを書くのではなく、可能であれば担当者まで明確にします。

外部の経理代行を利用している場合は、

  • 会社側
  • 経理代行側

のどちらが担当する業務なのかも分けておきます。

ただし、担当者を明確にしても、その人しか業務の進め方や現在の状況を把握していない状態では、休暇や退職によって業務が止まる可能性があります。進捗管理とあわせて、業務手順や確認方法を担当者以外も把握できる状態にしておくことが重要です。

合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法


4.完了予定日

それぞれの業務をいつまでに終えるのかを決めます。

例えば、

業務完了予定日
請求書発行月末まで
経費精算翌月3日
支払データ作成支払日の3営業日前
会計入力翌月7日
残高確認翌月8日
月次決算翌月10日

といった形です。

実際の期限は会社の業務内容や月次決算のスケジュールに合わせて設定します。


5.現在のステータス

進捗状況を一目で確認できるようにします。

ステータスは細かくしすぎず、

  • 未着手
  • 作業中
  • 確認待ち
  • 完了

程度にすると運用しやすくなります。

「確認待ち」になった場合は、誰の回答や承認を待っているのかを別途確認します。


6.次に必要な対応

現在の業務を進めるために必要な次の行動を記載します。

例えば、

  • 営業担当へ請求内容を確認
  • 社長の支払承認待ち
  • 銀行データ取込後に消込
  • 不足している請求書を回収

などです。

進捗が止まっているときに、「次に何をすればよいか」が分かる状態にしておくことが重要です。


7.完了日

実際に業務が完了した日を記録します。

予定日だけを管理していると、

「毎月どの業務が遅れやすいのか」

が分かりません。

完了日を残しておけば、

「経費精算だけ毎月2〜3日遅れている」

「支払承認で止まることが多い」

といった傾向も確認しやすくなります。


経理業務の進捗管理表の例

例えば、次のように管理します。

業務対象月担当者期限ステータス次に必要な対応完了日
請求書発行8月営業事務8/31完了8/30
入金消込8月経理9/5作業中銀行入金を確認
経費精算8月総務9/3確認待ち2名へ提出依頼
支払データ作成8月経理9/6未着手請求書確定後に作成
会計入力8月経理9/7作業中経費精算分を反映
残高確認8月経理9/9未着手記帳完了後に開始
月次決算8月経理責任者9/10未着手残高確認後に締め

この7列をそのままExcelやGoogleスプレッドシートの見出しとして設定すれば、自社用の進捗管理表として使い始めることができます。

この表を見ると、

「経費精算が確認待ちになっている」

「支払データ作成は請求書の確定を待っている」

「残高確認はまだ開始できない」

という状況を確認できます。

単に「終わっている・終わっていない」を見るのではなく、次の工程が止まる原因を早めに把握することがポイントです。


経理業務の進捗管理を続ける5つの運用ルール

進捗管理表を作っても、更新されなければ意味がありません。

毎月継続して使うために、次のルールを決めておきます。

1.毎月同じ業務を登録する

毎月繰り返す業務は、毎回一から作成するのではなく、ひな形として登録しておきます。

月が変わったら対象月と期限だけを更新できる状態にすると、管理負担を減らせます。

毎月登録する業務自体が整理できていない場合は、月次決算前に確認したい月末業務を一度洗い出しておくと、進捗管理表へ登録する業務を決めやすくなります。

2.担当者本人がステータスを更新する

進捗管理者だけがすべての状況を確認して入力すると、管理自体に時間がかかります。

原則として、業務を担当する人が自分のステータスを更新する運用にします。

3.確認する日を決める

進捗表は常に見る必要はありません。

例えば、

  • 毎週月曜日
  • 月末3営業日前
  • 月初1日・5日・8日

など、会社の業務スケジュールに合わせて確認日を決めます。

特に月次決算前は、期限を超えそうな業務がないかを確認します。

4.確認待ちを放置しない

「確認待ち」というステータスのまま更新されなくなると、進捗表を作っていても業務は止まります。

確認待ちになった場合は、

誰の回答を待っているのか、いつまでに回答が必要なのか

を確認します。

個別の確認事項が発生した場合は、未処理一覧へ移して管理します。

同じような不明取引が毎月発生して確認待ちになる場合は、進捗を管理するだけでなく、取引情報の残し方や社内の情報共有ルールを見直し、確認待ちそのものを減らすことも重要です。

合わせて読みたい:経理の不明取引が起きる原因とは?発生を防ぐ5つの事前ルール

5.遅れた原因を翌月の期限へ反映する

毎月同じ業務が遅れる場合は、担当者の努力だけで解決しようとせず、期限や業務の順番を見直します。

例えば、

「請求書の提出期限が遅いため会計入力が進まない」

のであれば、会計入力の担当者を急がせるのではなく、請求書の提出期限そのものを見直す必要があります。

進捗管理は、遅れている人を探すためではなく、業務が止まりやすい工程を見つけるために使うことが重要です。


「進捗率」だけで管理しない

経理業務では、

「全体の80%が完了しています」

という進捗率だけでは、実際の状況を判断しにくいことがあります。

例えば、10個の業務のうち8個が完了していても、

  • 支払承認
  • 売上の確定

という次工程に影響する2つが残っていれば、月次決算を進められないことがあります。

そのため、

何%終わったかではなく、期限に影響する業務が残っていないか

を確認することが重要です。

特に、

  • 締切を超えている
  • 次の工程が待っている
  • 社内承認が必要
  • 他部署からの情報待ち

といった業務は、優先して確認します。


すでに月次決算が遅れている場合は進捗管理だけで解決しない

進捗管理は、通常運用を遅らせないための仕組みです。

すでに、

「3カ月分の記帳が終わっていない」

「過去月の月次決算が締まっていない」

という状態では、通常月の進捗管理と、過去月の立て直しを分けて考える必要があります。

過去月については、

  • どの月まで完了しているか
  • どの月が処理中か
  • どこに未処理があるか

を整理し、古い月から通常月へ追いつかせます。

月次決算が複数月遅れている場合の具体的な進め方は、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:月次決算の遅れを取り戻す方法|過去月から通常月へ追いつく6つの手順


経理代行を利用する場合も進捗管理は必要

経理代行を利用している場合も、進捗管理が不要になるわけではありません。

例えば、

  • 会社が資料を提出する
  • 経理代行が会計入力を行う
  • 不明点を会社へ確認する
  • 会社が回答・承認する
  • 経理代行が残高を確認する

というように、会社側と経理代行側の業務がつながっています。

そのため、

会社側の担当業務と、経理代行側の担当業務を同じ進捗表で確認できる状態

にすると、どちら側で業務が止まっているのかを把握しやすくなります。

経理代行へ任せたからといって、会社側の資料提出や承認まで不要になるわけではありません。

双方の担当者と期限を明確にし、必要な情報を共有できる状態を整えることが重要です。


公認会計士の視点|進捗管理では「止まっている工程」を見る

経理業務の進捗管理では、完了した業務の数だけを見るのではなく、どの工程が次の業務を止めているのかを確認することが重要です。

例えば、

「会計入力はほぼ終わっている」

という状態でも、重要な請求書が1件届いていなければ、残高確認や月次決算を確定できない場合があります。

反対に、未完了の業務が複数あっても、月次決算に直接影響しないものは、優先順位を分けて対応できる場合があります。

進捗表を見るときは、

「何件終わったか」

だけではなく、

「次の工程へ進める状態か」

という視点で確認すると、経理業務全体の遅れを防ぎやすくなります。


よくある質問

Q1.経理業務の進捗管理はExcelやスプレッドシートでもできますか?

はい。

業務数がそれほど多くない場合は、ExcelやGoogleスプレッドシートなどでも管理できます。

重要なのはツールそのものではなく、担当者・期限・ステータスが更新され、関係者が同じ情報を確認できることです。

Q2.一人経理でも進捗管理表は必要ですか?

一人で経理を担当している場合でも有効です。

特に月末月初は複数の業務を並行して進めるため、現在どこまで終わっているのかを一覧にしておくことで、対応漏れを防ぎやすくなります。

また、休暇や退職が発生した場合の引き継ぎにも役立ちます。

Q3.進捗表は毎日更新する必要がありますか?

必ずしも毎日更新する必要はありません。

会社の業務量に応じて、週1回や月初の決まった日に更新する方法でも構いません。

ただし、支払日や月次決算の直前など、期限が集中する時期は確認頻度を上げるとよいでしょう。

Q4.進捗管理表と未処理一覧は一つにまとめてもよいですか?

業務量が少ない会社では、一つの表で管理することもできます。

ただし、通常業務の進捗と、個別の確認事項が増えてきた場合は分けた方が状況を把握しやすくなります。

進捗管理表は「毎月の業務」、未処理一覧は「通常どおり処理できない個別事項」と分けると整理しやすくなります。

Q5.すでに経理業務が大きく遅れている場合も進捗表を作れば改善しますか?

進捗表だけで解決するとは限りません。

複数月の記帳や月次決算が遅れている場合は、まず過去の未処理を整理し、通常月へ追いつくための立て直しを進める必要があります。

そのうえで、再び遅れないように進捗管理を通常運用へ組み込みます。


まとめ

経理業務の進捗管理では、

  • 業務名
  • 対象月
  • 担当者
  • 完了予定日
  • ステータス
  • 次に必要な対応
  • 完了日

を一覧にし、現在どこまで業務が進んでいるのかを見える状態にします。

大切なのは、完了した業務の数を増やすことではありません。

月次決算や支払など、次の工程に影響する業務がどこで止まっているのかを早めに把握することです。

進捗管理を日常業務へ組み込むことで、月末になってから未完了の業務に気付くのではなく、期限前に対応しやすくなります。

「毎月どこかで経理業務が止まる」「誰が何を担当しているのか分かりにくい」「月次決算の直前に未完了業務が見つかる」といった課題がある場合は、経理業務の流れと進捗管理方法を見直してみましょう。

経理業務の進捗管理を含めて経理体制を見直したい方へ

まるまる経理では、記帳や請求書管理、支払業務などの日常的な経理業務だけでなく、業務フローや担当者、期限の整理まで含めた経理体制づくりを支援しています。

現在の業務を整理しながら、「誰が・いつまでに・何をするか」を見える状態にすることで、特定の担当者だけに依存せず、継続して経理業務を進めやすい体制を整えます。

経理業務の進捗が見えにくい、毎月同じ工程で遅れが発生するといったお悩みがある場合は、一度ご相談ください。

経理代行を利用する場合の料金相場や、依頼する業務範囲による費用の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

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