鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

月次決算の遅れを取り戻す方法|過去月から通常月へ追いつく6つの手順

遅れている月次決算を過去月から通常月へ追いつかせる6つの手順を解説する画像

「月次決算が2〜3カ月遅れている」

「過去月の処理が終わらず、今月の経理まで遅れ始めている」

「どの月まで数字が確定しているのか分からない」

このような状態になると、目の前の入力作業を進めるだけでは、なかなか通常の月次決算へ戻れません。

過去月の処理と当月の業務が重なるため、優先順位を決めずに進めると、処理している間にも新しい未処理が増えてしまうからです。

月次決算の遅れを取り戻すためには、まず「どの月まで完了しているのか」を確認し、過去月から順番に月次決算を締めていく必要があります。

この記事では、すでに遅れている月次決算を、過去月から通常月へ追いつかせるための6つの手順を解説します。

経理業務全体が滞っている場合の優先順位や立て直し方については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理が回らない会社の立て直し方|優先順位と7つの改善手順


目次

月次決算の遅れを取り戻すとは?

この記事で扱うのは、毎月の月次決算を数日早める方法ではありません。

すでに過去月の月次決算が終わっておらず、現在の月まで追いついていない状態から、通常の運用へ戻す方法です。

例えば、現在が8月であっても、5月の月次決算までしか完了していなければ、6月・7月の数字が確定していない状態です。

この状態では、経営者が確認している数字と実際の経営状況に時間差が生じます。

また、過去月の処理を進めている間にも、当月の請求、支払、経費精算、入出金などは発生します。

そのため、単純に「入力を急ぐ」のではなく、過去月を順番に締めながら、当月の業務をこれ以上遅らせない進め方が必要です。


最初に「最後に月次決算が完了した月」を確認する

月次決算が遅れているとき、最初に確認したいのは未処理の件数ではありません。

最後に月次決算が完了している月です。

例えば、次のように整理します。

対象最後に完了した月状態
記帳6月完了
預金残高確認5月完了
売掛金確認5月完了
買掛金・未払金確認5月完了
月次決算5月完了

この場合、記帳だけを見ると6月まで進んでいますが、月次決算として確定しているのは5月までです。

6月分については、残高確認や未処理事項の解消などが残っている可能性があります。

「仕訳入力が終わった月」と「月次決算が完了した月」を分けて確認することが大切です。

記帳そのものが複数月たまっている場合は、先に未入力の期間を整理します。

合わせて読みたい:経理の記帳がたまっている会社の対処法|会計入力を立て直す5つの手順


月次決算の遅れを取り戻す6つの手順

1.最後に完了した月を確定する

最初に、どの月まで月次決算が完了しているのかを確認します。

試算表が作成されていても、預金残高や売掛金、買掛金などの確認が終わっていなければ、その月を完了扱いにしない方がよい場合があります。

確認したいのは、例えば次の項目です。

  • 会計ソフトへの入力
  • 預金残高
  • 売掛金
  • 買掛金・未払金
  • 経費精算
  • 未処理の取引
  • 必要な修正仕訳
  • 月次資料

「最後にどの月まで数字を確定できているか」を基準に、立て直しの開始地点を決めます。

2.遅れている月を一覧にする

次に、月次決算が終わっていない月を並べます。

例えば、8月時点で5月まで完了している場合は、次のように整理できます。

状態優先順位
5月完了
6月作業中1
7月未完了2
8月当月処理継続

ここで重要なのは、6月と7月を同時に「確定」させようとしないことです。

月次決算としては、先に6月を締め、その数字を確定してから7月へ進みます。

前月の残高が確定していなければ、翌月の残高確認にも影響するためです。

3.月ごとに「処理できるもの」と「確認待ち」を分ける

遅れている月には、すぐに処理できるものと、社内確認や資料提出が必要なものが混在しています。

すべての資料がそろうまで作業を止めると、月次決算全体が進みません。

そのため、

  • すぐに処理できるもの
  • 資料待ち
  • 社内確認待ち
  • 取引内容の確認が必要なもの

を分けます。

確認が必要な事項については、内容、確認先、依頼日、回答期限などを一覧にして管理すると、どこで月次決算が止まっているのか把握しやすくなります。

重要なのは、「分からない取引がある」という状態のままにせず、誰の回答を待っているのかまで明確にすることです。

確認待ちや資料待ちが複数ある場合は、内容、確認先、担当者、期限、現在の状況を未処理一覧としてまとめておくと、月次決算がどこで止まっているのかを管理しやすくなります。

未処理一覧の作り方や、月次決算までに解消するための管理方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理の未処理一覧とは?月次決算までに解消する管理方法

4.最も古い月から順番に処理する

遅れている月が複数ある場合は、原則として古い月から進めます。

例えば6月・7月の月次決算が遅れている場合、7月の入力作業自体を並行して進めることはできます。ただし、月次決算として数字を確定する順番は、原則として古い月からにします。

6月末の残高が確定していなければ、7月の残高確認にも影響することがあるためです。

特に、

  • 預金
  • 売掛金
  • 買掛金
  • 未払金
  • 前払費用
  • 未収入金

などの残高は前月から翌月へつながります。

月単位で区切り、6月を締めてから7月を確定する方が、差異の原因を追いやすくなります。

5.1カ月ずつ月次決算を完了させる

入力が終わったら、そのまま次の月へ進むのではなく、1カ月ごとに月次決算を完了させます。

例えば、次の状態まで確認します。

  • 必要な仕訳が入力されている
  • 預金残高が一致している
  • 売掛金・買掛金などの残高を確認している
  • 未処理事項が整理されている
  • 必要な修正を反映している
  • 月次資料を作成できる状態になっている

6月が完了したら7月へ、7月が完了したら8月へ進みます。

売掛金を確認した際に、請求額と入金額の消込が合わず差額が残っている場合は、そのまま次の月へ進まず、どの取引で差額が生じているのかを確認します。

合わせて読みたい:売掛金の入金消込が合わない7つの原因|差額を解消する6つの確認手順

買掛金・未払金についても、支払いが終わっているのに残高が残っている場合や、請求書と帳簿上の金額が一致しない場合は、そのまま月次決算を確定せず、請求・支払・帳簿を照合して原因を特定します。

合わせて読みたい:買掛金・未払金の残高が合わない7つの原因|請求・支払・帳簿を照合する6つの手順

「入力件数を減らす」のではなく、確定した月を一つずつ増やすことが重要です。

6.通常月へ追いついたら締め日と担当者を固定する

過去月の月次決算に追いついても、以前と同じ運用へ戻せば再び遅れる可能性があります。

追いついたタイミングで、毎月の締め方を決めます。

例えば、次のような項目を整理します。

項目決めておきたい内容
証憑・請求書提出期限
経費精算締切日
不明取引確認担当者・回答期限
記帳完了予定日
残高確認担当者
月次決算完了予定日
月次資料確認者・報告日

不明取引についても、確認担当者や回答期限を決めるだけでなく、そもそも発生しにくい情報共有ルールを整えておくことが重要です。同じ確認を毎月繰り返さない仕組みをつくることで、翌月以降の月次決算も止まりにくくなります。

合わせて読みたい:経理の不明取引が起きる原因とは?発生を防ぐ5つの事前ルール

月次決算を追いつかせることがゴールではありません。

追いついた後も遅れない状態をつくることまでが、月次決算の立て直しです。

通常月へ戻った後は、請求書発行や支払、記帳、残高確認、月次決算など、毎月発生する業務について、担当者・期限・現在のステータスを継続して確認できる状態にしておくと、再び遅れが発生するのを防ぎやすくなります。

合わせて読みたい:経理業務の進捗管理とは?遅れを防ぐ7つの管理項目と運用方法


資料がそろっていない月はどうする?

過去月の月次決算を進めていると、請求書や領収書など、一部の資料が見つからないことがあります。

この場合、資料がそろうまで月全体の作業を止める必要はありません。

まず処理できるものを進め、不足している資料や確認事項だけを分けて管理します。

例えば、

「6月○○社請求書待ち」

「6月クレジットカード利用1件確認待ち」

「6月経費精算3件未提出」

というように、月と内容を明確にします。

ただし、確認事項を残したまま月次決算を完了扱いにするかどうかは、その内容や金額への影響を確認して判断する必要があります。

金額的重要性や自社の月次締めルールによっては、確認待ちとして管理したり、必要に応じて暫定的な処理を行ったうえで翌月に確認する方法もあります。

重要な取引や残高へ大きく影響する事項については、確認が終わってから月次決算を確定します。


過去月と当月の業務はどう進める?

月次決算が数カ月遅れている場合、過去月だけに集中すると、今月分まで新たにたまってしまうことがあります。

そのため、過去月の立て直しと当月業務を分けて管理します。

例えば、

  • 午前は当月の請求・支払・入出金確認
  • 午後は過去月の月次決算
  • 担当者を過去月と当月で分ける

など、現在の業務を止めない方法を決めます。

大切なのは、過去月を処理している間に、新しい遅れを増やさないことです。

過去月の遅れを1カ月解消しても、その間に当月が1カ月遅れれば、全体の遅れは縮まりません。

「過去月を進める時間」と「現在の経理を止めない時間」の両方を確保する必要があります。


月次決算の遅れを取り戻すときに避けたい3つの進め方

当月から先に月次決算を確定する

現在の月の数字を早く見たいからといって、古い月を飛ばして当月の月次決算を確定しようとすると、前月残高が確定しておらず、確認作業が複雑になることがあります。

翌月以降の入力を並行して進めることはできますが、月次決算として数字を確定する場合は、原則として古い月から順番に進めます。

すべての資料がそろうまで作業を止める

一つの資料が不足しているだけで、その月のすべての処理を止める必要はありません。

処理できるものと確認待ちを分け、進められる作業から進めます。

入力件数だけで進捗を管理する

「今日は100件入力した」という件数だけでは、月次決算がどこまで進んでいるのか分かりません。

何月の記帳が終わり、何月の残高確認が終わり、何月まで月次決算が完了しているのかを管理します。


社内だけで月次決算の遅れを取り戻すのが難しい場合

過去月の処理と当月業務を同時に進める時間を確保できない場合は、外部支援を利用する方法もあります。

例えば、過去月の記帳や資料整理、残高確認などを外部へ依頼し、社内担当者は取引内容の確認や承認、当月業務を進めるという役割分担が考えられます。

ただし、経理代行へ依頼しても、会社側でしか判断できない取引内容の確認や承認まで、すべて外部へ任せられるわけではありません。

どの業務を任せられるのかを確認し、社内と外部の担当範囲を決めることが重要です。

経理代行へ依頼できる一般的な業務内容については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説


公認会計士の視点|「何月まで締まったか」で進捗を管理する

月次決算が遅れている会社では、「入力はかなり進んでいる」という状態でも、実際には数字が確定していないことがあります。

経営管理で重要なのは、仕訳を何件入力したかではありません。

何月まで月次決算が完了し、経営者がその数字を確認できる状態になっているかです。

例えば、次のように管理します。

記帳残高確認未処理月次決算
5月完了完了解消済み完了
6月完了作業中2件未完了
7月作業中未着手未完了
8月当月処理中未着手未完了

このように管理すれば、現在どこで止まっているのかを担当者以外でも把握しやすくなります。

「作業量」ではなく「完了した月」を増やしていくことが、遅れている月次決算を通常運用へ戻す基本です。


よくある質問

Q1. 月次決算が3カ月以上遅れていても追いつけますか?

遅れている期間だけでなく、取引件数、資料の状態、未処理事項の数、社内で確認できる人がいるかによって異なります。

まず最後に月次決算が完了している月を確認し、古い月から順番に進めます。

Q2. 過去月と今月のどちらを優先すべきですか?

月次決算の確定は、原則として古い月から進めます。

ただし、現在発生している請求や支払などを止めると新しい遅れが生じるため、当月業務も並行して進める必要があります。

Q3. 記帳が終われば月次決算も完了ですか?

必ずしもそうではありません。

記帳後に預金や売掛金・買掛金などの残高確認、未処理事項の解消、必要な修正などが残っている場合があります。

Q4. 一部の資料が見つからない場合は次の月へ進んでもよいですか?

不足資料を明確にし、それ以外の処理を進めることはできます。

ただし、月次決算を確定できるかどうかは、不足している資料が数字へ与える影響や、自社の月次締めルールを確認して判断します。

Q5. 月次決算の遅れは経理代行へ相談できますか?

依頼できる範囲は委託先によって異なりますが、記帳、資料整理、残高確認、月次資料の作成などを依頼できる場合があります。

社内で行う確認や承認と、外部へ依頼する業務を整理して相談すると進めやすくなります。


まとめ

月次決算の遅れを取り戻すためには、目の前の入力作業を急ぐだけではなく、どの月まで完了しているのかを確認し、過去月から順番に締めていくことが重要です。

進め方は次の6つです。

  1. 最後に完了した月を確定する
  2. 遅れている月を一覧にする
  3. 処理できるものと確認待ちを分ける
  4. 最も古い月から順番に処理する
  5. 1カ月ずつ月次決算を完了させる
  6. 通常月へ追いついたら締め日と担当者を固定する

翌月以降の入力を並行して進めながら、月次決算としては古い月から一つずつ確定していきます。

また、過去月を処理している間も当月の経理は発生します。

過去の遅れを解消すると同時に、新しい遅れを増やさない運用へ切り替えることが大切です。

経理代行を利用する場合の費用は、遅れている期間、取引件数、資料の状態、確認事項の数、依頼する業務範囲などによって変わります。

一般的な料金相場や費用の内訳については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

「月次決算が何カ月も遅れている」

「過去月の処理と今月の業務を同時に進められない」

「どの月まで数字が確定しているのか分からない」

このような場合は、まず現在の月次決算の進捗と未処理事項を整理するところからご相談いただけます。

まるまる経理では、現在の経理状況を整理したうえで、過去月の処理と通常運用への移行をサポートします。

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