「月末になると請求書や経費精算の確認に追われ、月次決算が毎月遅れてしまう」と悩んでいないでしょうか。
月末の時点で未処理事項を把握できていれば、翌月になってから資料を探したり、各部署へ何度も確認したりする時間を減らせます。
反対に、月末まで何も確認せず、翌月に入ってから1カ月分をまとめて整理すると、請求漏れや証憑不足に気付くのが遅れ、月次決算全体が後ろ倒しになりやすくなります。
この記事では、経理担当者が月末までに確認したい10項目と、抜け漏れを防ぐためのスケジュールを解説します。
月末業務を含め、経理体制全体を見直すことで期待できる効果については、以下の記事で解説しています。
合わせて読みたい:経理体制を見直すと会社はどう変わる?利益・資金繰り・生産性を改善する方法
経理の月末業務とは
経理の月末業務とは、当月に発生した取引を正しく締めるために、売上、仕入、経費、入出金などの処理状況を確認する作業です。
会社によって業務内容は異なりますが、主な目的は次の3つです。
- 当月分として処理すべき取引の漏れを把握する
- 未提出・未承認・未確定の項目を整理する
- 翌月の月次決算で対応する内容を明確にする
月末時点では、すべての請求書や銀行明細がそろっていない場合もあります。
そのため、月末業務では「すべてを確定させること」よりも、未確定の項目について、金額、担当者、確認期限を明確にすることが重要です。
例えば、仕入先から請求書が届いていない場合は、請求書が届くまで待つだけではなく、
- どの取引の請求書が未着なのか
- おおよその金額はいくらか
- 誰が確認するのか
- いつまでに確認するのか
を一覧にして翌月へ引き継ぎます。
月末業務と月初業務の違い
月末業務と月初業務は連続していますが、目的は少し異なります。
| 時期 | 主な目的 | 主な業務 |
|---|---|---|
| 月末 | 当月の未処理事項を把握し、締め準備を行う | 請求漏れ、経費未申請、証憑不足、残高の確認 |
| 月初 | 月末時点で未確定だった情報を反映し、月次資料を完成させる | 入金消込、仕訳入力、残高確定、修正、試算表作成 |
月末までに請求書や経費申請の状況を確認しておけば、月初は確定した情報を会計ソフトへ反映する作業に集中できます。
一方、月末の確認が不十分な場合は、月初になってから未提出者を探したり、取引内容を調べたりする必要があり、月次決算が遅れます。
月初に行う業務の流れや、月次決算を早めるための進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:経理の月初業務を効率化!月次決算を早める方法
経理の月末業務チェックリスト10項目
ここからは、一般的な中小企業で月末までに確認しておきたい項目を紹介します。
すべての処理を月末当日に行う必要はありません。各項目の期限を決め、月中から順番に確認すると進めやすくなります。
1.売上・請求漏れがないか
当月中に商品を納品した、またはサービスを提供したにもかかわらず、請求書が発行されていない取引がないか確認します。
特に注意したいのは、次のような取引です。
- 月末近くに納品した取引
- 営業担当者が個別に受注した取引
- 検収後に請求する取引
- 継続契約で毎月請求する取引
- 請求金額が後から確定する取引
受注一覧、納品記録、契約書、請求書発行システムなどを照合し、納品済み・請求未済の取引を洗い出します。
月末時点で金額を確定できない場合も、対象となる取引と確定予定日を記録しておくと、翌月の請求漏れを防ぎやすくなります。
2.仕入・未払費用の計上漏れがないか
商品やサービスの提供を受けていても、請求書がまだ届いていないことがあります。
例えば、
- 月額のシステム利用料
- 外注費
- 広告費
- 水道光熱費
- 運送費
- 専門家への報酬
などは、利用した月と請求書が届く月がずれることがあります。
請求書が届いていないからといって確認対象から外すと、当月の費用が少なく表示され、月ごとの利益を正しく比較できません。
月末までに未着請求書の一覧を作り、取引先、内容、概算金額、請求書の到着予定日を整理します。
実際に未払費用として計上する範囲や基準は、会社の会計方針や税理士との取り決めに合わせます。
3.経費精算の未提出・未承認がないか
従業員の経費申請が翌月へ持ち越されると、当月の費用が正しく反映されません。
月末には、次の状態を確認します。
- 申請されていない領収書がないか
- 申請済みだが上長の承認待ちになっていないか
- 内容不備で差し戻されていないか
- 法人カードの利用明細に用途不明の取引がないか
- 交通費や出張費の精算が残っていないか
経費申請の期限を月末当日にすると、差し戻しや再申請が翌月になりやすくなります。
例えば「毎月25日までに申請、27日までに承認」のように、月末より前に締切を設けると、経理担当者が内容を確認する時間を確保できます。
4.預金・現金の残高に大きなずれがないか
月末時点で確認できる銀行明細をもとに、会計ソフト上の預金残高と大きなずれがないか確認します。
ずれがある場合は、次のような原因が考えられます。
- 入出金の登録漏れ
- 振込手数料の入力漏れ
- 口座間振替の片側だけが登録されている
- 同じ明細が二重に登録されている
- 日付や金額が誤っている
小口現金を使用している会社では、実際の現金残高と現金出納帳も照合します。
月末の最終営業日より後に反映される取引もあるため、この段階ですべてを確定できない場合があります。それでも、原因不明の差額があるかどうかを早めに把握しておくことは重要です。
また、翌月の給与、仕入、税金などの支払予定と預金残高を比較し、資金が不足しないかも確認します。
資金繰りが悪化しやすい会社の特徴と、早めに確認したい項目については、以下の記事で解説しています。
合わせて読みたい:キャッシュフローが悪化する会社の特徴とは?原因と改善策を解説
5.売掛金・買掛金の残高が合っているか
売掛金については、請求済みの金額と入金状況を確認します。
次のような項目がないかを確認します。
- 入金済みなのに売掛金が残っている
- 請求したのに売掛金が計上されていない
- 入金額と請求額が一致していない
- 支払期限を過ぎた売掛金がある
- 振込手数料が差し引かれている
買掛金や未払金についても、請求書と支払予定を照合します。
支払済みなのに残高が残っている場合は、消込漏れや別の科目で処理している可能性があります。
残高が合わないときは、差額だけを調整するのではなく、どの取引から発生したずれなのかを確認します。
6.仮払金・立替金が残っていないか
出張費や備品購入などのために事前に渡した仮払金が、精算されないまま残っていないか確認します。
立替金についても、誰の立替分なのか、返金や精算が完了しているかを確認します。
特に注意したいのは、数カ月にわたって同じ金額が残っている項目です。
長期間残っている場合は、
- 精算書が未提出
- 領収書が不足している
- 返金処理が漏れている
- 本来は別の科目へ振り替える必要がある
といった可能性があります。
月末ごとに残高の内容と担当者を確認し、精算期限を決めます。
7.給与・社会保険料を当月分として把握できているか
給与の締め日と支払日が異なる場合、当月に対応する給与や社会保険料を整理する必要があります。
月末時点では、次の項目を確認します。
- 勤怠データが提出されているか
- 残業や欠勤の承認が済んでいるか
- 入退社や給与変更が反映されているか
- 給与計算結果が確定する日はいつか
- 社会保険料や労働保険料をどのように処理するか
給与計算を総務や外部の社会保険労務士が担当している場合は、経理担当者へ計算結果を共有する期限も決めておきます。
給与額を月末までに確定できない場合は、翌月のどの時点でデータを受け取り、会計処理へ反映するのかを整理します。
給与や社会保険料を当月分としてどの範囲まで未払計上するかは、会社の会計方針や税理士との取り決めに沿って処理します。
8.在庫の数量と集計方法を確認する
商品や材料を保有する会社では、月末時点の在庫を確認します。
在庫金額が正しくなければ、売上原価や利益も正しく計算できません。
確認したい項目は次のとおりです。
- 棚卸を行う日時
- 棚卸の担当者
- 入出庫をどの時点で締めるか
- 不良品や返品商品をどう扱うか
- 倉庫や店舗から集計結果をいつ受け取るか
- 帳簿上の数量と実在庫に差がないか
月末当日に入出庫がある会社では、棚卸前後の取引が混ざらないように締め時刻を決めます。
毎月実地棚卸を行わない場合も、在庫システム上の数量や大きな増減を確認し、異常があれば原因を調べます。
9.不足している請求書・領収書がないか
会計ソフトに取引が登録されていても、請求書や領収書が保存されていない場合があります。
月末には、不足している証憑を一覧にします。
一覧には、次の情報を記載すると管理しやすくなります。
- 取引日
- 取引先
- 金額
- 支払方法
- 証憑を保有している可能性がある人
- 提出期限
- 現在の確認状況
「後で提出してもらう」と口頭で伝えるだけでは、翌月も未提出のまま残ることがあります。
誰が、いつまでに、どの方法で提出するかを明確にします。
10.翌月へ引き継ぐ未処理事項を整理する
月末までにすべての項目を確定できない場合は、未処理事項を一覧にして翌月へ引き継ぎます。
最低限、次の内容を記録します。
- 未処理となっている取引
- 未処理の理由
- 金額または概算金額
- 確認する担当者
- 回答・資料提出の期限
- 月次決算へ与える影響
- 現在の処理状況
例えば「請求書未着」とだけ記載するのではなく、「A社の6月分外注費・約20万円・7月2日到着予定」のように具体的に残します。
未処理事項が明確であれば、月初に一から状況を調べる必要がありません。
月末業務チェックリストの完了基準
チェックリストは、「確認したかどうか」だけでなく、どの状態になれば完了なのかを決めることが大切です。
| 確認項目 | 月末時点の完了基準 |
|---|---|
| 売上・請求 | 納品済み・請求未済の取引が一覧になっている |
| 仕入・未払費用 | 未着請求書と概算金額が把握できている |
| 経費精算 | 未提出・承認待ち・差し戻しが確認できている |
| 預金・現金 | 原因不明の大きな差額がない |
| 売掛金・買掛金 | 未入金・未払い・消込漏れが一覧になっている |
| 仮払金・立替金 | 残高の内容と精算担当者が分かっている |
| 給与・社会保険 | データの確定日と受取日が決まっている |
| 在庫 | 棚卸方法、締め時刻、集計期限が決まっている |
| 証憑 | 不足資料と提出担当者が明確になっている |
| 翌月への引き継ぎ | 未処理事項に担当者と期限が設定されている |
月末時点で金額が確定していなくても、次に誰が何を行うのかが分かる状態であれば、月初業務を進めやすくなります。
月末業務のスケジュール例
月末当日だけで10項目を確認するのは現実的ではありません。
月末の5〜10営業日前から、次のように分けて進めます。
| 時期 | 主な業務 |
|---|---|
| 月末10〜7営業日前 | 請求予定、経費申請、棚卸日程を各部署へ案内する |
| 月末6〜4営業日前 | 売上・仕入の未処理、経費の申請状況を確認する |
| 月末3〜2営業日前 | 支払予定、仮払金、証憑不足、在庫準備を確認する |
| 月末最終営業日 | 預金・現金、売掛金・買掛金の状況を確認する |
| 翌月1〜3営業日 | 未確定情報を反映し、月次締めを進める |
締切日は一律に決めるのではなく、資料を提出する部署の業務や、取引先から請求書が届く時期も踏まえて調整します。
重要なのは、毎月同じ日程で案内し、提出や確認の期限を社内へ定着させることです。
月末業務を効率化する方法
月末の負担を減らすには、月末になってから作業を始めるのではなく、日次・週次で処理を分散します。
例えば、
- 銀行やカードの明細を週に一度確認する
- 経費申請を月1回ではなく随時行う
- 請求書を受領した時点で保存する
- 売掛金の入金状況を週ごとに確認する
- 不明な取引を月末まで放置しない
といった運用です。
チェックリストには、確認項目だけでなく、担当者、期限、進捗状況を記載します。
「確認中」「資料待ち」「完了」などの状態を共有できるようにすると、どこで作業が止まっているのかが分かります。
また、銀行口座やクレジットカードを会計ソフトと連携したり、請求書や経費申請をクラウド上で管理したりすることで、資料回収や転記の負担を減らせる場合があります。
経理業務を整理し、クラウド会計や経費精算システムを段階的に導入する方法については、以下の記事で解説しています。
合わせて読みたい:中小企業の経理DX|導入のための実践7ステップ
月末業務が毎月終わらない場合に見直すこと
毎月同じ項目が月末までに終わらない場合は、担当者の努力だけで解決しようとせず、業務の流れを見直します。
例えば、経費精算が毎月遅れる場合、経理担当者の確認速度ではなく、
- 申請期限が遅すぎる
- 承認者が決まっていない
- 申請方法が複雑
- 領収書の提出先が分散している
ことが原因かもしれません。
請求書の発行が遅れる場合も、経理だけではなく、営業担当者から契約内容や検収結果が共有されていない可能性があります。
毎月遅れる業務については、次の順番で原因を整理します。
- どの工程で止まっているか
- 誰からの情報を待っているか
- 締切と担当者が決まっているか
- 同じ確認を毎月繰り返していないか
- システムや外部サービスで代替できないか
月次決算の遅れや担当者への業務集中など、経理体制を見直した方がよい状態については、以下の記事で解説しています。
合わせて読みたい:経理体制を見直すべきサインとは?中小企業によくある5つの課題
月末業務を社内だけで回せない場合
月末業務の件数が増え、社内だけでは確認や入力が間に合わない場合は、一部の経理業務を外部へ依頼する方法があります。
例えば、
- 請求書や領収書の整理
- 会計ソフトへの仕訳入力
- 売掛金・買掛金の管理
- 預金残高の照合
- 不足資料の一覧作成
- 月次資料の作成
などは、経理代行へ依頼できる場合があります。
ただし、売上の確定、取引内容の説明、経費の承認、在庫数量の確認など、会社側でなければ判断できない業務も残ります。
外注を検討するときは、月末業務をすべて任せようとするのではなく、現在どの工程に時間がかかっているのかを整理し、依頼範囲を決めることが大切です。
経理代行へ依頼できる業務や、導入までの流れについては、以下の記事で解説しています。
合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説
公認会計士の視点|未確定項目を見える状態にする
月末時点ですべての金額を確定することが難しい場合もあります。重要なのは、何が未確定で、誰がいつまでに確認するのかを把握できていることです。
対象取引、概算金額、確定予定日、担当者、月次資料への影響を一覧にしておけば、翌月の確認をすぐに始められます。
月末業務は、すべての作業を無理に終わらせることではなく、月次決算を予定どおり進められる状態をつくる作業です。このように考えると、優先順位を付けやすくなります。
よくある質問
Q1. 月末業務はいつから始めればよいですか?
請求書や経費申請の件数にもよりますが、月末の5〜10営業日前から準備を始めると進めやすくなります。
最初に各部署へ提出期限を案内し、月末に近づくにつれて未提出や未承認の項目を確認します。
月末当日にすべてを処理するのではなく、月中から入力や確認を進め、月末には未処理事項の整理だけが残る状態を目指します。
Q2. 月末までに請求書が届かない場合はどうすればよいですか?
請求書が届くまで放置せず、取引先、内容、概算金額、到着予定日を一覧にします。
未払費用として計上するかどうかは、会社の会計方針や金額の重要性によって異なります。
処理基準を税理士や会計担当者と決め、毎月同じ方法で対応できるようにします。
Q3. 一人経理でもチェックリストは必要ですか?
一人経理の場合も、チェックリストは有効です。
担当者自身が作業状況を確認しやすくなるだけでなく、休職や退職、繁忙時の引き継ぎにも役立ちます。
複雑な管理表を作る必要はありません。確認項目、期限、進捗、未処理理由が分かる簡単な一覧から始めます。
Q4. 月末業務と月次決算は同じですか?
同じではありません。
月末業務は、当月の請求漏れや未提出経費、残高のずれなどを確認し、月次決算の準備をする作業です。
月次決算では、月末業務で把握した未処理事項を反映し、残高を確定して試算表などの月次資料を作成します。
会社によっては両方をまとめて月次締めと呼ぶ場合もありますが、業務を分けて考えると担当者や期限を決めやすくなります。
まとめ
経理の月末業務では、月次決算前に次の10項目を確認します。
- 売上・請求漏れ
- 仕入・未払費用
- 経費精算
- 預金・現金残高
- 売掛金・買掛金
- 仮払金・立替金
- 給与・社会保険料
- 在庫
- 証憑不足
- 翌月へ引き継ぐ未処理事項
すべての金額を月末までに確定できなくても、未処理となっている内容、担当者、期限が分かっていれば、翌月の締め作業をスムーズに始められます。
チェックリストは月末だけに使うのではなく、日次・週次の処理にも組み込み、月末に作業が集中しない運用を整えることが大切です。
月末業務の一部を経理代行へ依頼する場合は、取引件数や依頼範囲によって費用が変わります。経理代行の料金相場や費用の内訳について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説
経理代行サブスクサービス「まるまる経理」では、現在の経理業務を整理し、請求書管理、記帳、残高確認、月次資料の作成など、会社の状況に応じた経理体制づくりを支援しています。
月末に作業が集中している、毎月の月次決算が遅れているといった場合は、現在の業務の流れを整理するところからご相談ください。
