経理代行は、「経理業務を外部へ任せるサービス」というイメージを持たれがちですが、実際には経理体制そのものを改善する目的で導入されるケースが多くあります。
例えば、経理担当者の退職への対応、人手不足の解消、属人化の改善、月次決算の早期化など、企業が抱える課題はさまざまです。
また、導入効果が出ている企業の多くは、単に業務を委託するだけではなく、業務フローの整理やクラウド会計の活用もあわせて進めています。
この記事では、中小企業でよくある課題ごとに、経理代行を活用することでどのような体制改善につながるのかを5つのケースに分けて紹介します。
実際に経理代行を導入した3社の支援事例に加え、中小企業で起こりやすい課題をもとに整理した2つのモデルケースも紹介します。実際の支援事例には「実例」、モデルケースには「モデルケース」と明記しています。
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事例① 経理担当者の退職をきっかけに導入したケース
モデルケース
※以下は、中小企業で起こりやすい状況をもとに整理した例です。
経理代行の導入理由として多いのが、経理担当者の退職です。
特に中小企業では、一人の担当者が請求書管理や会計入力、支払業務、売掛金管理まで幅広く担当していることも珍しくありません。
そのため、担当者が退職すると、経理業務そのものが止まってしまうリスクがあります。
Before
ある企業では、10年以上勤務していた経理担当者の退職が決まりました。
請求書の受領から会計ソフトへの入力、売掛金管理、支払データの作成まで、一人で担当していたため、後任が決まるまで業務を継続できるか不安を抱えていました。
導入した内容
経理代行を活用し、
- 請求書管理
- 会計ソフトへの仕訳入力
- 売掛金管理
- 支払データの作成
を外部へ委託しました。
また、担当者しか分からなかった業務手順を整理し、業務フローを文書化しました。
After
担当者の退職後も経理業務を止めることなく継続できただけでなく、業務内容が見える化されたことで属人化の解消にもつながりました。
「人が辞めても経理が回る体制」を整えられたことが、この企業にとって最も大きな成果となりました。
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事例② 人手不足を補うために導入したケース
中小企業では、総務担当者や営業事務担当者が経理を兼任しているケースも少なくありません。
日々の業務に加え、月末・月初は請求書発行や経費精算、会計入力などが集中するため、残業が増えたり、本来の業務へ十分な時間を確保できなくなったりすることがあります。
このような場合、請求書発行、売掛金管理、経費精算のチェック、会計ソフトへの入力など、定型的な経理業務を外部へ切り出し、社内では確認・承認を中心に行う体制へ見直す方法があります。
経理業務の一部を外部化することで、総務や営業事務などの兼任担当者が本来の業務へ時間を使いやすくなり、新たな経理担当者を採用せずにバックオフィス体制を整えられるケースもあります。
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実例|請求・入金管理を月10時間から1時間以内へ
SNS運用代行事業を行う、従業員1名・売上規模約2,000万円の会社では、毎月約30社へ請求書を発行していました。
導入前は、請求書を1件ずつ作成・送付し、入金確認や売掛金の消込も手作業で行っていたため、請求・入金管理だけで毎月約10時間かかっていました。未入金先の把握や連絡が遅れることも課題でした。
そこで経理代行の導入に合わせて、マネーフォワード クラウド請求書を利用し、請求書の作成・送付、定額請求、入金確認、消込、売上記帳までの流れを整理しました。
毎月定額の顧客は請求書を自動作成し、請求情報を会計側へ連携することで、同じ内容を再入力する作業も削減しています。
その結果、社内で行う請求・入金管理は月約10時間から1時間以内へ短縮しました。現在、社内で主に必要なのは、新規顧客が増えた際に請求先や契約内容を経理代行側へ共有する作業です。
事例③ 属人化を解消したケース
モデルケース
※以下は、中小企業で起こりやすい状況をもとに整理した例です。
経理業務は、同じ担当者が長年担当することで属人化しやすい業務です。
担当者しか処理方法を知らない状態では、休暇や退職のたびに業務が滞るリスクがあります。
Before
ある企業では、
- 請求書の保管方法
- 経費精算のルール
- 会計処理の方法
が担当者ごとに異なっていました。
そのため、担当者が休むと他の社員では対応できず、経営者が確認しなければ業務が進まない状態になっていました。
導入した内容
経理代行の導入とあわせて、
- 証憑の保管ルールを統一
- 経費精算フローを整理
- 月次業務のスケジュールを標準化
- 会計処理ルールを文書化
しました。
After
担当者が不在でも業務を継続できるようになり、経営者や管理職の確認負担も軽減されました。
経理担当者個人へ依存する体制から、会社全体で経理業務を管理できる体制へ改善された事例です。
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事例④ 月次決算を早期化できたケース
経営者にとって、会社の数字を早く把握できることは重要です。
しかし、領収書や請求書の回収が遅れたり、会計入力が月末に集中したりすると、試算表の完成が翌月後半になることも珍しくありません。
その結果、売上や利益の状況を把握する頃には次の月の営業活動が始まっており、数字を経営判断へ十分に活かせないケースがあります。
月次決算が遅れる原因は、会計入力だけとは限りません。資料の回収方法や銀行口座との連携、不明点の確認など、月次決算までの各工程に時間がかかっているケースもあります。
そのため、月次決算を早期化するには、クラウド会計の活用、銀行口座との連携、請求書の提出ルール、日々の会計入力など、資料回収から月次締めまでの流れを見直すことが重要です。
会計入力を日常的に進め、資料提出日や確認期限を明確にすることで、月次数値をより早く確認し、資金繰りや利益管理に活用しやすい体制を整えられます。
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実例|月次決算を2〜3カ月から10日以内へ
IT企業(従業員約10名程度・売上規模約1億2000万円)では、金融機関からの借入などを進めるうえで、直近の業績を早く把握できる経理体制が求められていました。
しかし、導入前は月次決算が締まるまで2〜3カ月程度かかっていました。
社内には請求書管理などを担当する事務担当者が1名いるものの、専門的な経理担当者は不在。社長が領収書を手元に保管したままになることも多く、土日に数時間かけて領収書を探したり、内容を確認したりする状態でした。
そこで記帳だけを外注するのではなく、資料回収から月次決算までの業務フローを見直しました。
具体的には、
- 領収書を受け取った時点でスマートフォンから撮影
- Google Driveへ保存
- フォルダ構成と資料保存ルールを統一
- マネーフォワード クラウド経費を導入
- 専門家が記帳・会計判断を担当
- Slack等に質問や確認事項を集約
- 月次業務の担当者と実施時期をスケジュール化
といった運用へ変更しました。
その結果、導入2カ月目には月次決算を1カ月以内、3カ月目には10日以内で締められる体制になりました。
社長が休日に行っていた証憑回収の負担も大きく減り、直近の月次数値を早く確認できるようになったことで、金融機関へ業績を説明しやすくなり、その後の新規借入にもつながりました。
事例⑤ 経理コストを見直せたケース
経理代行は、人手不足への対応だけでなく、経理体制全体のコストを見直す目的で導入されることもあります。
経理担当者を採用する場合は、給与だけでなく、採用活動や教育、引き継ぎなどにも時間と費用がかかります。
一方で、必要な業務だけを経理代行へ依頼することで、業務量に応じた体制を構築できるケースがあります。
経理担当者の採用を検討していても、業務を整理すると、会計入力や請求書発行、支払管理などの定型業務が中心で、専任担当者を配置するほどの業務量ではないケースもあります。
このような場合は、会計入力や請求書発行、支払データの作成などを経理代行へ任せ、社内では請求内容や支払内容の確認・承認を行う役割分担も選択肢になります。
採用だけを前提にせず、業務量や必要な専門性に応じて外部サービスを活用することで、必要な経理機能を確保しながら、無理のない体制を整えることができます。
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実例|正社員を採用せず「社外の管理部」として経理機能を構築
役員3名で創業したスタートアップ企業では、創業当初から固定費を抑えるため、専門業務には外部のプロフェッショナルを活用する方針を採用しました。
経理についても専任の正社員を採用せず、経理代行を利用。日々の経理処理から月次決算までを外部化し、社内に経理担当者がいなくても経理業務が継続して回る体制を構築しています。
また、外部投資家からの資金調達を予定しているため、単に記帳を終わらせるだけではなく、経営判断や投資家への説明に利用しやすい会計数値を整えることも重視しています。
日常経理に加えて、公認会計士による数値確認を取り入れ、必要に応じて事業計画や資金調達などのテーマでも専門家の知見を活用することで、単なる作業の外注先ではなく、「社外の管理部」として経営陣を支える体制を目指しています。
成功している企業に共通する3つのポイント
ここまで紹介した事例には、いくつかの共通点があります。
1. 作業を任せるだけで終わらせていない
成果が出ている企業は、単純に経理業務を外部へ委託しただけではありません。
「どの業務を社内で行い、どの業務を外部へ任せるか」を整理し、役割分担を明確にしています。
2. 業務フローを見直している
経理代行の導入にあわせて、
- 資料提出のタイミング
- 承認フロー
- 証憑の管理方法
などを見直すことで、経理業務全体の効率化につなげています。
3. 将来を見据えた経理体制を整えている
人手不足への対応だけを目的にするのではなく、
- 属人化しない体制
- 継続して運用できる仕組み
- クラウド会計を活用した運用
まで見据えて取り組んでいる企業ほど、高い導入効果を実感しています。
まとめ
経理代行は、「経理業務を外部へ任せるサービス」というだけではありません。
今回紹介したように、
- 経理担当者の退職への対応
- 人手不足の解消
- 属人化の改善
- 月次決算の早期化
- 経理体制のコスト最適化
など、企業が抱えるさまざまな課題の解決につながっています。
一方で、成功している企業に共通しているのは、単に業務を委託するだけではなく、業務フローや運用ルールまで見直していることです。
自社と似た課題を抱える事例を参考にしながら、どのような経理体制を目指すべきかを考えることで、より高い導入効果が期待できるでしょう。
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