鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

社長が経理をしている会社が抱える5つのリスク|見直すべきタイミングとは

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創業したばかりの会社では、社長自身が経理を担当することがあります。

取引件数や従業員数が少ない段階では、請求書の発行、入出金の確認、経費精算などを社長が兼務した方が、状況を把握しやすい場合もあります。

しかし、会社が成長して経理業務が増えても、創業当初と同じ体制を続けていると、社長が本来取り組むべき営業活動や経営判断に十分な時間を使えなくなることがあります。

問題は、社長が経理に関わることではありません。

日常的な入力や事務作業まで社長に集中し、「社長が判断すべき仕事」と「他の担当者や外部へ任せられる仕事」の境界が曖昧になっていることが課題です。

この記事では、社長が経理を兼務し続けることで起こりやすい5つのリスクと、経理体制を見直すタイミングを解説します。

経理体制を見直すことで会社全体にどのような変化が生まれるのかは、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:経理体制を見直すと会社はどう変わる?利益・資金繰り・生産性を改善する方法

目次

社長が経理を続けることで起こる5つのリスク

創業当初は問題なく経理を処理できていても、会社が成長すると、請求書、入出金、経費、給与、支払いなどの件数が増えていきます。

その結果、社長が経理に使う時間も増え、経営や営業に影響が生じる場合があります。

リスク① 社長が本来取り組むべき仕事の時間が減る

社長には、会社の方向性を決めること、新しい取引先を開拓すること、人材を採用・育成することなど、経営者として取り組むべき仕事があります。

しかし、次のような日常業務に多くの時間を使っていると、経営に向き合う時間を確保しにくくなります。

  • 請求書の発行
  • 入金状況の確認
  • 領収書や経費申請の整理
  • 会計ソフトへの入力
  • 支払内容の確認や振込実行
  • 月次資料の作成

一つひとつの作業は短時間でも、毎日、毎週、毎月と繰り返すことで大きな負担になります。

特に、夜間や休日に経理を処理している場合は、すでに日中の業務時間だけでは対応しきれなくなっている可能性があります。

経理業務を社長が行うことによって、営業、採用、新規事業、既存顧客への対応などが後回しになっていないかを確認することが大切です。

リスク② 数字を処理することが優先され、経営判断が遅れる

社長が経理を兼務している会社では、数字を処理する人と、数字を経営に活用する人が同じになります。

そのため、会計ソフトへの入力や資料整理を終わらせることが優先され、利益や資金繰りを分析する時間まで確保できない場合があります。

例えば、次のような変化に気付くのが遅れる可能性があります。

  • 売上が減少している
  • 粗利益率が低下している
  • 固定費が増加している
  • 入金より支払いが先行している
  • 特定の取引先への依存度が高まっている

経理の目的は、処理を完了することだけではありません。

経営判断に必要な数字を、必要なタイミングで確認できる状態をつくることが重要です。

社長が入力や資料整理に追われている場合は、数字を分析し、行動を決める時間が不足していないかを確認しましょう。

資金繰りが悪化する原因と改善方法については、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:キャッシュフローが悪化する会社の特徴とは?原因と改善策を解説

リスク③ 経理業務が後回しになりやすい

社長は、営業、顧客対応、採用、資金調達、従業員への対応など、さまざまな業務を抱えています。

緊急性の高い業務が発生すると、経理は後回しになりやすくなります。

例えば、次のような状態です。

  • 請求書の発行が遅れる
  • 入金確認が後回しになる
  • 経費精算が月末に集中する
  • 支払内容の確認が直前になる
  • 会計ソフトへの入力がたまる
  • 月次の数字が確定しない

請求書の発行が遅れれば、入金時期も遅れる可能性があります。

また、処理がたまった状態では、過去の取引内容を思い出すための確認作業が増え、さらに時間がかかります。

社長が忙しい時期ほど経理が遅れる状態になっている場合は、担当者の努力ではなく、経理体制そのものを見直す必要があります。

経費精算に時間がかかっている場合の改善方法については、以下の記事も参考になります。

合わせて読みたい:経費精算アプリ導入で経理は何時間削減できるか

リスク④ 社長しか分からない業務が増える

社長が長期間にわたって経理を担当すると、業務手順や判断基準が社長の中だけに蓄積されることがあります。

例えば、次のような情報です。

  • 取引先ごとの請求方法
  • 支払日の決め方
  • 勘定科目の使い分け
  • 例外的な取引の処理方法
  • 会計ソフトや銀行サービスの管理方法
  • 税理士へ共有する資料
  • 月次資料を確認する手順

これらが文書化されていなければ、社長が不在になった際に経理業務が止まる可能性があります。

また、他の社員へ引き継ごうとしても、どの業務を、どの順番で、どのような基準で行っているのかを説明するところから始めなければなりません。

社長自身が経理を把握していることは重要ですが、社長しか業務を進められない状態は、会社全体のリスクになります。

担当者だけに業務が集中する状態の改善方法については、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法

リスク⑤ 会社の成長に経理体制が追いつかなくなる

会社が成長すると、経理業務の件数だけでなく、確認すべき内容も増えていきます。

例えば、次のような変化です。

  • 取引先が増える
  • 請求書や領収書が増える
  • 従業員や給与計算の対象者が増える
  • 銀行口座やクレジットカードが増える
  • 部門や拠点が増える
  • 管理すべき売掛金や買掛金が増える
  • 経営資料に必要な項目が増える

創業当初は1時間で終わっていた作業でも、取引量が増えれば半日以上かかる場合があります。

それでも「これまでは社長一人でできていた」という理由で体制を変えなければ、経理の遅れや確認漏れが発生しやすくなります。

会社の規模や取引内容が変われば、経理の進め方も見直す必要があります。

社長が日常的な経理作業を手放すことを検討したいタイミング

次のような状態が続いている場合は、社長が日常的な経理作業を担う体制を見直す時期に来ている可能性があります。

  • 夜間や休日に経理を処理している
  • 経理のために営業や顧客対応の時間が減っている
  • 社長の確認待ちで請求や支払いが遅れている
  • 社長が不在になると経理業務が止まる
  • 会計ソフトへの入力や資料整理がたまっている
  • 会社の成長に伴い、経理に使う時間が増え続けている
  • 数字を処理しているものの、分析する時間が取れていない

これらは、社長の能力や努力が不足しているという意味ではありません。

会社の成長によって、社長一人で対応できる業務量を超え始めているサインと考えられます。

経理体制全体を見直すべきサインについては、月次決算、資金繰り、紙での管理、属人化なども含めて、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:経理体制を見直すべきサインとは?中小企業によくある5つの課題

社長が日常的な経理作業を手放すために大切な考え方

経理体制を見直す場合でも、社長が経理にまったく関わらなくなる必要はありません。

重要なのは、社長が担当している業務を、次のように分けることです。

社長が判断する業務

  • 資金繰りの判断
  • 高額な支払いの承認
  • 投資や借入れの判断
  • 予算の決定
  • 業績や利益の確認
  • 重要な取引条件の決定

他の担当者や外部へ任せられる業務

  • 請求書の作成
  • 領収書や証憑の整理
  • 会計ソフトへの入力
  • 入金状況の確認
  • 支払予定表の作成
  • 経費申請の確認
  • 月次資料の作成準備

社長は、すべての作業を自分で行うのではなく、整理された数字を確認し、最終的な判断を行う立場へ移ることが重要です。

経理担当者を採用するか、外部へ委託するかを含めた経理体制の選び方については、以下の記事も参考になります。

合わせて読みたい:中小企業の経理体制の作り方|採用・外注・経理代行の選び方

公認会計士の視点|社長が手放すのは経理ではなく日常作業

社長が経理を担当している会社では、「経理を他の人へ任せると、会社の数字が分からなくなるのではないか」と不安を感じることがあります。

しかし、日常的な入力や資料整理を他の担当者へ任せることと、経営者が数字を把握しなくなることは同じではありません。

むしろ、日常作業を整理し、月次資料を決められた時期に確認できる体制をつくることで、社長は数字を経営に活用しやすくなります。

経理体制を見直す際に大切なのは、社長がすべての業務から離れることではありません。

社長が判断すべき業務は残し、入力、資料整理、確認準備など、他の人でも対応できる作業を切り分けることです。

社長が経理処理を行う人から、数字を確認して経営判断を行う人へ移ることで、会社の成長に必要な時間を確保しやすくなります。

よくある質問

Q1. 社長が経理を担当することに問題はありますか?

社長が経理を担当すること自体に問題があるわけではありません。

創業直後や取引件数が少ない時期は、社長が経理を兼務した方が会社の状況を把握しやすい場合もあります。

ただし、経理のために本業の時間が減っている場合や、社長しか業務を進められない状態になっている場合は、体制の見直しを検討しましょう。

Q2. 社員が何人くらいになったら見直すべきですか?

社員数だけで判断することはできません。

取引件数、請求書件数、支払件数、従業員数、給与計算の対象人数、社長が経理に使っている時間などをもとに判断します。

「経理のために本業へ支障が出ているか」を一つの基準にするとよいでしょう。

Q3. 社長は経理にまったく関わらなくてもよいのでしょうか?

経営判断に必要な数字を確認することや、重要な支払いを承認することは、社長の重要な役割です。

一方で、日常的な入力や資料整理まで社長が行う必要があるかは、会社の状況に応じて見直すことができます。

まとめ

創業当初は、社長が経理を兼務することがあります。

しかし、会社の成長とともに経理業務が増えると、社長が日常的な処理に追われ、営業活動や経営判断に十分な時間を確保できなくなる可能性があります。

社長が経理を続けることで起こりやすいリスクは、次の5つです。

  • 本来取り組むべき仕事の時間が減る
  • 数字の処理が優先され、経営判断が遅れる
  • 経理業務が後回しになる
  • 社長しか分からない業務が増える
  • 会社の成長に経理体制が追いつかなくなる

経理体制を見直すことは、社長が会社の数字から離れることではありません。

社長が判断すべき業務と、他の担当者や外部へ任せられる業務を整理し、社長が経営に集中できる体制をつくることが重要です。

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現在の業務内容を確認したうえで、社長が判断すべき業務と、外部へ任せられる業務を整理し、会社の成長に合わせた経理体制をご提案します。

経理代行を利用した場合の料金相場や費用の内訳については、以下の記事も参考にしてください。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

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