鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理代行で改善できること・できないこととは?導入前に知っておきたいポイント

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経理代行を導入すると、定型業務の負担や月次処理の遅れ、担当者ごとに異なる業務手順などを改善しやすくなります。

一方で、経営判断や社内承認、資料提出の遅れなど、経理代行を利用するだけでは解決できない課題もあります。

大切なのは、経理代行を「経理の悩みをすべて解決するサービス」と考えるのではなく、外部へ任せることで改善しやすい課題と、会社側で見直す必要がある課題を分けて考えることです。

この記事では、具体的な委託業務を列挙するのではなく、経理代行によって何が改善しやすくなり、どのような課題が会社側に残るのかを解説します。

経理代行を導入した結果、会社全体にどのような変化が生まれるのかを先に確認したい方は、以下の記事をご覧ください。

合わせて読みたい:経理代行で会社はどう変わる?導入効果を徹底解説

経理代行で改善しやすいことと、経理代行だけでは改善できないことを整理すると、次のようになります。

改善しやすいこと経理代行だけでは改善できないこと
定型業務の負担経営判断
業務手順のばらつき最終承認
月次処理の遅れ資料提出の遅れ
役割分担の曖昧さ複雑な社内ルールの変更
特定担当者への依存契約外・資格が必要な業務

経理代行は、毎月の作業負担や業務の進め方を改善する手段として活用できます。

一方で、会社としての意思決定や最終承認、社内ルールの変更まで外部へ任せることはできません。経理代行へ任せる範囲と、会社側に残る役割を分けて考えることが重要です。

目次

経理代行で改善できるのは、経理業務の課題と運用の仕組み

経理代行で改善しやすいのは、毎月繰り返される経理作業の負担や、業務の進め方に関する課題です。

代表的なものには、次のような課題があります。

  • 定型業務に時間を取られている
  • 担当者によって処理方法が異なる
  • 必要な資料が決められた場所に集まらない
  • 月次処理が毎月遅れている
  • 社内と外部の役割分担が曖昧になっている
  • 特定の担当者しか業務内容を把握していない

これらは、業務の手順や期限、担当範囲を整理し、外部と分担することで改善しやすい課題です。

一方で、経理代行が経営者に代わって意思決定を行ったり、社内の承認者に代わって最終承認したりすることはできません。

経理代行が担うのは、会社の意思決定そのものではなく、経理業務を安定して進めるための実務と仕組みづくりです。

経理代行で改善しやすいこと① 定型業務にかかる負担

毎月同じ手順で繰り返す経理業務は、経理代行によって負担を減らしやすい領域です。

一つひとつの作業にかかる時間が短くても、取引件数や従業員数が増えると、毎月の処理量は大きくなります。

特に中小企業では、経理担当者が日常業務に追われ、確認や業務改善まで手が回らなくなることがあります。また、社長自身が経理を兼務している場合は、営業や採用、資金繰りの検討に使う時間まで圧迫されかねません。

繰り返し発生する作業を外部へ分担すると、社内では次のような業務へ時間を使いやすくなります。

  • 処理内容の確認
  • 例外的な取引への対応
  • 部門間の調整
  • 数字をもとにした経営判断
  • 業務ルールの見直し

ただし、経理代行会社によって対応範囲は異なります。どの業務を任せられるかは、契約前に経理代行サービス全体の業務範囲を確認する必要があります。

経理代行で改善しやすいこと② 業務手順や資料管理のばらつき

経理業務が担当者任せになっている会社では、資料の保管場所や処理手順が統一されていないことがあります。

例えば、次のような状態です。

  • 部門ごとに請求書の提出方法が異なる
  • 紙、メール、チャットに資料が分散している
  • 会計処理のルールが口頭でしか共有されていない
  • 担当者によって締め日や確認方法が異なる
  • 過去の処理方法を確認できる資料がない

このような状態では、担当者が変わるたびに確認や引継ぎが必要になり、処理漏れや認識違いも起こりやすくなります。

経理代行を導入する際には、資料の提出方法や保存場所、処理期限、確認手順を整理する必要があります。その過程で、担当者ごとに異なっていた業務を標準化しやすくなります。

ただし、経理代行会社がルールを整理しても、社内でそのルールが共有されなければ改善は定着しません。

業務を外部へ任せるだけでなく、社内でも同じ手順を守れる状態をつくることが重要です。

経理代行で改善しやすいこと③ 月次処理の遅れ

月次処理が遅れる原因は、会計入力の作業量だけとは限りません。

実際には、次のような複数の原因が重なっていることがあります。

  • 必要な資料が期限までに集まらない
  • 誰が資料を提出するか決まっていない
  • 未確認の取引が毎月残っている
  • 承認待ちで処理が止まっている
  • 月次業務の締め日が決まっていない
  • 担当者が通常業務と月次処理を兼務している

経理代行を利用して日常的な処理を継続して進めると、月末に作業が集中する状態を改善しやすくなります。

また、資料提出日や確認期限を決めることで、「資料がそろってからまとめて処理する」という進め方から、「決められた日程で毎月処理する」という進め方へ変えやすくなります。

ただし、会社側から資料が提出されなければ、外部の担当者も処理を進められません。

月次処理を早めるためには、経理代行側の作業だけでなく、資料提出や承認を含めた社内運用もあわせて整える必要があります。

経理代行で改善しやすいこと④ 社内と外部の役割分担

経理業務では、「誰がどこまで対応するのか」が曖昧だと、確認漏れや二重対応が起こりやすくなります。

例えば、請求内容を確認する人、処理を進める人、最終承認する人が決まっていないと、担当者同士が相手の対応を待ち続けることがあります。

経理代行を導入する際に役割分担を整理すると、次の点が明確になります。

  • 会社側が準備する情報
  • 経理代行側が進める処理
  • 会社側が確認・承認する事項
  • 問題が発生したときの連絡先
  • 通常と異なる取引が発生した場合の対応方法

役割分担が明確になると、業務の停滞や認識違いを防ぎやすくなります。

経理代行を導入した企業で、課題がどのように変化したのかを確認したい方は、以下の記事も参考になります。

合わせて読みたい:経理代行の成功事例5選 課題別に解説

経理代行で改善しやすいこと⑤ 特定の担当者への依存

経理担当者が一人しかいない会社では、その人が休職・退職したときに業務が止まる可能性があります。

担当者しか知らない処理方法や確認ルールが多いほど、短期間での引継ぎは難しくなります。

経理代行を導入する過程で、業務の流れや判断基準を文書化すると、特定の担当者だけに依存しにくい体制をつくれます。

また、社内担当者と外部担当者が業務内容を共有することで、業務のブラックボックス化も防ぎやすくなります。

ただし、外部担当者へ業務を移すだけでは、依存先が社内から経理代行会社へ変わるだけになる可能性があります。

会社側でも、業務範囲や処理状況を把握できる状態を維持することが大切です。

経理代行だけでは改善できないこと① 経営判断と最終的な意思決定

経理代行では、経営者に代わって会社の重要な意思決定を行うことはできません。

例えば、次のような判断です。

  • 設備投資を行うか
  • 新たな人材を採用するか
  • 取引条件を変更するか
  • どの支払いを優先するか
  • 資金をどの事業へ配分するか

経理代行は、判断に必要な数字や資料を整えることはできますが、その情報をもとに何を決めるかは会社側の役割です。

経理代行の目的は、経営を外部へ任せることではありません。経営者が判断しやすい状態をつくることです。

経理代行だけでは改善できないこと② 資料提出や承認の遅れ

経理代行側が処理体制を整えていても、必要な情報が会社から届かなければ業務は進みません。

また、支払いなどに必要な社内承認が止まっていれば、外部担当者だけで完了させることはできません。

会社側には、主に次の対応が残ります。

  • 必要な資料や情報を期限までに共有する
  • 社内でしか判断できない内容を回答する
  • 支払いや重要な取引を確認・承認する

これらの対応が遅れると、経理代行を導入しても月次処理や支払いが遅れる可能性があります。

「依頼した後は何もしなくてよい」と考えるのではなく、会社側が行う対応も含めて運用を設計することが重要です。

経理代行だけでは改善できないこと③ 複雑な社内ルールや承認フロー

同じ処理に複数人の確認が必要だったり、部門ごとに異なる手順を使っていたりすると、経理代行を導入しても業務が複雑なまま残ることがあります。

経理代行会社は、現在のルールに沿って処理することはできます。しかし、会社側がルールの変更を決めなければ、不要な手順をなくすことはできません。

例えば、次のような見直しは社内で判断する必要があります。

  • 承認者を減らせるか
  • 部門ごとの提出方法を統一できるか
  • 締め日を変更できるか
  • 紙で行っている手続きを電子化できるか
  • 例外処理の判断基準を共通化できるか

外部へ任せる業務を決めるだけでなく、社内に残す業務の進め方も見直すことで、改善効果を得やすくなります。

経理代行だけでは改善できないこと④ 契約範囲外や専門資格が必要な業務

経理代行会社が対応できる業務は、契約内容やサービス体制によって異なります。

また、税務申告や税務相談など、法律上、特定の資格者でなければ対応できない業務もあります。

そのため、「経理に関係する業務ならすべて依頼できる」と考えず、契約前に次の点を確認する必要があります。

  • 依頼したい業務が契約範囲に含まれているか
  • 会社側に残る確認・承認事項は何か
  • 専門家との別契約が必要か
  • 業務量が増えた場合に契約を見直せるか

経理代行の仕組みや導入までの流れを確認したい方は、以下の記事をご覧ください。

合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説

改善効果を高めるために会社側で決めておきたいこと

経理代行の改善効果を高めるためには、契約前または運用開始時に次の点を決めておくことが重要です。

資料を提出する人と期限

どの資料を、誰が、いつまでに提出するのかを決めます。

期限だけを設定しても、担当者が決まっていなければ提出漏れが起こります。部門ごとに提出責任者を決めると、資料を集めやすくなります。

社内の承認者

支払い、経費精算、請求内容など、社内で承認が必要な事項について、最終的な承認者を明確にします。

承認者が不在の場合の代替手順も決めておくと、業務が止まりにくくなります。

通常と異なる取引の共有方法

新しい取引や通常と異なる処理が発生したときは、経理代行側へ共有する必要があります。

「いつもの処理と違う」と気付いた人が、誰へ連絡するかを決めておくことが大切です。

改善効果を確認する指標

導入後は、単に業務を任せられたかだけでなく、課題が改善したかを確認します。

例えば、次のような指標が考えられます。

  • 月次処理が完了するまでの日数
  • 社長や担当者が経理に使う時間
  • 未処理取引の件数
  • 資料の提出遅れ
  • 確認や差し戻しの回数

数字を使って改善効果を確認したい方は、以下の記事も参考になります。

合わせて読みたい:経理代行の投資対効果とは?導入後の改善効果を数字で検証

自社の課題が経理代行で改善できるか判断するポイント

経理代行を検討する際は、次の順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 現在、どの業務や工程で問題が起きているか
  2. 問題の原因は作業量、ルール、担当者、承認のどこにあるか
  3. 外部へ任せることで解消できる部分はどこか
  4. 会社側で見直さなければならない部分はどこか
  5. 導入後、どの状態になれば改善したと判断するか

例えば、月次処理が遅れている場合でも、原因が入力作業の不足であれば外部委託が有効です。

一方、資料提出や承認が遅れている場合は、経理代行を導入するだけでなく、社内ルールも変更する必要があります。

自社が経理代行を活用しやすい状態か確認したい方は、以下の記事をご覧ください。

合わせて読みたい:経理代行が向いている会社・向いていない会社とは?導入判断のポイントを解説

公認会計士の視点|外注する業務より、改善したい状態を先に決める

経理代行を検討する際、「どの業務を任せられるか」から考え始める会社は少なくありません。

しかし、実務上は、先に「現在どのような問題が起きているか」を整理した方が、適切な委託範囲を決めやすくなります。

例えば、同じ月次処理の遅れでも、原因が入力作業の不足なのか、資料提出の遅れなのか、承認フローの複雑さなのかによって必要な対策は異なります。

業務を外部へ移すだけでは、問題の発生場所が変わるだけになることもあります。

契約前には、現在の課題、原因、目指す状態を整理し、そのうえで経理代行へ任せる範囲を決めることが重要です。

導入前後に起こりやすい失敗や、契約時の注意点については、以下の記事で整理しています。

合わせて読みたい:経理代行で失敗しないための完全ガイド|導入前後に知っておきたい注意点

よくある質問

Q. 経理代行を利用すれば、月次処理は必ず早くなりますか?

必ず早くなるとは限りません。

入力作業や資料整理が原因で遅れている場合は改善しやすい一方、資料提出や社内承認が遅れている場合は、会社側の運用も見直す必要があります。

Q. 経理担当者がいなくても利用できますか?

利用できるサービスもあります。

ただし、会社側には資料の共有や取引内容の説明、最終承認などの役割が残ります。社内の窓口となる人は決めておく必要があります。

Q. 経理代行へ任せれば、社内ルールも自動的に整いますか?

自動的に整うわけではありません。

経理代行会社から運用方法の提案を受けられる場合はありますが、社内ルールを変更し、全社員へ周知するのは会社側の役割です。

Q. 導入効果はどのように確認すればよいですか?

月次処理の日数、経理にかかる作業時間、未処理件数、差し戻し回数など、導入前後で比較できる指標を決めて確認します。

まとめ

経理代行によって改善しやすいのは、定型業務の負担、業務手順や資料管理のばらつき、月次処理の遅れ、役割分担の曖昧さ、特定の担当者への依存などです。

一方で、経営判断や最終承認、資料提出、社内ルールの変更などは、会社側で対応する必要があります。

重要なのは、すべてを外部へ任せようとすることではありません。

外部へ任せることで改善できる課題と、社内で見直す課題を分け、双方の役割を明確にすることが、経理代行の効果を高めるポイントです。

現在の課題を整理したうえで経理代行の活用方法を検討したい方は、まるまる経理へお問い合わせください。

経理代行を検討する際は、改善できる課題だけでなく、依頼する業務範囲に応じて、どの程度の費用がかかるかを確認しておくことも大切です。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

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