鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経費の用途判断にAIを活用|経費精算で迷わないためのポイント

AIで経費精算の判断をスムーズにするポイントを解説する記事の表示画像

経費精算では、「この支出はどの勘定科目で処理すればよいのだろう」と迷った経験がある方も多いのではないでしょうか。

例えば、

  • 取引先との打ち合わせで利用した飲食代は「会議費」と「交際費」のどちらになるのか
  • パソコン用のマウスやキーボードは「消耗品費」で処理してよいのか
  • オンラインサービスの利用料はどの勘定科目が適切なのか

といった判断は、経理担当者であれば日常的に行っていますが、営業担当者や現場社員にとっては迷いやすい場面です。

ここで扱うのは、「何に使ったかは分かっているものの、どの勘定科目で処理するか迷うケース」です。

一方で、取引内容そのものが分からず、「この支出は何だったのか」を確認したいケースは、AIの活用方法が異なります。

用途判断に迷うたびに経理へ確認することになれば、問い合わせ対応が増え、経理担当者の負担も大きくなります。また、入力ミスや差し戻しが増えることで、月次決算が遅れる原因になることもあります。

近年は生成AIを活用することで、経費の用途や勘定科目の候補を提示し、経費精算時の判断をサポートできるようになってきました。

ただし、AIは会社ごとの経理ルールや税務判断を完全に理解しているわけではありません。あくまでも「用途判断を補助するツール」として活用し、最終的な確認は人が行うことが重要です。

この記事では、AIを活用して経費の用途判断で迷う場面を減らし、経費精算をよりスムーズに進めるためのポイントを解説します。

AIを経理業務全体でどのように効率化できるのか知りたい方は、こちらも参考にしてください。

合わせて読みたい:AIで経理はどこまで効率化できる?


目次

経費精算で用途判断に迷う理由

経費精算で迷いやすいのは、「何に使ったか分からない」ケースではありません。

むしろ多いのは、用途は分かっているものの、どの勘定科目で処理すればよいか判断に迷うケースです。

例えば、

  • 取引先との昼食代
  • 展示会へ参加するための交通費
  • 文房具やパソコン周辺機器の購入
  • クラウドサービスの利用料

などは、会社の経理ルールによって処理方法が異なることがあります。

例えば、取引先との飲食代でも、

  • 社内会議として「会議費」にする会社
  • 営業活動として「交際費」にする会社

では用途判断が変わります。

また、同じパソコン周辺機器でも、金額や社内ルールによっては「消耗品費」として処理する場合もあれば、「工具器具備品」として資産計上する場合もあります。

こうした判断基準を経理担当者だけが理解している状態では、営業担当者や現場社員は経費精算のたびに確認しなければなりません。

その結果、

  • 経理への問い合わせが増える
  • 修正や差し戻しが発生する
  • 月次決算が遅れる

といった課題につながります。


AIは用途判断をどこまで補助できるのか

生成AIは、領収書の内容や利用目的をもとに、勘定科目の候補と、その理由を提示することができます。

例えば、

「取引先との打ち合わせで利用した飲食店の領収書」

という情報を入力すると、

  • 会議費
  • 交際費

といった候補を提示し、それぞれの判断基準もあわせて示すことができます。

また、

「展示会へ参加するための新幹線代」

であれば、

  • 旅費交通費

が候補として提示され、その理由も確認できます。

さらに、AIは過去の経費精算データや入力された利用目的をもとに、「これまで同様の支出はどの勘定科目で処理してきたか」という傾向も踏まえて候補を提示できます。

毎回ゼロから用途判断を考える必要がなくなるため、担当者ごとの判断のばらつきを抑えやすくなります。

ただし、AIは会社独自のルールや税務上の判断まで保証するものではありません。

AIの回答をそのまま採用するのではなく、「用途判断の参考」として活用することが重要です。


経費精算システムと組み合わせると効果を発揮しやすい

AIは単体で利用するよりも、経費精算システムやクラウド会計と組み合わせることで、より効果を発揮します。

例えば、経費精算フォームへ利用目的を入力すると、

  1. AIが勘定科目の候補を表示する
  2. 判断理由もあわせて表示する
  3. 必要に応じて税区分の候補も提示する
  4. 担当者が候補を選択する
  5. 経理担当者が最終確認する

という流れを作ることができます。

このような運用にすることで、

「毎回経理へ確認する」

という状態から、

「用途判断は自分で行い、迷った案件だけ相談する」

という運用へ変えていくことができます。

クラウド会計と組み合わせた経理業務の改善については、こちらで解説しています。

合わせて読みたい:中小企業の経理DX|導入のための実践7ステップ

AIを活用すると経費精算はどう変わる?

経費の用途判断をAIが補助することで、経費精算の流れは次のように変わります。

AI活用前AI活用後
勘定科目が分からず毎回経理へ確認するAIが候補を提示し、自分で用途判断しやすくなる
担当者ごとに判断基準が異なる判断基準を統一しやすくなる
月末に修正や差し戻しが集中する日々の入力精度が向上し、修正を減らしやすい
経理担当者が一件ずつ質問へ回答する経理は例外的な案件の確認に集中できる

AIが効果を発揮するのは、「用途は分かっているが、どの勘定科目で処理するか迷う」という場面です。

一方で、「そもそも何の支出なのか分からない」という不明取引については、確認方法やAIの活用方法が異なります。

合わせて読みたい:経理の不明取引をAIで効率化|確認時間を減らす活用方法


AIを活用するときは情報の取り扱いにも注意する

AIは便利な一方で、経理データには機密情報が含まれるため、利用方法には注意が必要です。

例えば、

  • 領収書の画像をそのまま外部AIへ送信する
  • 氏名や口座番号が表示されたまま利用する
  • 取引先名や契約内容をそのまま入力する

といった運用は避けた方がよいでしょう。

社内でAIを利用する場合は、次のようなルールを決めておくことをおすすめします。

  • 個人情報や口座番号は入力しない
  • 社外秘情報は匿名化して利用する
  • 利用するAIサービスを社内で統一する
  • AIサービスの利用規約やデータの取り扱いを確認する

AIを安全に活用するためには、「どこまでの情報をAIへ入力してよいか」を事前に整理しておくことが大切です。


AIを活用する際も最終的な用途判断は経理担当者が行う

AIは過去のデータや入力内容をもとに候補を提示できますが、会社ごとの経理ルールや税務上の判断までは保証できません。

例えば、

  • 福利厚生費と給与課税の判断
  • 会議費と交際費の区分
  • 固定資産として計上するかどうか

などは、利用目的や金額、社内ルールによって用途判断が変わる場合があります。

そのため、AIを導入する場合も、

  1. 現場担当者がAIを参考に用途判断を行う
  2. AIが勘定科目の候補を提示する
  3. 経理担当者が最終確認する
  4. 判断に迷う案件のみ個別に確認する

という流れで運用することが現実的です。

AIは「経理担当者の代わりに判断する仕組み」ではなく、「用途判断を支援する仕組み」と考えることで、効率化と正確性の両立につながります。


公認会計士の視点

実際のご相談では、「営業担当者ごとに勘定科目の考え方が異なり、月末になると経理担当者がまとめて修正している」という企業をよく見かけます。

このような状態では、AIを導入しても期待した効果は十分に得られません。

AIは過去の処理傾向を参考に候補を提示できますが、会社として勘定科目のルールが整理されていなければ、担当者ごとに異なる用途判断が続いてしまうためです。

一方で、勘定科目のルールや承認フローを整理した企業では、AIが提示する候補の精度も高まり、経理担当者による確認や修正が減るケースも多く見られます。

AIを有効に活用するためには、システムを導入することだけでなく、「会社としてどのような基準で用途判断を行うか」を整理しておくことが重要です。


FAQ

Q1. AIは勘定科目を自動で決めてくれますか?

AIは入力内容をもとに勘定科目の候補を提示できますが、会社ごとのルールや税務上の判断までは保証できません。最終的な用途判断は経理担当者が行うことが重要です。


Q2. AIは会社ごとの経費ルールにも対応できますか?

AIは社内ルールや過去の処理傾向を参考に候補を提示できます。ただし、会社独自のルールを反映させるためには、勘定科目や承認フローをあらかじめ整理しておく必要があります。


Q3. AIを導入する前に準備しておくことはありますか?

勘定科目のルールや承認フローを統一しておくことが重要です。判断基準が曖昧なままでは、AIが候補を提示しても用途判断が担当者ごとにばらついてしまいます。


まとめ

経費の用途判断にAIを活用することで、勘定科目に迷う時間を減らし、経費精算をよりスムーズに進められるようになります。

特に、

  • 勘定科目の候補を提示できる
  • 判断理由を確認できる
  • 経理への問い合わせを減らせる
  • 差し戻しや修正を減らせる

といった点は、多くの企業で効果が期待できます。

一方で、AIが効果を発揮するのは、用途が分かっている取引の判断を補助する場面です。

取引内容そのものが分からない不明取引への対応とは役割が異なるため、それぞれの場面に応じてAIを使い分けることが重要です。

また、AIは会社ごとの経理ルールや税務判断を完全に理解しているわけではありません。

勘定科目や用途判断の基準、承認フローを整備したうえで、最終確認は経理担当者が行う運用にすることで、効率化と正確性を両立しやすくなります。

合わせて読みたい:経理にAIを導入するには?中小企業が最初に確認すべき基本事項


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