鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理代行は月次決算まで任せられる?業務範囲・締め日・社内対応を解説

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「経理代行へ記帳を依頼できることは分かるが、月次決算まで任せられるのだろうか。」

「試算表を作ってもらう場合、会社側にはどのような作業が残るのだろう。」

経理代行を検討する際、このような疑問を持つ経営者は少なくありません。

経理代行には、日々の仕訳入力だけでなく、預金や売掛金・買掛金の残高確認、月末の決算整理、月次試算表の作成まで依頼できる場合があります。

ただし、取引内容の説明、資料の提出、社内での判断や承認まで、すべてを外部へ任せられるわけではありません。

また、「月次決算に対応している」と案内されていても、試算表を出力するだけなのか、残高の不一致や未処理項目まで確認するのかによって、サービス内容は大きく異なります。

月次決算を外注するときに大切なのは、「丸ごと任せられるか」ではなく、どの工程を依頼し、どの工程を社内に残すかを具体的に決めることです。

この記事では、経理代行へ依頼できる月次決算業務、会社側に残る対応、月次資料が完成するまでのスケジュール、契約前に確認したい項目を解説します。

目次

経理代行に月次決算まで依頼できる

月次決算に対応している経理代行会社であれば、日々の記帳から月次試算表の作成まで依頼できます。

月次決算とは、1カ月ごとに売上や費用、資産、負債を整理し、会社の業績や財政状態を確認する作業です。

年に一度の決算を待たずに数字を確認できるため、

  • 売上は伸びているが利益は残っているか
  • 経費が増えている原因は何か
  • 資金繰りに問題はないか
  • 部門や店舗ごとの採算はどうか

といった経営上の変化に早く気付きやすくなります。

ただし、経理代行会社によって対応範囲は異なります。

仕訳入力と試算表の出力までを行うサービスもあれば、預金残高や売掛金・買掛金の確認、不明な取引の整理、月次推移表の作成まで対応するサービスもあります。

まずは、経理代行がどのようなサービスなのか、全体像を確認しておくと、月次決算を依頼する場合の役割も理解しやすくなります。

合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説

月次決算で経理代行へ依頼できる業務

月次決算には複数の工程があります。

そのため、「試算表を作成してもらえるか」だけではなく、試算表が完成するまでのどの作業が含まれるかを確認する必要があります。

取引データの取り込みと仕訳入力

銀行口座、クレジットカード、請求書、領収書などをもとに、会計ソフトへ取引を登録します。

クラウド会計と銀行口座やクレジットカードを連携している場合は、取得した明細を確認しながら仕訳を登録する方法が一般的です。

ただし、自動連携された明細も、そのまま確定できるとは限りません。

取引内容に応じて、

  • 勘定科目
  • 税区分
  • 部門
  • 取引先
  • 計上する時期

などを確認する必要があります。

摘要だけでは取引内容が分からない場合は、会社側への確認も発生します。

預金残高の照合

会計ソフト上の預金残高と、銀行口座の実際の残高が一致しているかを確認します。

残高が一致しない場合は、次のような原因が考えられます。

  • 仕訳の登録漏れ
  • 同じ取引の二重登録
  • 振替処理の誤り
  • 手数料の入力漏れ
  • 入出金日のずれ

試算表を出力できても、預金残高が合っていなければ、正確な月次資料とはいえません。

経理代行へ依頼する場合は、入力だけでなく、預金残高の照合まで含まれているかを確認します。

売掛金・買掛金などの残高確認

売掛金や買掛金についても、帳簿上の残高と実際の請求・入金・支払状況を確認します。

例えば、入金済みの請求書が売掛金として残っている場合は、入金消込が行われていない可能性があります。

反対に、請求書を発行しているにもかかわらず、売掛金が計上されていないケースもあります。

買掛金や未払金についても同様です。

請求書の計上漏れや支払処理の誤りがないか確認し、必要に応じて修正します。

また、支払処理を正しく反映するためには、支払予定表や振込データを作成する担当と、最終承認・振込実行を行う担当を分けておくことも重要です。

経理代行に任せられる支払業務の範囲については、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:経理代行の支払業務はどこまで任せられる?振込データ作成と承認の役割分担

月末の決算整理

会社の運用や契約範囲によっては、次のような月末処理も経理代行へ依頼できます。

  • 未払費用の計上
  • 前払費用の振替
  • 減価償却費の計上
  • 仮払金や立替金の整理
  • 給与や社会保険料の計上
  • 在庫金額の反映
  • 部門間取引の整理

ただし、どの金額を毎月計上するか、どの資料を基準にするかは、事前にルールを決めておく必要があります。

特に在庫や工事進行、部門別配賦などは、会社側で数字を集計しなければ処理できない場合があります。

月次資料の作成

処理が完了した後は、貸借対照表や損益計算書などの月次試算表を作成します。

会社によっては、次のような資料も必要です。

  • 月次推移表
  • 前年同月比較表
  • 予算実績比較表
  • 部門別損益
  • 店舗別損益
  • 売掛金・買掛金の残高一覧
  • 資金繰りに関する資料

経理代行へ依頼できる業務の全体像については、次の記事で詳しく整理しています。なお、月次推移表以外の資料は、基本料金に含まれず、オプション対応となることがあります。必要な資料と作成頻度を見積もり段階で確認してください。

合わせて読みたい:経理代行で依頼できる業務一覧|どこまで任せられる?

月次決算を外注しても会社側に残る業務

経理代行へ月次決算を依頼しても、会社側の対応が完全になくなるわけではありません。

外部の担当者は、受け取った資料やデータをもとに処理します。

そのため、社内でしか分からない取引内容や経営上の判断については、会社側で対応する必要があります。

会社側に残る業務主な対応内容
資料の提出請求書、領収書、売上一覧、在庫表などを共有する
取引内容の説明摘要だけでは分からない入出金の内容を回答する
売上や在庫の確定月次決算に必要な社内数値を確定する
部門などの判断どの部門や案件に関係する取引かを判断する
社内承認支払や重要な修正内容を承認する
月次資料の確認数字が事業の実態と大きくずれていないか確認する

経理担当者がいない会社でも、経理代行との窓口は必要です。

窓口担当者が経理に詳しい必要はありませんが、

  • 必要な資料を社内から集める
  • 経理代行から届いた質問を担当者へ確認する
  • 社長や責任者の承認を得る
  • 月次資料を受け取る

といった役割を担います。

窓口が決まっていないと、質問への回答や資料の提出が止まり、月次決算も遅れやすくなります。

月次資料が完成するまでのスケジュール例

月次決算の完了日は、会社の取引量や資料の提出時期によって変わります。

翌月10日から15日ごろまでに月次資料を完成させる場合、次のような流れが一例です。

時期経理代行側の対応会社側の対応
当月中取引データを順次取り込み、仕訳を登録する請求書や経費申請を随時提出する
翌月1〜3日銀行・カード明細などを確認する売上、給与、在庫などを確定する
翌月4〜7日残高確認、不明点の整理、月末処理を行う質問へ回答し、不足資料を提出する
翌月8〜10日回答を反映し、月次資料を作成する大きな変動や未確定項目を確認する
翌月10〜15日確定版の月次資料を共有する業績や資金繰りを確認する

これはあくまで一例です。

店舗数が多い会社、在庫計算が必要な会社、複数部門の集計を行う会社では、さらに時間がかかる場合があります。

反対に、クラウド会計との連携が進み、月中から処理できる会社では、より早く締められることもあります。

大切なのは、経理代行会社へ一方的に提出期限を求めるのではなく、会社側の資料提出日も含めてスケジュールを決めることです。

翌月10日・15日までに締めるための条件

月次決算を早めるには、経理代行会社の作業速度だけでなく、会社側の運用も整える必要があります。

資料の提出期限を決める

請求書、領収書、経費申請、売上一覧などについて、提出期限を決めます。

「届いたものから随時提出する」というルールだけでは、いつ資料がそろうのか分かりません。

例えば、

  • 請求書は翌月3日まで
  • 経費申請は当月末まで
  • 売上一覧は翌月2日まで
  • 在庫表は翌月5日まで

というように、資料ごとに期限を設定します。

資料の提出先を統一する

請求書はメール、領収書は紙、売上一覧は個人のパソコンという状態では、資料を探すだけで時間がかかります。

クラウドストレージや経費精算システムなどを利用し、提出先をできるだけ統一します。

提出時のファイル名や保存場所も決めておくと、確認の往復を減らせます。

不明点への回答期限を決める

経理代行から質問が届いても、回答がなければ処理を確定できません。

誰が回答するのか、何営業日以内に返すのかを決めておきます。

質問が複数ある場合は、一覧表やチャットなど、双方が進捗を確認できる方法で管理すると分かりやすくなります。

毎月の処理ルールを統一する

同じ取引について月ごとに異なる処理をすると、数字を正しく比較しにくくなります。

毎月発生する取引については、

  • 使用する勘定科目
  • 部門の分け方
  • 未払費用を計上する基準
  • 少額費用の処理方法
  • 証憑が遅れた場合の対応

などをあらかじめ決めておきます。

こうした処理ルールの整備は、月次決算を安定して進めるための経理体制づくりの一部です。

月次決算が遅れる原因は、経理担当者や経理代行会社の処理速度だけにあるとは限りません。

資料の提出方法、社内の役割分担、承認フローなど、経理体制全体に原因がある場合もあります。経理代行へ依頼する場合も、現在の業務の進め方をあわせて見直すことが大切です。

経理体制の見直しによって、利益や資金繰り、業務の生産性にどのような変化が期待できるのかは、次の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理体制を見直すと会社はどう変わる?利益・資金繰り・生産性を改善する方法

月次決算と年次決算・税務申告の違い

「月次決算まで依頼できる」と「決算申告まで依頼できる」は、同じ意味ではありません。

月次決算は、毎月の業績や財政状態を確認するための社内管理です。

一方、年次決算では、事業年度全体の数字を確定し、決算書を作成します。その数字をもとに、法人税などの税務申告も行います。

項目月次決算年次決算・税務申告
主な目的毎月の業績や財政状態を確認する事業年度の数字を確定し、申告・納税する
実施時期毎月原則として年1回
主な成果物月次試算表、月次推移表など決算書、税務申告書など
主な担当社内経理、経理代行、会計事務所など会社、税理士・税理士法人など

記帳や残高確認、月次資料の作成は経理代行へ依頼できます。

一方、税務申告書の作成や税務相談は、税理士へ依頼する領域です。

そのため、顧問税理士がいる会社でも、日々の経理実務や月次決算を経理代行へ依頼し、税務上の判断や年次申告を税理士へ依頼する役割分担ができます。

ただし、経理代行と税理士の連携方法が決まっていないと、同じ資料を二重に提出したり、修正の連絡が行き違ったりすることがあります。

誰が月次資料を作成し、いつ税理士へ共有するのかを決めておくことが必要です。

合わせて読みたい:経理代行と税理士の違い|どちらに依頼すべき?役割・業務範囲を分かりやすく解説

月次決算の外注が向いている会社

月次決算の外注は、特に次のような会社に向いています。

  • 社長や他部署の担当者が経理を兼務している
  • 日々の入力はできても、残高確認まで手が回らない
  • 月次試算表の完成が毎月遅れている
  • 経理担当者が一人しかおらず、確認体制に不安がある
  • 担当者によって処理方法が異なっている
  • 顧問税理士はいるが、日常の経理実務を支援してほしい
  • 経営者が利益や資金繰りを早く確認したい
  • 経理担当者を採用できず、現在の体制に限界を感じている

一方、会社側で資料を提出する人や、取引内容を説明できる人がまったくいない場合は、経理代行だけで月次決算を完了させるのは難しくなります。

また、数字を作成しても経営者が確認しない会社では、月次決算を行う効果が十分に得られません。

月次決算を外注する前に、

  • 誰が社内窓口になるか
  • 誰が月次資料を確認するか
  • 毎月の数字を何に活用するか

を決めておく必要があります。

経理代行だけでなく、採用や社内分担も含めて経理体制を検討したい場合は、次の記事をご覧ください。

合わせて読みたい:中小企業の経理体制の作り方|採用・外注・経理代行の選び方

契約前に確認したい成果物と提出期限

月次決算を依頼する場合は、毎月何が、いつ、どの状態で提出されるのかを確認します。

特に確認しておきたいのは、次の項目です。

  • 仕訳入力だけでなく残高確認まで含まれるか
  • 預金、売掛金、買掛金の不一致をどこまで調査するか
  • 月次試算表以外にどの資料を受け取れるか
  • 必要資料がそろってから何営業日で完成するか
  • 会社側の資料提出期限はいつか
  • 不明点への回答が遅れた場合、提出日はどう変わるか
  • 月次資料の提出後に修正できるか
  • 修正作業は基本料金に含まれるか
  • 未確定の取引をどのように表示するか
  • 入力内容や月次資料を誰が確認するか

「月次試算表を作成します」という説明だけでは、月次決算の品質までは判断できません。

会計ソフトから帳票を出力するだけなのか、残高の不一致や未処理項目を確認したうえで作成するのかによって、資料の使いやすさは変わります。

また、提出期限についても、「翌月10日まで」という日付だけではなく、どの資料が何日までにそろっていることが条件なのかを確認します。

会社側の提出が遅れた場合の対応や、未確定の項目が残った場合の扱いも、契約前に決めておくと認識違いを防げます。

公認会計士の視点|月次決算は早さと正確さのバランスで考える

月次決算では、早く数字を出すことが注目されがちです。

しかし、翌月5日に試算表が完成しても、

  • 預金残高が一致していない
  • 入金済みの売掛金が残っている
  • 支払済みの買掛金が消し込まれていない
  • 毎月発生する費用が計上されていない

という状態では、経営判断に使いにくい資料になります。

反対に、すべての項目を完全に確定させようとして、毎月の試算表が翌月末になるのも望ましくありません。

月次決算では、次の3点を確認します。

  • 経営判断に間に合う時期に数字が出ているか
  • 毎月同じ基準で処理され、前月や前年と比較できるか
  • 未確定の項目が分かる形で共有されているか

例えば、一部の請求書が届いていない場合でも、未払費用として概算計上することで、速報値を作成できることがあります。

ただし、どこまで概算を使うかは会社ごとに決める必要があります。

経理代行へ依頼する場合も、提出日だけで評価するのではなく、「どこまで確認された数字なのか」「経営者が何を判断できる資料なのか」という視点で確認することが大切です。

よくある質問

Q1. 顧問税理士がいても月次決算を経理代行へ依頼できますか?

依頼できます。

日々の記帳、預金や売掛金・買掛金の残高確認、月次資料の作成を経理代行が担当し、税務上の判断や年次の税務申告を顧問税理士が担当する方法があります。

ただし、経理代行と税理士の役割が曖昧だと、同じ資料の二重提出や確認の重複が発生します。

月次資料を誰が作成し、いつ税理士へ共有するのかを決めておくと、連携しやすくなります。

Q2. 月次決算は翌月何日までに終えるべきですか?

会社が数字を何に使うかによって異なります。

資金繰りや経営判断に活用する場合は、まず翌月15日までを目標にし、運用が安定してから翌月10日前後を目指す方法があります。

ただし、取引件数、店舗数、在庫計算の有無などによって、必要な日数は変わります。

無理な締め日を設定するのではなく、必要資料の提出日から逆算し、毎月継続できるスケジュールを決めることが大切です。

Q3. 経理担当者がいない会社でも依頼できますか?

依頼できますが、社内の窓口担当者は必要です。

窓口担当者は、経理の専門知識を持っていなくても構いません。

必要資料の提出、不明な取引の社内確認、承認者への連絡、月次資料の受け取りなどを担当します。

会社側の窓口と承認者が決まっていれば、社長や事務担当者が兼務しながら経理代行を利用することも可能です。

Q4. 月次決算だけを経理代行へ依頼できますか?

対応できるかどうかは経理代行会社によって異なります。

社内で日々の記帳を行い、月末の残高確認や試算表の作成だけを依頼できる場合もあります。

ただし、社内で登録した仕訳に誤りや不足が多いと、月次決算時の確認や修正に時間がかかります。

月次決算だけを依頼する場合は、日々の記帳方法、使用する勘定科目、証憑の保存方法などを経理代行会社と共有しておく必要があります。

まとめ

経理代行には、日々の仕訳入力だけでなく、預金や売掛金・買掛金の残高確認、月末の決算整理、月次試算表の作成まで依頼できる場合があります。

ただし、月次決算に対応しているサービスでも、具体的な業務範囲や成果物は同じではありません。

月次決算を外注するときは、

  • どの月次業務を依頼するか
  • 残高確認をどこまで行ってもらえるか
  • 会社側にどの業務が残るか
  • 必要資料をいつまでに提出するか
  • 月次資料を何日までに受け取りたいか
  • 試算表以外にどの資料が必要か
  • 入力内容や数字を誰が確認するか

を契約前に整理することが大切です。

月次決算を外注する目的は、社内の入力作業を減らすことだけではありません。

毎月の数字を安定して確認し、経営判断に使える状態をつくることが本来の目的です。

経理代行サブスクサービス「まるまる経理」では、日々の経理業務に加え、月次締めや残高確認、月次資料の作成など、会社の状況に応じた経理体制づくりを支援しています。

「現在の経理業務をどこまで任せられるのか」「月次決算を早めるには何を見直せばよいのか」とお悩みの場合は、現在の業務内容を整理するところからご相談ください。

月次決算を外注する場合、依頼する業務範囲や取引件数によって費用は変わります。料金の目安や費用の内訳を確認したうえで、自社に必要な業務と予算に合うサービスを検討することが大切です。料金の目安や費用の内訳について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

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