「毎月の経理は進めているものの、1年間を通していつ何をすればよいのか整理できていない」
「決算や年末調整が近づくたびに、必要な資料を慌てて集めている」
経理担当者が少ない中小企業では、こうした状況も珍しくありません。
経理には、請求書の発行や入金確認のように毎月繰り返す仕事がある一方、決算や棚卸、年末調整など、特定の時期に発生する業務もあります。
年間の流れが整理されていないと、決算前や年末になってから作業が集中し、普段の月次処理まで後ろ倒しになることがあります。あらかじめ1年間の予定が分かっていれば、資料を集める時期や社内へ依頼するタイミングも逆算しやすくなるでしょう。
この記事では、中小企業の経理年間スケジュールについて、毎月繰り返す業務と1月〜12月に発生しやすい業務に分けて整理します。
実際の予定は、会社の決算月や従業員の有無、業種などによって変わります。ここでは年間の流れをイメージしやすくするため、3月決算の会社を一例として見ていきます。
中小企業の経理年間スケジュールは2種類に分けて考える
経理の年間予定を作るときは、すべての仕事を1月から12月まで並べるだけでは、かえって全体像が見えにくくなることがあります。
まず分けて考えたいのが、「毎月繰り返す業務」と「特定の時期に発生する業務」です。
毎月繰り返すものには、請求書発行、入金確認、支払準備、経費精算、記帳、残高確認、月次決算などがあります。
一方で、決算や棚卸、年末調整、法定調書に関する対応、労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届などは、決算月や暦に応じて時期が決まっています。
この2種類を重ねて確認できるようにしておくと、「いつもの月次業務に加えて、その月は何があるのか」が見えやすくなります。
毎月繰り返す主な経理業務
年間を通して経理の土台になるのは、毎月繰り返す業務です。
実際の締め日や処理日は会社によって異なりますが、おおまかな流れを整理すると次のようになります。
| 時期 | 主な業務 |
|---|---|
| 月中 | 記帳、証憑整理、経費申請の確認、入出金確認 |
| 月末前後 | 請求書発行、支払予定の確認、経費精算の締め |
| 翌月初 | 入金確認、売掛金・買掛金などの残高確認、未処理事項の確認 |
| 翌月初〜中旬 | 月次決算、試算表などの確認 |
月末や翌月初になってから一気に処理しようとすると、資料待ちや確認待ちが重なり、月次決算まで遅れてしまうことがあります。
経費申請の締め日を決めておく、請求書の提出時期を社内でそろえる、残高確認を毎月同じタイミングで行うなど、一定のルールを設けておくと流れを整えやすくなります。
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1月〜12月の経理年間スケジュール
ここからは、1年間の経理業務を月ごとに見ていきます。
決算に関係する業務は会社の決算月によって時期が変わるため、以下では3月決算の会社を例にしています。
税務・社会保険・労働保険に関する手続きは、会社の状況によって対象となるものが異なります。実際の対応の要否や提出期限については、その年の公式情報や税理士、社会保険労務士などの専門家へ確認してください。
1月|前年分の給与や支払関係の資料を整理する
1月は、前年12月までの給与や支払いに関する資料を整理する時期です。
給与を支払っている会社では、年末調整後の内容を確認し、源泉徴収票や法定調書、給与支払報告書などに関する対応が続きます。
主な法定調書は、原則として翌年1月31日までに提出します。
給与計算や年末調整を外部へ依頼している場合でも、会社側で資料を準備したり、内容を確認したりする作業は残ります。
年が明けてから必要資料を探し始めるのではなく、「誰が何を用意するのか」を前年のうちに整理しておくと、1月の負担を抑えやすくなります。
2月|決算前に未処理や残高を確認する
3月決算の会社では、2月頃から決算を意識した確認を始めておくと、年度末の作業を進めやすくなります。
例えば、長期間残ったままの売掛金や買掛金、内容が分からない未払金、提出されていない領収書などがないかを確認します。
決算を迎えてから過去の取引を調べ始めると、数カ月前の資料までさかのぼったり、担当者へ改めて確認したりすることになりかねません。
普段の月次処理の中で気になる残高や未処理事項を洗い出し、時間がかかりそうなものから整理しておくと、決算直前の負担を減らせます。
3月|決算日までの取引を整理する
3月決算の会社にとって、3月末は1年間の区切りとなります。
この時期は、3月分の仕訳入力だけでなく、決算日前後の売上・仕入、未処理取引、在庫、固定資産、売掛金・買掛金なども確認していきます。
在庫を保有する会社では棚卸が必要になる場合もあります。誰が数量を確認するのか、棚卸結果をどのような形で経理へ渡すのかまで事前に決めておけば、その後の集計も進めやすくなります。
決算時に確認する項目は多いため、年度末になって未処理をまとめて解消するのではなく、普段の月次処理から残高や資料を確認しておくことが負担軽減につながります。
4月|決算資料をそろえながら新年度の経理を進める
3月決算の会社では、4月になると前年度の決算対応と新年度の日常経理が同時に動き始めます。
決算に必要な資料が不足していれば追加で回収し、売掛金・買掛金・預金などの残高も確認します。固定資産の取得や売却、通常とは異なる取引があった場合には、追加の確認が必要になることもあります。
その一方で、新年度分の請求や支払い、経費精算はすでに始まっています。
決算対応ばかりに時間を取られて4月分の経理が遅れると、その後の月次処理にも影響します。前年度の決算対応と新年度の通常業務を分け、それぞれの進み具合を確認できるようにしておくと管理しやすくなります。
5月|3月決算企業では申告に向けた確認が増える
法人税の確定申告は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。
そのため、3月決算の会社では5月が申告時期となるケースが多く、税理士へ申告を依頼している会社でも、追加資料の提出や質問への回答などが発生することがあります。
消費税をはじめ、必要となる申告や納付は会社の状況によって異なります。自社に必要な対応については、税理士等へ確認してください。
申告書そのものを外部へ任せていても、その元になる帳簿や資料をそろえるのは会社側です。決算月を迎える前から経理資料を整理しておけば、この時期のやり取りも進めやすくなります。
6月|労働保険や社会保険の手続きに備える
従業員を雇用している会社では、6月から7月にかけて労働保険や社会保険に関する手続きが重なることがあります。
2026年度の労働保険の年度更新期間は、6月1日から7月10日までです。また、社会保険の算定基礎届に向けた準備もこの時期に進みます。
これらの手続きを社会保険労務士へ依頼している場合でも、賃金データなど会社側で準備する資料が必要になることがあります。
経理と給与・労務を同じ担当者が兼務している会社では、通常の月次業務と並行して対応することになるため、必要な資料を早めに確認しておくと余裕を持って進められます。
7月|年度更新や算定基礎届の期限を確認する
7月は、対象となる会社にとって労働保険の年度更新や社会保険の算定基礎届などの手続きが重なる時期です。
2026年度の算定基礎届は、7月10日が提出期限となっています。
通常の請求・支払・経費精算・月次決算を進めながら、こうした手続きの資料も準備することになるため、経理と人事・労務を兼任している担当者には負担が集中しやすくなります。
毎年この時期になってから前年の資料を探している場合は、使用したデータや作業手順を残しておくと、翌年の対応が楽になります。担当者が変わった場合の引き継ぎにも役立つでしょう。
8月|経理の遅れや未処理を点検する
8月は、会社によっては決算や年末ほど大きな年次業務が集中しない時期です。
比較的余裕があるなら、経理の遅れや未処理がたまっていないかを確認する機会として活用できます。
例えば、
- 月次決算が予定どおり終わっているか
- 長期間残っている売掛金や買掛金がないか
- 不明取引が翌月へ繰り越されていないか
- 領収書や請求書の保存方法に問題がないか
といった部分です。
繁忙期の最中に経理体制を大きく変えるのは簡単ではありません。少し余裕のある時期に日頃の困りごとを洗い出しておくと、改善にも着手しやすくなります。
9月|上期の数字と経理の状態を振り返る
3月決算の会社では、9月で事業年度の半分が経過します。
すべての会社に法律上の「上期決算」が必要なわけではありませんが、半年間の売上や費用、資金繰りなどを振り返る機会として活用できます。
経理側でも試算表の数字を見るだけでなく、売掛金や買掛金などの残高が実態と合っているか、長く残った未処理事項がないかを確認しておくとよいでしょう。
年度末まで持ち越す問題を減らしておけば、決算時にまとめて調査する負担も抑えられます。
10月|年末に向けた準備を始める
10月頃からは、年末に発生する給与や年末調整関係の業務を見据えて準備を始めます。
必要な書類をいつ案内するのか、誰が回収するのか、給与担当者や外部の専門家との役割分担はどうするのか。このあたりを早めに確認しておけば、11月・12月になってから対応が集中しにくくなります。
3月決算の会社であれば、年度末まで残り半年を切る時期でもあります。
決算までに整理しておきたい残高や、毎月後回しになっている処理がないかを確認するタイミングとしても使えます。
11月|年末調整と年末の支払予定を確認する
11月になると、給与を支払っている会社では年末調整に向けた資料回収や確認が本格化します。
また、年末年始は取引先の営業日や銀行の稼働日が通常月とは異なるため、12月末から1月初旬に予定している支払いについても、普段より早めに確認しておきたいところです。
年末調整、支払、請求、月次決算を一人の経理担当者が抱えている場合、この時期だけ仕事量が大きく増えることがあります。
毎年同じ時期に残業や処理遅れが発生しているなら、「年末は忙しいから仕方がない」と考えるだけでなく、業務分担や進め方を見直す余地がないか確認してみましょう。
12月|年末の経理処理と翌年1月の準備を進める
12月は、給与を支払っている会社では年末調整への対応が発生しやすい時期です。
そこへ通常の請求・支払・経費精算・月次処理も重なるため、経理担当者にとって忙しい月になることがあります。
年内の支払いをいつまでに処理するのか、未提出の経費はないか、確認待ちの取引が残っていないかなどを整理しておきます。
ただし、12月末ですべての年次業務が終わるわけではありません。翌年1月には法定調書などの対応が続くため、「年内に終える仕事」と「翌年へ続く仕事」を分けて管理しておくと、年末年始の業務を進めやすくなります。
決算月が違えば経理年間スケジュールも変わる
ここまで3月決算の会社を例に見てきましたが、決算関係の業務は自社の決算月を基準に考える必要があります。
例えば12月決算の会社であれば、12月が年度末となり、その後に年次決算や税務申告に向けた確認が続きます。
一方で、年末調整や法定調書、労働保険の年度更新、算定基礎届などは、会社の決算月とは別の時期に発生します。
年間スケジュールを作るときは、
- 決算月を基準に動く業務
- 暦によって時期が決まっている業務
- 毎月繰り返す業務
の3つに分けておくと整理しやすくなります。
決算月だけを年間予定表に入れていると、年末や6〜7月に発生する業務を見落としやすいため、自社で対応が必要な年間業務を一度まとめて確認しておきましょう。
経理の繁忙期は会社によって変わる
経理の繁忙期というと、決算期や年末を思い浮かべるかもしれません。
実際には、忙しくなるタイミングは会社によってかなり違います。
請求件数が多ければ請求締め日前後、支払件数が多ければ支払日の前が忙しくなります。棚卸がある会社と在庫を持たない会社でも、決算時の作業量は同じではありません。
一般的な繁忙期を知るだけでなく、自社では「いつ、何の仕事が集中しているのか」を把握することが大切です。
毎月決まった時期に残業が増える、決算になると通常業務まで止まる、資料回収がいつも間に合わない。このような状態が続いているなら、年間予定の組み方だけでなく、業務の進め方そのものを見直した方がよい場合があります。
経理年間スケジュールを作るときの5つのポイント
年間スケジュールは、予定を一覧にしただけでは十分に活用できません。
実際の業務で使える状態にするには、「いつ」「誰が」「何をするのか」まで整理しておく必要があります。
1.毎月の業務と年次業務を分ける
まず、請求や支払など毎月発生するものと、決算や年末調整など特定の時期だけ発生するものを分けます。
すべてを一つの一覧へ詰め込むより、定例業務と年次業務を分けた方が、その月だけ追加される仕事を把握しやすくなります。
2.期限だけでなく準備を始める時期も決める
3月末に棚卸を行うとしても、準備を始めるのが3月31日では遅いことがあります。
対象商品の確認、棚卸表の準備、担当者への案内など、事前に行う作業があるためです。
決算資料の回収や年末調整も同じで、最終期限だけを年間予定表へ入れると直前に仕事が集中しやすくなります。
「いつまでに終えるか」と合わせて、「いつから準備するか」まで決めておくと進めやすくなります。
3.担当者と確認者を整理する
年間予定表に「経理」とだけ書いていても、実際に誰が処理するのか分からない状態では、担当者が変わったときに業務が止まりやすくなります。
資料を準備する人、処理する人、内容を確認する人、最終承認する人まで整理しておけば、役割も曖昧になりにくくなります。
特に支払など会社のお金が動く業務では、作業担当者と承認者の役割を分けて考えておきたいところです。
4.外部へ依頼している業務も予定に入れる
税理士や社会保険労務士、経理代行などへ仕事を依頼していても、会社側の対応が完全になくなるとは限りません。
資料の提出、質問への回答、内容確認など、自社で担当する仕事は残ります。
年間予定表には、「税理士が申告する」といった最終作業だけでなく、会社側がいつまでに資料を渡す必要があるのかまで入れておくと、直前のやり取りを減らしやすくなります。
5.毎年遅れている業務がないか振り返る
年間スケジュールを作る目的は、きれいな予定表を完成させることではありません。
毎年同じところで遅れている業務や、特定の担当者に負担が集中している時期を見つける材料にもなります。
「5月は決算対応で通常業務まで止まる」「12月になると残業が一気に増える」といった状況が繰り返されているなら、スケジュールだけではなく現在の経理体制にも目を向けてみましょう。
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年間スケジュールを作っても経理が回らないときは体制も確認する
年間の予定を書き出してみると、忙しい時期だけでなく、業務が特定の人に偏っている状態も見えてきます。
例えば、一人の担当者が月次決算を進めながら決算資料を集め、給与や年末調整まで担当している場合、予定を細かく組むだけでは負担を減らせないことがあります。
そのようなときは、締め日を見直す、社内で仕事を分担する、システムを使って手作業を減らす、一部の経理業務を外部へ任せるなど、別の方法も考えられます。
経理を外注するといっても、すべての業務を丸ごと任せる必要はありません。記帳、請求書発行、支払準備、経費精算など、負担が大きい仕事から切り出す方法もあります。
年間スケジュールを作ることで「いつ忙しいのか」だけでなく、「なぜその時期に忙しくなるのか」まで確認できれば、経理体制を見直すきっかけにもなります。
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まとめ
中小企業の経理には、請求や支払、入金確認、月次決算のように毎月繰り返す仕事と、決算、年末調整、労働保険や社会保険に関する手続きなど、特定の時期に発生する仕事があります。
年間スケジュールを作るときは、1月から12月まで予定を並べるだけでなく、準備を始める時期や担当者、外部へ依頼する場合の社内対応まで整理しておくと、実際の業務で使いやすくなります。
予定を書き出してみることで、「毎年決算期になると通常業務が遅れる」「年末だけ一人の担当者に仕事が集中する」といった課題に気付くこともあります。
こうした状況が続いている場合、単にスケジュールを組み直すだけでは解消できないかもしれません。社内の業務分担を変えたり、一部の経理業務を外部へ任せたりすることも選択肢の一つです。
まるまる経理では、企業ごとの業務量や現在の経理体制に合わせて、日々の経理業務や経理体制づくりをサポートしています。
「年間を通して経理業務に追われている」「繁忙期になると月次処理まで遅れてしまう」「経理担当者の負担を減らしたい」と感じている場合は、自社の年間業務を整理し、社内で続ける仕事と見直したい仕事を分けるところから始めてみてください。
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