鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理の記帳がたまっている会社の対処法|会計入力を立て直す5つの手順

経理の記帳がたまっている会社が未入力の会計データを整理し、会計入力を立て直す5つの手順を解説する画像

「会計ソフトへの入力が数カ月分たまっている」

「領収書や請求書はあるものの、どの月まで処理できているのか分からない」

「過去の記帳を進めても、その間に当月分がまたたまってしまう」

このような状態になると、とにかく古い資料から入力を始めたくなるかもしれません。

しかし、経理の記帳がたまっているときは、最初から入力作業を始めるよりも、どこまで処理が終わっていて、どこから再開するのかを明確にすることが大切です。

対象期間が曖昧なまま作業すると、同じ取引を二重に入力したり、不足資料を探すたびに作業が止まったりする可能性があります。

また、過去月の記帳だけに集中すると、今月の処理まで遅れてしまい、新しい未処理が増えかねません。

この記事では、数週間から数カ月分の記帳がたまっている会社が、当月の業務を止めずに会計入力を立て直す5つの手順を解説します。

経理全体が滞っており、記帳以外にも支払、請求、残高確認、月次決算などの遅れが発生している場合は、以下の記事から全体の優先順位を確認してください。

合わせて読みたい:経理が回らない会社の立て直し方|優先順位と7つの改善手順

目次

記帳がたまっている状態とは?

この記事で扱う「記帳がたまっている状態」とは、日々発生した取引について、会計ソフトへの入力や仕訳の登録が追いついていない状態を指します。

例えば、次のようなケースです。

・銀行口座の取引が数カ月分入力されていない
・クレジットカードの利用明細が未処理になっている
・領収書や請求書がまとめて残っている
・売上や経費の入力が途中の月がある
・一部だけ入力され、どこまで完了したか分からない

ここで重要なのは、記帳の滞留と月次決算の遅れを同じものとして扱わないことです。

記帳は、取引を会計データへ反映する工程です。

一方、月次決算では、記帳後に預金や売掛金などの残高を確認し、未処理事項を整理して、その月の数字を確定していきます。

この記事では、月次決算全体の進め方ではなく、たまっている記帳を通常の処理ペースへ戻すところまでを扱います。

記帳がたまったら、最初に「最後に終わった月」を確認する

最初に確認したいのは、未入力の件数ではありません。

最後に記帳が完了している月や日付です。

例えば、

「3月までは入力と確認が終わっているが、4月は途中、5月以降はほとんど入力されていない」

という状態であれば、4月から整理を始めます。

反対に、「半年分たまっていると思う」という感覚だけで作業を始めると、すでに入力済みの取引と未入力の取引が混ざる可能性があります。

会計ソフトだけで判断せず、銀行明細やクレジットカード明細などと照らしながら、どの時点まで処理できているのかを確認します。

確認した結果は、例えば次のように整理します。

対象最後に確認できた日・月状態
普通預金3月末入力済み
クレジットカード2月利用分入力済み
売上3月分入力済み
経費3月途中一部未入力

細かな仕訳を確認する前に、まず再開地点を決めることが重要です。

記帳がたまっているときの5つの整理手順

1.対象期間を確定する

最初に、何月から何月までの記帳を処理するのかを決めます。

例えば、3月までは処理済みで、現在が7月であれば、4月から7月までが確認対象になります。

ただし、いきなり4カ月分すべてを一つの作業として考える必要はありません。

「4月を完了する」「次に5月へ進む」というように、月単位で区切ります。

対象期間を確定するときは、次の内容を確認します。

・最後に入力が完了した月
・銀行明細を確認できている日
・クレジットカード明細の処理状況
・売上データの登録状況
・経費や請求書の入力状況

一部の取引だけ先の月まで入力されている場合は、二重入力を防ぐため、入力済みかどうかを確認してから作業を始めます。

2.月ごとに必要な資料を集める

対象期間が決まったら、記帳に必要な資料を月ごとに集めます。

例えば、次のような資料です。

・銀行口座の入出金明細
・クレジットカードの利用明細
・売上データ
・発行した請求書
・受領した請求書
・領収書
・経費精算データ

ここで、最初からすべての資料がそろうまで待つ必要はありません。

「そろっている資料」と「不足している資料」を分けます。

例えば4月分について、銀行明細と売上データはあるものの、一部の領収書だけ不足しているのであれば、処理できる取引まで止める必要はありません。

ただし、不足している資料があることは分かるようにしておきます。

資料探しと入力作業を同時に繰り返すと作業が中断されやすいため、まず資料の所在を確認し、その後に入力へ進む方が整理しやすくなります。

3.すぐ入力できる取引と確認が必要な取引を分ける

資料を集めたら、取引を大きく二つに分けます。

一つは、資料から内容を確認でき、すぐに記帳できる取引です。

もう一つは、取引内容や用途などについて確認が必要な取引です。

例えば、銀行明細に振込先と金額が記録され、対応する請求書も確認できる場合は処理を進めやすいでしょう。

一方、

「振込名義だけでは取引内容が分からない」

「領収書はあるが、何のために利用したのか判断できない」

といった取引は、社内への確認が必要になります。

確認が必要な取引で入力作業全体を止めるのではなく、いったん分けて、処理できる取引を先に進めます。

ただし、内容が分からない取引を推測だけで確定させるのではなく、確認が必要な状態であることを残します。

確認が必要な取引が複数ある場合は、内容、確認先、期限、現在の状況などを未処理一覧にまとめておくと、確認漏れを防ぎやすくなります。

未処理一覧に記載したい項目や、月次決算までに解消する管理方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理の未処理一覧とは?月次決算までに解消する管理方法

4.古い月から順番に記帳する

資料を整理したら、基本的には最後に処理が完了した月の翌月から進めます。

例えば3月まで完了している場合は、4月、5月、6月という順番です。

資料がそろっているからといって6月だけを先に確定すると、預金や売掛金などの残高がどの月からずれているのか確認しにくくなることがあります。

1カ月分について、

資料確認

記帳

入力漏れの確認

まで進めてから次の月へ移る方が、進捗を把握しやすくなります。

また、過去月の記帳だけで担当者の時間を使い切らないことも重要です。

例えば、

・午前中は当月の経理を処理する
・午後の一定時間を過去月の記帳に使う
・担当者を分けられる場合は、当月担当と過去月担当を分ける

など、当月業務を止めない時間配分を決めます。

過去月の記帳を解消している間に新しい記帳がたまれば、いつまでも通常運用へ戻れません。

5.1カ月ごとに入力漏れや重複を確認する

1カ月分の入力が終わったら、そのまま次の月へ進まず、抜けや重複がないかを確認します。

例えば普通預金であれば、銀行明細の取引が会計データへ反映されているかを確認します。

クレジットカードであれば、利用明細と入力内容を照らします。

この段階の目的は、月次決算を完了させることではありません。

「その月に記帳すべき取引が、おおむね会計データへ反映された状態になったか」を確認することです。

売掛金や買掛金の詳細な残高差異、不明取引、月次決算の確定などは、それぞれ別の工程として整理します。

記帳だけで経理全体を完了させようとしないことが、他の問題を見落とさないためにも重要です。
売掛金の残高に差額がある場合は、請求額と入金額の対応関係を確認し、どの取引で差額が生じているのかを整理します。

合わせて読みたい:売掛金の入金消込が合わない7つの原因|差額を解消する6つの確認手順

不明取引が繰り返し発生している場合は、その都度確認するだけでなく、取引情報の残し方や社内での共有ルールを見直すことで、同じ確認待ちを減らしやすくなります。

合わせて読みたい:経理の不明取引が起きる原因とは?発生を防ぐ5つの事前ルール

資料がそろっていない月は飛ばしてもよい?

一部の資料が不足しているだけであれば、確認できる取引まで処理を進める方法があります。

ただし、月自体を飛ばして先の月だけ確定させると、残高のつながりを確認しにくくなる場合があります。

そのため基本的には、古い月から順番に進めながら、不足資料や確認待ちの取引だけを分けて管理します。

例えば4月に確認待ちの取引が3件あるからといって、4月のすべての入力を止める必要はありません。

処理できる部分を進め、残った3件が分かる状態にしておきます。

大切なのは、「完了している取引」と「まだ確認が必要な取引」が混ざらないことです。

クラウド会計へ変えれば、たまった記帳は解消できる?

銀行口座やクレジットカードと連携できる会計ソフトを利用すると、今後の入力作業を効率化できる場合があります。

ただし、すでに記帳がたまっている状態では、最初に対象期間や資料の状況を整理する必要があります。

システムを変更しても、

・取引内容が分からない
・請求書が不足している
・入力済みと未入力の区別がつかない

といった問題が自動的に解決するわけではありません。

まず現在の滞留を整理し、通常運用へ戻した後に、今後の記帳を効率化する仕組みを検討します。

たまった記帳を記帳代行・経理代行へ依頼する場合

社内で当月業務を続けながら、数カ月分の過去記帳を処理する時間を確保できない場合は、記帳代行や経理代行へ依頼する方法もあります。

その場合は、最初に次の内容を整理しておくと、必要な作業を確認しやすくなります。

確認項目内容
対象期間何月から記帳がたまっているか
最後に完了した月どこまで入力済みか
使用している会計ソフト現在のデータ保存先
銀行口座対象口座と明細の取得状況
クレジットカード対象カードと利用明細
証憑請求書・領収書などの保存場所
社内確認者不明な取引へ回答できる人

資料が完全に整理されていなくても、現在分かっている範囲を共有することから始めます。

なお、この記事では「たまった記帳を整理する方法」に限定しています。

経理代行へ一般的にどのような業務を依頼できるのか、導入までどのように進むのかについては、以下の記事で解説しています。

合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説

記帳の滞留を解消するときに避けたい3つの進め方

入力済みか確認せず、最初から入力し直す

途中まで記帳されている場合、最初から入力し直すと二重計上につながる可能性があります。

まず最後に処理できている期間を確認します。

資料が一つ不足するたびに作業全体を止める

不足資料が見つかるたびに入力を止めていると、処理できる取引まで進まなくなります。

不足しているものは分けて管理し、確認できる取引を進めます。

過去の記帳だけに集中する

数カ月分の記帳を一気に終わらせようとして、当月業務を後回しにすると、新たな滞留が発生します。

過去月を処理する時間と、当月の記帳を続ける時間を分けることが重要です。

公認会計士の視点|「何件入力したか」ではなく「どの月まで終わったか」を管理する

記帳がたまっていると、「今日は100件入力した」と入力件数で進捗を管理したくなることがあります。

しかし、100件処理しても、4月、5月、6月の取引が混ざっていれば、どの月まで処理が終わったのか分かりにくくなります。

立て直し中の記帳では、

「4月分の銀行取引は完了」

「4月分のカード取引は完了」

「4月分の経費は3件確認待ち」

というように、月とデータの種類を基準に進捗を管理します。

例えば、次のような表を作成します。

銀行カード売上経費確認待ち
4月完了完了完了3件待ち3件
5月完了作業中未着手未着手
6月未着手未着手未着手未着手

このように、「何件入力したか」ではなく、「何月のどのデータまで処理できているか」で管理すると、担当者以外でも現在の進捗を把握しやすくなります。

入力件数を減らすことだけを目的にせず、どこまで完了したかを第三者でも確認できる状態にすることが大切です。

記帳だけでなく、請求書発行や支払、経費精算、残高確認など毎月の経理業務全体について進捗を見える化したい場合は、業務ごとに担当者・期限・ステータスを設定して管理します。

合わせて読みたい:経理業務の進捗管理とは?遅れを防ぐ7つの管理項目と運用方法

よくある質問

Q1.半年分の記帳がたまっている場合も、古い月から進めますか?

基本的には、最後に処理が完了した翌月から順番に確認します。

ただし、支払や請求など現在進行中の業務は別に確保し、過去月の処理によって当月業務が止まらないようにします。

Q2.領収書が不足していても記帳を進められますか?

確認できる資料がある取引については、処理を進められる場合があります。

不足している資料や内容確認が必要な取引は分けて管理し、未確認のものが分かる状態にしておきます。

Q3.銀行データを連携すれば、過去の記帳もすぐ終わりますか?

データ連携によって入力作業を減らせる場合はありますが、取引内容の確認や証憑との対応付けが必要なケースもあります。

連携するだけですべての記帳が完了するとは限りません。

Q4.記帳が終われば月次決算も完了ですか?

記帳が終わっただけでは、月次決算が完了したとは限りません。

記帳後には、主要な残高や未処理事項などを確認し、その月の数値を確定していく工程があります。

記帳だけでなく、残高確認や未処理事項の解消まで含めて月次決算が複数月遅れている場合は、過去月から順番に数字を確定し、通常月へ追いつく進め方が必要です。

遅れている月次決算を過去月から通常月へ追いつかせる具体的な手順については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:月次決算の遅れを取り戻す方法|過去月から通常月へ追いつく6つの手順

Q5.記帳だけ経理代行へ依頼することはできますか?

サービスや契約内容によって異なります。

記帳のみを外部へ依頼する場合でも、取引内容が分からないときに回答する社内担当者や、資料を提出する窓口は必要です。

まとめ

経理の記帳が数週間・数カ月分たまっているときは、すぐに入力を始めるのではなく、最初に最後に処理が完了している月を確認することが重要です。

そのうえで、

1.対象期間を確定する
2.月ごとに資料を集める
3.入力できる取引と確認が必要な取引を分ける
4.古い月から順番に記帳する
5.月ごとに入力漏れや重複を確認する

という順番で進めます。

過去の記帳を処理している間も、当月業務は止めません。

経理代行を利用する場合の費用は、対象期間、取引件数、資料の状態、依頼する業務範囲などによって変わります。

一般的な料金相場や費用の内訳については、以下の記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説

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このような場合も、まず現在の処理状況と未入力期間を整理するところからご相談いただけます。

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