「経理代行を導入すると便利になるとは聞くけれど、本当に費用に見合う効果があるのだろうか。」
経理代行を検討する際、多くの経営者が気になるのが投資対効果です。
毎月費用が発生する以上、「安いか高いか」だけではなく、その費用によってどのような改善が期待できるのかを知りたいと考えるのは自然なことです。
ただし、経理代行の投資対効果は、単純に「支払う金額」と「削減できるコスト」だけでは判断できません。
例えば、社長が経理業務から解放されることで営業活動に時間を使えるようになったり、月次決算が早まり迅速な経営判断につながったりと、数字だけでは表れにくい効果もあります。
経理代行の料金相場や、料金を比較するときの基本的な考え方については、以下の記事で解説しています。
合わせて読みたい:経理代行の費用はいくら?料金相場と内訳を解説
経理代行の投資対効果とは?
投資対効果とは、「支払った費用に対して、どれだけの価値が得られたか」を判断する考え方です。
経理代行の場合は、単純なコスト削減だけでなく、
- 経理担当者の負担軽減
- 社長が本業へ集中できる時間の確保
- 月次決算の早期化
- 属人化リスクの低減
- 業務品質の安定
なども含めて考える必要があります。
例えば、毎月5万円の経理代行費用が発生したとしても、
- 残業代の削減
- 採用コストの抑制
- 経営判断の迅速化
- 売上向上につながる時間の確保
といった効果がそれ以上に得られるのであれば、投資対効果は高いと言えるでしょう。
重要なのは、「毎月いくらかかるか」ではなく、「その費用によって会社全体がどのように改善するか」という視点です。
経理代行のROIを計算する方法
経理代行の投資対効果を数字で確認する際は、ROIの計算式を使います。
以下は、経理代行による削減額や時間価値を含めて考える簡易的なROI計算です。会計上の利益や、実際のキャッシュ増加額を示すものではありません。
ROI(%)=(年間で得られた効果-年間投資額)÷年間投資額×100
年間投資額には、次の費用を含めます。
- 経理代行の月額料金
- 初期設定費用
- 導入支援費用
- 必要に応じて発生する追加料金
年間で得られた効果には、金額として把握できる次の項目を含めます。
- 人件費や残業代の削減額
- 採用費や教育費の回避額
- 修正作業や手戻りの削減額
- 経営者や社員が経理業務から解放された時間の価値
月次決算の早期化や属人化リスクの低減など、金額へ換算しにくい効果は、ROIの計算とは別にKPIとして確認します。
投資対効果を考えるときは「削減」と「改善」の両方を見る
経理代行の効果を考える際、「人件費がどれだけ減るか」という削減効果だけに注目してしまうケースがあります。
しかし、実際には改善効果まで含めて判断することが重要です。
例えば、次のように整理すると分かりやすくなります。
| 削減できるもの | 改善が期待できるもの |
|---|---|
| 残業時間 | 月次決算の早期化 |
| 採用活動の負担 | 経営判断のスピード向上 |
| 教育コスト | 社長が本業へ集中できる時間 |
| 引き継ぎコスト | 属人化しにくい経理体制 |
| 入力作業の負担 | 業務品質の安定 |
左側は比較的数字で把握しやすい効果ですが、右側は金額へ換算しにくいものの、会社の成長へ大きく影響する改善効果です。
経理代行を検討するときは、この両方を合わせて判断することが大切です。
経理代行によって期待できる改善効果の全体像については、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:経理代行で会社はどう変わる?導入効果を徹底解説
経理代行によって改善できることと、導入しても解決しにくいことについては、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:経理代行で改善できること・できないこととは?導入前に知っておきたいポイント
モデルケースで経理代行の投資対効果を計算
ここでは、経理代行を月額15万円で利用する会社を例に計算します。
前提条件
- 月額料金:15万円
- 年間利用料金:180万円
- 初期設定費用:20万円
- 年間投資額:200万円
導入によって、次の効果が得られたと仮定します。
- 経営者の経理時間を毎月15時間削減
- 経営者の時間単価を1万円と設定
- 残業や修正作業にかかる費用を月3万円削減
- 当年度の採用費50万円を回避
経営者の時間を金額へ換算する
経営者の時間価値は、次の式で計算します。
削減時間×時間単価=時間価値
毎月15時間を削減し、時間単価を1万円とすると、
15時間×1万円=月15万円
年間では、
15万円×12か月=180万円
となります。
年間で得られた効果を計算する
年間で得られた効果は、実際に支出を減らせるものと、経営者が本業へ使えるようになった時間の価値に分けて確認します。
| 種類 | 項目 | 年間金額 |
|---|---|---|
| 直接的な費用削減 | 残業・修正作業の削減 | 36万円 |
| 直接的な費用削減 | 採用費の回避 | 50万円 |
| 時間価値 | 経営者が本業へ振り向けられる時間 | 180万円 |
| 合計 | 266万円 |
直接的な費用削減額は86万円です。残りの180万円は、経営者が経理業務から解放され、本業へ振り向けられる時間を金額に換算した評価額です。
この場合の簡易的なROIは、次のとおりです。
(266万円-200万円)÷200万円×100=33%
この33%には、実際の費用削減額だけでなく、経営者の時間価値も含まれています。そのため、会社の利益や預金残高が直接66万円増えることを意味するものではありません。
このモデルケースでは、年間投資額200万円に対し、直接的な費用削減と時間価値を合わせると、投資額を上回る効果が得られた計算になります。
なお、直接的な費用削減額86万円だけで計算した場合、年間投資額200万円を下回ります。
この計算で投資額を上回るのは、経営者が経理業務から解放された時間を180万円の価値として含めているためです。確保した時間を営業活動や経営判断などへ有効に活用できるかどうかが、実際の投資対効果を左右します。
ただし、採用費の回避は毎年発生するとは限りません。ROIを計算する際は、その年に実際に発生した効果だけを含めることが重要です。
経理担当者を採用した場合と年間コストを比較
経理代行と採用を比較する場合は、給与だけでなく、会社が実際に負担する費用全体を確認します。
以下は、同程度の経理業務を担当すると仮定した初年度のモデルケースです。
| 費用項目 | 経理担当者を採用 | 経理代行を利用 |
|---|---|---|
| 給与・利用料金 | 360万円 | 180万円 |
| 社会保険料・福利厚生費 | 60万円 | ― |
| 採用費 | 50万円 | ― |
| 教育・設備・初期準備 | 20万円 | 20万円 |
| 初年度合計 | 490万円 | 200万円 |
この例では、初年度の差額は290万円です。
ただし、社員を採用した場合と経理代行では、担当できる業務範囲や社内での役割が同じとは限りません。単純な金額差だけではなく、どの業務を誰が担当するのかを揃えたうえで比較する必要があります。
何時間削減できれば元が取れる?損益分岐点の考え方
経理代行の利用料金を、時間削減だけで回収できるか確認する場合は、次の式を使います。
損益分岐となる削減時間=(月額料金-毎月の直接削減額)÷時間単価
例えば、
- 月額料金:15万円
- 残業代や修正費の直接削減額:月3万円
- 経営者の時間単価:1万円
とすると、
(15万円-3万円)÷1万円=12時間
となります。
この場合、毎月12時間以上の経理時間を削減できれば、直接削減額と時間価値の合計が月額料金と同程度になります。
時間単価は、単純な給与額ではなく、その人が本来担当すべき営業、経営判断、採用などの業務価値を踏まえて設定します。
金額にしにくい効果は導入前後のKPIで確認する
すべての改善効果を金額へ換算できるとは限りません。その場合は、導入前後の数値を比較します。
| 確認項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 経営者の経理作業時間 | 月20時間 | 月5時間 |
| 月次資料の完成時期 | 翌月25日 | 翌月15日 |
| 修正・手戻り時間 | 月6時間 | 月2時間 |
| 特定担当者しか分からない業務 | 5業務 | 1業務 |
このように、時間、日数、修正回数、属人化している業務数などを記録しておくと、金額へ換算できない改善も確認しやすくなります。
導入前後の変化や具体的な事例については、以下の記事も参考になります。
合わせて読みたい:経理代行の成功事例5選 課題別に解説
投資対効果を高めるために大切なこと
経理代行は、導入するだけで高い投資対効果が得られるわけではありません。
同じサービスを利用していても、「経理担当者の負担が大きく減った」という会社もあれば、「思ったほど効果を感じられなかった」という会社もあります。
その違いは、導入後の運用方法にあることが少なくありません。
投資対効果は会社ごとの条件で変わる
経理代行の投資対効果は、業務量や現在の人員、経営者が経理に使っている時間によって異なります。
そのため、他社の削減額をそのまま自社へ当てはめるのではなく、導入前の業務時間とコストを記録し、自社の数値で計算することが重要です。
自社が経理代行に向いているかを確認したい方は、以下の記事をご覧ください。
合わせて読みたい:経理代行が向いている会社・向いていない会社とは?導入判断のポイントを解説
業務範囲を明確にする
まず重要なのは、「何を依頼するのか」を明確にすることです。
例えば、
- 記帳だけ依頼したいのか
- 請求書発行まで依頼したいのか
- 支払予定表や振込データの作成まで依頼したいのか
- 給与計算も依頼したいのか
によって、得られる効果は大きく変わります。
導入前に業務範囲を整理しておくことで、期待していた効果とのギャップが生じにくくなります。
社内の運用ルールも見直す
経理代行を導入しても、
- 領収書の提出が遅い
- 必要な資料が集まらない
- 承認フローが複雑なまま
では、本来の効果を十分に発揮できません。
経理代行は「業務を任せるサービス」であると同時に、「経理体制を整える仕組み」でもあります。
社内の運用方法もあわせて見直すことで、より高い改善効果が期待できます。
合わせて読みたい:中小企業の経理体制の作り方|採用・外注・経理代行の選び方
まとめ|ROIと導入前後の数値で投資対効果を確認する
経理代行の投資対効果を確認する際は、月額料金だけではなく、年間投資額と導入によって得られた効果を比較することが重要です。
年間投資額には、経理代行の利用料金だけでなく、初期設定費用や追加料金も含めます。一方、得られた効果には、残業代や修正作業の削減額、採用費の回避額、経営者や社員が経理業務から解放された時間の価値などを含めます。
そのうえで、
ROI(%)=(年間で得られた効果-年間投資額)÷年間投資額×100
の式を使い、投資額に対してどれだけの効果が得られたかを確認します。
月次決算の早期化や属人化リスクの低減など、金額へ換算しにくい効果については、導入前後の作業時間、完成日数、手戻り時間、属人化している業務数などをKPIとして比較しましょう。
他社の事例や削減額をそのまま当てはめるのではなく、自社の導入前の時間とコストを記録し、自社の数値で検証することが大切です。
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