鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理にAIを導入するための基本事項

経理にAIを導入するための基本事項を解説する記事の表示画像
目次

AI導入は「ツール選び」よりも「運用設計」が重要

AIを経理に導入する際、 多くの企業が最初にツール選びから始めますが、 実務では “どのように使うか”の設計が最も重要 です。

  • どの業務に使うのか
  • どの情報をAIに渡してよいのか
  • 誰が使うのか
  • どこまでAIに任せるのか

これらを曖昧にしたまま導入すると、 「便利そうだけど使われない」「怖くて使えない」という状態になります。

1. まずは“AIを使ってよい業務”を決める

AI導入の最初のステップは、 「AIを使ってよい業務」と「使ってはいけない業務」を切り分けること」 です。

AIを使いやすい業務

  • 不明取引の用途推定
  • 経費精算の判断補助
  • 月次チェックの優先順位付け
  • 問い合わせ文・依頼文の作成
  • 月次報告書のドラフト作成

AIを使うべきではない業務

  • 税務判断
  • 会計基準の適用判断
  • 社内ルールの例外処理
  • 個人情報を含むデータの直接入力

“AIに任せる範囲”を明確にすることで、 現場が安心して使えるようになります。

2. AIに渡してよい情報の範囲を決める

「入力禁止情報リスト」を作るのが現実的

AI導入で最も重要なのは、 「AIに入力してはいけない情報」を明確にすること です。

例:入力禁止情報リスト

  • 氏名・住所・電話番号
  • 銀行口座番号
  • 給与・報酬情報
  • 取引先名(必要に応じて伏せる)
  • 契約書の全文
  • 社外秘のプロジェクト名

このリストを作るだけで、 現場の不安が大きく減り、AIが使われやすくなります。

3. 経理部門が最初にやるべきは「プロンプトの標準化」

AI導入で最も効果が出るのは、 プロンプト(AIへの指示文)を標準化すること です。

例:標準プロンプト

  • 「この取引の用途候補を3つ挙げてください」
  • 「この経費の分類理由を簡潔に説明してください」
  • 「この仕訳のチェックポイントを列挙してください」
  • 「この文章を社内向けに丁寧なトーンで書き直してください」

標準プロンプトがあると、

  • 誰が使っても同じ品質
  • 教育コストが下がる
  • AIの回答が安定する

というメリットがあります。

4. AIを使う担当者を限定する

最初は“少人数の運用”が最適

AI導入は、いきなり全社展開すると失敗しやすいです。

推奨ステップ

  1. 経理の中で2〜3名の“AI担当者”を決める
  2. 1〜2ヶ月間、限定的に運用
  3. 使い方・ルール・改善点を整理
  4. 他部署へ展開

このプロセスを踏むことで、 現場の混乱を最小限にしながら導入できる

5. AIの回答をそのまま使わないための“二段階チェック”

AI導入で最も避けたいのは、 「AIが言っているから正しいだろう」という思考停止 です。

そのため、 AI → 担当者 → 経理の最終確認 という二段階チェックを組み込むのが現実的です。

例:経費精算の場合

  • 営業担当:AIの候補を参考に科目を選ぶ
  • 経理担当:月次で妥当性を確認する

AIは“判断の補助”であり、 最終判断は人が行う前提で設計することが重要です。

6. AI導入後は「改善サイクル」を回す

AIは“導入して終わり”ではなく、育てるもの

AIは使えば使うほど、

  • よく使うプロンプト
  • 誤りやすいパターン
  • 現場のつまずき
  • 社内ルールの例外

が見えてきます。

改善サイクル

  1. 現場の質問・つまずきを収集
  2. プロンプトを改善
  3. 入力禁止情報リストを更新
  4. 社内ルールをAI向けに再整理
  5. 月次で運用レビュー

このサイクルを回すことで、 AIが“現場に馴染んだツール”に育っていきます。

まとめ:AI導入は「技術」ではなく「運用設計」が成功の鍵

AIを経理に導入する際に重要なのは、 ツールの性能よりも 運用の設計 です。

  • AIを使う業務を決める
  • 入力禁止情報リストを作る
  • 標準プロンプトを整備する
  • はじめは少人数で運用する
  • 二段階チェックを組み込む
  • 改善サイクルを回す

これらを整えることで、 AIは経理の負担を大きく減らし、 「判断」「改善」「提案」に時間を使える組織」 に変わります。

経理代行サブスクサービス「まるまる経理」の詳細はこちら