鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理DXはペーパーレス化から|紙を減らす進め方と実践例

経理DXを紙ゼロ化から始める中小企業の実践例を解説する記事の表示画像
目次

はじめに

「経理DXに取り組みたいけれど、何から始めればよいのか分からない」

このような中小企業では、最初の取り組みとしてペーパーレス化がおすすめです。

経理DXというと、クラウド会計や新しいシステムの導入を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、紙の書類が多いままでは、どれだけ便利なシステムを導入しても手作業が残り、期待した効果を得られないことがあります。

請求書を紙で受け取り、領収書を紙で提出し、承認も紙で回覧している状態では、書類を集める・探す・保管するといった作業に多くの時間がかかります。

そのため、多くの企業ではシステムを導入する前に、まず紙中心の業務を見直すことから経理DXを進めています。

この記事では、紙が多い経理で起こりやすい課題と、ペーパーレス化を進める方法、実際の改善事例を紹介します。


なぜペーパーレス化が経理DXの第一歩なのか

経理DXの目的は、単に紙をなくすことではありません。

本来の目的は、経理業務の流れを見直し、より効率的で正確な仕組みを作ることです。

その中でも、最初に改善しやすいのが「紙」で運用している業務です。

例えば、

  • 請求書を紙で受け取っている
  • 領収書を紙で提出している
  • 契約書を紙で保管している
  • 支払承認を書類で回覧している

このような運用では、書類を回収する時間や、保管場所を探す時間、担当者へ確認する時間が発生します。

紙そのものが悪いわけではありませんが、紙を前提とした業務では、後からシステムを導入しても手作業が残りやすくなります。

そのため、経理DXでは「どのシステムを導入するか」よりも、紙で行っている業務を見直すことが最初の改善につながります。

紙中心の運用とペーパーレス化では、経理業務に次のような違いがあります。

項目紙中心の運用ペーパーレス化後
請求書の受け取り郵送・紙で管理PDFや電子データで受領
領収書の提出紙をまとめて提出スマートフォンから提出
書類の保管キャビネットや担当者管理クラウド上で一元管理
情報共有書類を回覧する必要な人がすぐ確認できる
資料検索保管場所を探すキーワード検索ですぐ見つかる

このように、紙を減らすだけでも経理担当者の負担を軽減しやすくなります。


紙中心の経理で起こりやすい5つの問題

ペーパーレス化を進める前に、紙中心の運用でどのような問題が起きているのか確認してみましょう。

よくある課題起こりやすい問題改善の方向性
請求書が紙で届く回収に時間がかかる電子データで受領する
領収書を紙で提出する提出漏れ・紛失が起きるスマートフォンで提出する
保管場所がバラバラ必要な資料が見つからない保存場所を統一する
承認を書類で回覧する承認待ちが発生するデジタル承認へ変更する
紙とデータが混在する二重管理になる運用ルールを統一する

これらは、多くの中小企業で見られる課題です。

実際には、「入力作業が大変」というよりも、書類を集めたり探したりする時間が業務全体を遅らせているケースも少なくありません。

経理DXが思うように進まない企業では、このような紙中心の運用が原因になっていることがあります。

合わせて読みたい:経理DXが進まない会社の共通点とは?失敗原因と解決策

合わせて読みたい:中小企業の経理体制の作り方|採用・外注・経理代行の選び方


実践事例① 請求書の受け取り方法を統一した会社

従業員15名規模の企業では、取引先ごとに紙・メール・FAXで請求書を受け取っていました。

そのため、月末になると経理担当者が各部署や取引先へ未提出の請求書を確認し、回収してから入力作業を始める状況になっていました。

さらに、紙で届いた請求書はスキャンして保存し、メールで届いた請求書は別フォルダへ保管するなど、管理方法も統一されていませんでした。

そこで、取引先へ依頼して請求書をPDFで受け取る運用へ変更し、クラウドストレージへ保存するルールを整備しました。

その結果、

  • 回収作業が減った
  • 必要な請求書をすぐ探せるようになった
  • 月次処理を早く始められるようになった

など、日々の経理業務がスムーズになりました。

重要なのは、新しいシステムを導入したことではなく、受け取り方法を統一したことです。


実践事例② 経費精算をデジタル化した会社

従業員30名規模の企業では、営業担当者が出張先で受け取った領収書を月末にまとめて提出していました。

そのため、

  • 提出漏れが発生する
  • 内容確認で差し戻しが増える
  • 月末に経理業務が集中する

といった課題がありました。

そこで、スマートフォンから領収書を撮影して提出できる経費精算システムを導入したところ、領収書を受け取ったタイミングで提出できるようになりました。

その結果、提出漏れが減り、経理担当者も月末に大量の領収書を処理する必要がなくなりました。

このように、紙を減らすことで作業を分散できる点も、ペーパーレス化の大きなメリットです。

実践事例③ 承認方法を見直した会社

ある企業では、支払承認を紙の書類で回覧していました。

請求書を印刷し、担当者から管理職、経営者へと順番に回していたため、

  • 承認者の出張や休暇で処理が止まる
  • 誰のところで止まっているか分からない
  • 月末に承認待ちが集中する

といった課題が発生していました。

そこで、支払承認をクラウド上で行える仕組みに変更し、承認状況をリアルタイムで確認できるようにしました。

その結果、

  • 外出先からでも承認できるようになった
  • 承認待ちが減った
  • 支払処理がスムーズになった
  • 承認履歴が残るようになった

など、経理担当者が承認状況を確認する手間も大きく減りました。

ペーパーレス化は、紙をなくすことだけでなく、業務全体の流れを見直すきっかけにもなります。


今日から始めるペーパーレス化3つの手順

ペーパーレス化は、一度にすべての業務を変える必要はありません。

まずは、取り組みやすいところから改善することが成功への近道です。

経理DX全体の進め方を確認したい方は、導入の流れをまとめた記事も参考になります。

合わせて読みたい:経理DXは何から始める?中小企業の導入手順と成功事例

1. 書類の受け取り方法を見直す

最初に取り組みたいのは、請求書や領収書などの受け取り方法です。

例えば、

  • 請求書はPDFで受け取る
  • 領収書はスマートフォンで提出する
  • 契約書は電子契約を活用する

といった方法があります。

紙を集める時間が減るだけでも、経理担当者の負担は大きく軽減されます。


2. 保存場所を統一する

次に取り組みたいのが、資料の保存方法です。

請求書はメール、領収書は紙、契約書は担当者のパソコンという状態では、必要な資料を探すだけでも時間がかかります。

クラウドストレージなどを活用し、

  • 保存場所
  • フォルダ構成
  • ファイル名

などのルールを統一しましょう。

重要なのは、ツールではなく誰でも同じルールで保存できることです。

証憑管理のルールも合わせて見直すことで、さらに運用しやすくなります。

合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法


3. 承認フローを整理する

書類をデジタル化しても、承認フローが複雑なままでは業務は止まってしまいます。

例えば、

  • 承認者が多すぎる
  • 承認期限が決まっていない
  • 不在時の代理承認がない

といった状態では、システムを導入しても効果は限定的です。

誰が、いつまでに承認するのかを明確にし、必要に応じてクラウド上で承認できる仕組みを整えることで、紙だけでなく待ち時間も減らすことができます。

クラウド会計を導入する場合も、こうした運用ルールを整えたうえで活用すると、より効果を実感しやすくなります。

合わせて読みたい:クラウド会計を導入すると経理はどう変わる?導入メリットを解説


ペーパーレス化で失敗しないための3つのポイント

ペーパーレス化は、紙をなくすこと自体が目的ではありません。

次の3つを意識すると、現場にも定着しやすくなります。

ポイント重要度理由
一度にすべてを変えない★★★現場の負担を抑えられる
業務ルールを先に決める★★★運用が定着しやすくなる
定期的に運用を見直す★★☆改善を継続しやすくなる

ペーパーレス化は、一度導入して終わりではありません。

実際の運用を見ながら改善を重ねることで、経理DXの効果をより高められます。

合わせて読みたい:銀行データ自動連携とは?月次決算が早くなる仕組みを解説


よくある質問

Q1. ペーパーレス化は何から始めるのがおすすめですか?

まずは、請求書や領収書など、日常的に扱う書類の受け取り方法を見直すことをおすすめします。

紙の書類を減らすだけでも、回収や保管にかかる時間を削減しやすくなります。


Q2. ペーパーレス化すれば経理DXは成功しますか?

ペーパーレス化は経理DXの第一歩ですが、それだけで十分ではありません。

業務ルールや承認フローも合わせて見直すことで、より高い効果が期待できます。


Q3. 紙の書類をすべてなくす必要がありますか?

必ずしもすべてを電子化する必要はありません。

まずは改善効果が大きい業務から取り組み、段階的に紙を減らしていく方法がおすすめです。


まとめ

経理DXを進める際は、高額なシステムを導入する前に、紙中心の業務を見直すことが重要です。

請求書や領収書の受け取り方法、資料の保存場所、承認フローなどを整理するだけでも、経理担当者の負担を減らし、業務を効率化しやすくなります。

実際に成果を上げている企業も、最初から大きなシステムを導入したわけではありません。

紙を減らすという小さな改善から始め、その積み重ねによって経理DXを定着させています。

経理DX全体の進め方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

合わせて読みたい:中小企業の経理DX|導入のための実践7ステップ


経理DXや経理業務の効率化でお悩みなら

「紙の書類が多く、経理業務に時間がかかっている」「ペーパーレス化を進めたいが、何から始めればよいか分からない」という企業も少なくありません。

まるまる経理では、現在の経理業務をヒアリングしたうえで、紙中心の運用からの改善や業務フローの見直し、経理DXの進め方をご提案しています。

  • 紙の請求書を減らしたい
  • 経費精算を効率化したい
  • 承認フローを見直したい
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このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

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経理代行の費用や料金相場について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

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