鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理DXが進まない会社の共通点とは?失敗原因と解決策

経理DXが進まない原因とは?承認フローや属人化など中小企業に多い課題を解説する記事の表示画像

「クラウド会計を導入したのに、思ったほど業務が楽にならない」「経理DXを進めているつもりなのに、現場がなかなか変わらない」。

このような悩みを抱えている中小企業は少なくありません。

経理DXが思うように進まない理由は、システムの性能や機能だけではありません。実際には、日々の業務フローや運用ルールに原因があるケースが多く見られます。

例えば、資料の提出方法が部署ごとに異なっていたり、承認ルールが複雑だったりすると、どれだけ便利なシステムを導入しても十分な効果は発揮できません。

この記事では、経理DXが進まない会社に共通する5つの原因と、改善へ向けた考え方を分かりやすく解説します。


目次

なぜ経理DXは思うように進まないのか

経理DXというと、「新しいシステムを導入すれば業務が効率化する」と考えられがちです。

しかし、実際にはシステムを導入しただけで経理業務が大きく変わることは多くありません。

経理DXに成功している企業では、まず現在の業務フローを見直し、改善すべき課題を整理してからデジタル化を進めています。

一方で、経理DXが進まない企業には、次のような共通点があります。

よくある原因起こる問題改善の方向性
資料の受け取り方法が統一されていない業務が滞る提出ルールを統一する
例外対応のルールが決まっていない判断が属人化するルールを明文化する
承認フローが長い処理が止まりやすい承認経路を見直す
古い業務フローが残っている二重作業が発生する不要な作業を見直す
担当者へ業務が集中している引き継ぎが難しい業務を標準化する

ここからは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。


原因① 資料の受け取り方法が統一されていない

経理DXが進まない企業では、最初の段階である「資料の受け取り」に課題を抱えているケースが少なくありません。

例えば、

  • 請求書はメールで届く
  • 領収書は紙で提出される
  • PDFはチャットで送られてくる

といったように、提出方法が部署や担当者ごとに異なる状態です。

このような状況では、経理担当者は資料を集めるだけでも多くの時間を費やします。

「請求書は届いているか」「領収書は提出されたか」を確認する作業が増え、システムへ入力する前の段階で業務が止まってしまうのです。

月次決算が遅れる原因は入力作業だと思われがちですが、実際には資料回収に時間がかかっていることが大きな要因になっている企業も少なくありません。

こうした課題を解決するには、まず資料の提出方法や保存場所を統一することが重要です。

紙の書類が多い企業では、ペーパーレス化を進めることで、資料回収から保管までの流れを大きく改善できます。

合わせて読みたい:経理DXはペーパーレス化から|紙を減らす進め方と実践例


原因② 例外対応のルールが決まっていない

経理業務では、通常の処理だけでなく、例外的な対応が発生することも少なくありません。

例えば、

  • 添付資料が不足している
  • 請求金額に誤りがある
  • 取引先ごとに書類の形式が異なる

といったケースです。

こうした場面で判断基準が決まっていないと、その都度担当者や上司へ確認することになり、処理が止まりやすくなります。

さらに、担当者によって対応方法が異なると、同じようなケースでも毎回判断が変わり、業務の属人化につながります。

例えば、

  • 証憑が不足している場合は差し戻す
  • 一定金額以上は責任者へ確認する
  • 修正が必要な場合の連絡方法を統一する

といったルールを事前に決めておくだけでも、判断に迷う場面を減らすことができます。

経理DXでは、通常業務だけでなく、例外が発生した場合の対応ルールまで整備することが重要です。

原因③ 承認フローが長すぎる

経理DXが進まない会社では、承認の流れが長く、途中で処理が止まりやすいことがあります。

例えば、経費精算や請求書処理で、

  • 担当者確認
  • 上長承認
  • 部門長承認
  • 経理確認
  • 最終承認

というように確認者が多いと、どこか一か所で承認が止まるだけで全体の処理が遅れます。

特に、承認期限が決まっていない場合や、承認者が不在のときの代理ルールがない場合は、経理側で何度も確認や催促を行うことになります。

この状態では、たとえ申請や入力をシステム化しても、最後の承認で止まってしまい、DXの効果を実感しにくくなります。

経理業務は「入力する時間」だけでなく、「待つ時間」にも大きく影響されます。

承認フローを見直す際は、

  • 本当に必要な承認者だけに絞る
  • 承認期限を決める
  • 代理承認のルールを作る
  • 一定金額以下は簡略化する

といった対応を検討するとよいでしょう。

月次決算を早めたい場合は、承認フローとあわせて銀行データや入出金情報の取得方法も見直すと、より効果を実感しやすくなります。

合わせて読みたい:銀行データ自動連携とは?月次決算が早くなる仕組みを解説


原因④ 以前の業務フローが残っている

新しいシステムを導入しても、以前のやり方が残っていると、経理DXはうまく進みません。

よくあるのが、

  • システムに入力したあと、Excelにも転記している
  • 電子データで受け取った請求書を印刷して確認している
  • クラウド上で共有しているのに、メールでも同じ資料を送っている

といった二重管理です。

この状態では、便利になるどころか、作業が増えてしまいます。

「クラウド会計を入れたのに楽にならない」と感じる会社の中には、新しい仕組みと古いやり方を同時に残しているケースも少なくありません。

経理DXでは、「何を導入するか」だけでなく、「どの作業をやめるか」も重要です。

今までの確認方法や管理方法をすべて残したままでは、デジタル化の効果は限定的になります。

クラウド会計を活用する場合も、単にソフトを変えるのではなく、入力・確認・共有の流れまで見直すことが大切です。

合わせて読みたい:クラウド会計を導入すると経理はどう変わる?導入メリットを解説


原因⑤ 担当者へ業務が集中している

経理DXが進まない会社では、特定の担当者に業務が集中していることがあります。

経理は細かな判断が多いため、

  • どの勘定科目で処理するか
  • どこに請求書を保存するか
  • どの取引先は例外対応が必要か
  • 月次処理をどの順番で進めるか

といった情報が、担当者の頭の中だけに蓄積されやすい業務です。

この状態では、いくらシステムを導入しても、設定変更や例外対応、トラブル対応がその担当者に集中してしまいます。

担当者が休んだり退職したりすると、業務が止まるリスクも高くなります。

経理DXの目的は、単に作業を早くすることではありません。誰が担当しても同じように処理できる体制を作ることも重要です。

そのためには、

  • 業務手順を文書化する
  • 処理ルールを統一する
  • データの保存場所を共有する
  • 月次業務の流れを見える化する

といった取り組みが必要です。

属人化が強い会社では、DXとあわせて業務の標準化にも取り組むことで、経理体制が安定しやすくなります。

合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法


経理DXが進まない原因への改善ポイント

経理DXが進まない原因を整理すると、問題はツールそのものではなく、業務ルールや運用設計にあることが分かります。

まずは、自社でどの原因に当てはまるのかを整理し、それぞれに応じた改善策を講じることが大切です。

原因改善策
資料回収がバラバラ提出方法・提出期限・保存場所を統一する
例外対応が属人化している判断ルールや対応基準を明文化する
承認フローが長い承認者・承認期限・代理承認のルールを見直す
古い業務フローが残っている二重管理をやめ、不要な作業を廃止する
担当者へ業務が集中している業務マニュアルを整備し、標準化を進める

上記のように、まずは自社でどの課題に当てはまるかを整理し、原因に応じた改善策から取り組むことが大切です。
具体的な導入手順については、こちらの記事で詳しく解説しています。

合わせて読みたい:経理DXは何から始める?中小企業の導入手順と成功事例


よくある質問

Q1. 経理DXが進まない一番の原因は何ですか?

多くの場合、原因はシステムそのものではなく、業務ルールや運用方法にあります。

資料の提出方法が統一されていない、承認フローが長い、例外対応のルールがないといった状態では、どれだけ便利なシステムを導入しても効果を実感しにくくなります。

Q2. 経理DXが進まない場合、まず何を見直すべきですか?

まずは、資料の受け取り方法と承認フローを見直すことをおすすめします。

経理業務は、入力作業よりも「資料を集める時間」や「承認を待つ時間」に影響されることが多いためです。

そのうえで、不要な二重管理や担当者依存がないか確認すると、改善点が見つかりやすくなります。

Q3. 経理DXがうまく進まない会社でも改善できますか?

改善できます。

大切なのは、一度に大きく変えようとしないことです。

まずは資料回収のルールを整える、承認期限を決める、保存場所を統一するなど、小さな改善から始めることで、無理なくDXを進められます。


まとめ

経理DXが進まない会社には、いくつかの共通点があります。

  • 資料の受け取り方法が統一されていない
  • 例外対応のルールが決まっていない
  • 承認フローが長すぎる
  • 以前の業務フローが残っている
  • 担当者へ業務が集中している

これらは、どれも大きな失敗というより、日々の業務の中にある小さなズレが積み重なって起きるものです。

経理DXを進めるうえで大切なのは、システムだけでなく、業務の進め方そのものを見直すことです。

原因を把握したうえで、自社に合った改善を少しずつ進めることで、経理DXは定着しやすくなります。

経理DX全体の進め方を確認したい方は、こちらの記事も参考にしてください。

合わせて読みたい:中小企業の経理DX|導入のための実践7ステップ

経理DXの進め方でお悩みなら

「経理DXを進めたいけれど、現場に定着しない」「クラウド会計を導入したのに思ったほど業務が楽にならない」と感じている企業も少なくありません。

まるまる経理では、現在の経理業務をヒアリングしたうえで、業務フローの見直しやクラウド会計の活用、資料回収ルールの整備など、それぞれの企業に合った経理DXの進め方をご提案しています。

  • 月次決算が遅れている
  • 資料回収に時間がかかっている
  • 経理業務が属人化している
  • クラウド会計を活用しきれていない

このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

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