「経理担当者が2人いるが、どのように業務を分ければよいのか分からない」
「一人経理なので、すべての業務が一人に集中している」
「もう一人採用する前に、今の人数で業務を分担できないだろうか」
経理体制を考えるときは、「何人必要か」だけでなく、その人数で誰が何を担当し、誰が確認するかを決めることが重要です。
同じ2人体制でも、
- 2人がそれぞれ別の仕事を抱えている会社
- 1人が処理し、もう1人が確認できる会社
- お互いの業務を代替できる会社
では、経理業務の安定性が大きく異なります。
また、すべての業務を社内担当者だけで行う必要もありません。
記帳や請求、支払データの作成など、手順を決めやすい業務を外部へ任せ、社内では確認や承認に集中する方法もあります。
この記事では、1人・2人・3人体制それぞれの経理業務の分け方と、社内に残したい業務、外部へ任せやすい業務を整理します。
経理担当者そのものの人数を検討している場合は、以下の記事をご覧ください。
合わせて読みたい:経理担当者は何人必要?従業員数別の目安と経理体制を解説
経理の業務分担は「処理・確認・承認」で考える
経理業務を分担するときは、単純に、
- Aさんは売上
- Bさんは支払
- Cさんは月次決算
と業務ごとに担当者を決めるだけでは十分ではありません。
経理業務には、大きく次の4つの役割があります。
| 役割 | 主な内容 |
|---|---|
| 実務処理 | 記帳、請求書発行、支払データ作成、経費処理など |
| 確認・レビュー | 処理内容、残高、未処理事項、月次数値などの確認 |
| 承認・判断 | 支払の最終承認、例外処理、経営上の判断 |
| 専門判断 | 税務や複雑な会計処理など、専門知識が必要な事項 |
例えば支払業務であれば、
請求書を確認する
↓
支払予定を作る
↓
振込データを作る
↓
内容を確認する
↓
最終承認する
という複数の工程があります。
同じ人が複数の工程を担当することはありますが、特に資金が動く業務では、実務処理と最終承認を分けておくことが重要です。
経理担当者が何人いるかにかかわらず、まず「誰が処理するか」「誰が確認するか」「誰が承認するか」を整理すると、必要な役割分担を考えやすくなります。
経理1人体制の業務分担
一人経理の場合、日々の処理から月次決算まで、一人の担当者へ業務が集中しやすくなります。
例えば、
- 記帳
- 請求書発行
- 入金確認
- 支払予定作成
- 経費精算
- 売掛金・買掛金管理
- 月次締め
を一人で担当しているケースです。
業務量そのものは一人で処理できても、問題になりやすいのは、処理する人と確認する人が同じになりやすいことです。
1人体制では承認まで一人で完結させない
例えば、次のように役割を分けます。
経理担当者
- 記帳・証憑整理
- 請求書作成
- 入金確認
- 支払予定作成
- 振込データ作成
- 月次資料の作成
経営者・社内承認者
- 支払の最終承認
- 例外的な取引の判断
- 月次数値の確認
必要に応じて外部
- 記帳などの定型業務
- 月次残高の確認
- 会計処理のレビュー
一人経理だからといって、処理から最終承認まですべて一人で完結させる必要はありません。
特に支払業務では、振込データを作る人と最終承認する人を分けることで、誤った支払いや確認漏れに気付きやすくなります。
外部を「2人目の機能」として使う方法もある
一人経理の業務量が増えてきた場合でも、必ずしも社員をもう一人採用する必要はありません。
例えば、
社内に残す業務
- 承認
- 経営判断
- 例外対応
- 各部署への確認
外部へ任せる業務
- 記帳
- 請求処理
- 支払データ作成
- 経費処理
- 残高確認の準備
という分け方もできます。
社内担当者がすべての実務を抱えるのではなく、外部へ定型業務を移すことで、確認や社内調整に時間を使える体制を作ります。
経理2人体制の業務分担
経理担当者が2人になると、実務と確認を分けやすくなります。
ただし、
「Aさんしか売掛金が分からない」
「Bさんしか支払業務が分からない」
という状態では、2人いても属人化は残ります。
2人体制では、
「主担当+副担当」
と
「処理+レビュー」
の2つを意識します。
例えば、
Aさん
- 請求・売掛金の主担当
- 記帳の処理
- 支払業務の確認
Bさん
- 支払・買掛金の主担当
- 記帳の確認
- 請求業務の副担当
といった分け方です。
重要なのは、Aさんが不在の場合でもBさんが最低限対応でき、Bさんが不在の場合もAさんが業務を引き継げる状態にしておくことです。
そのためには、
- 主担当と副担当を決める
- 業務手順を共有する
- ファイルや資料の保存場所を統一する
- 担当外の業務も定期的に確認する
- 例外処理の判断ルールを残す
といった運用が必要になります。
担当者ごとの業務固定が進んでいる場合は、人数の問題ではなく属人化の問題になっている可能性があります。
合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法
2人とも実務だけで手いっぱいなら外注を検討する
担当者が2人いても、二人とも入力や資料整理に追われていると、相互レビューや月次確認まで十分に行えないことがあります。
この場合は、
定型処理を外部へ移す
↓
社内2人が確認・月次・管理へ時間を使う
という役割分担も選択肢になります。
「2人いるから人手は足りている」と人数だけで判断せず、現在の担当者が何に時間を使っているのかまで確認することが重要です。
経理3人体制の業務分担
3人体制になると、実務担当だけでなく、レビューや進捗管理を担当する役割を設けやすくなります。
例えば、
Aさん
- 請求
- 売掛金
- 入金管理
Bさん
- 支払
- 買掛金
- 経費精算
Cさん
- 月次決算
- 残高レビュー
- 進捗管理
- A・Bが作成した内容の確認
といった分担です。
3人いるからといって、すべての業務を完全に分業する必要はありません。
むしろ、担当業務を固定しすぎると、その担当者が休職・退職した際に業務が止まる可能性があります。
主担当は明確にしつつ、支払、請求、月次決算など重要な業務については、副担当や代替手順も決めておきます。
1人・2人・3人体制の違い
人数ごとに特に意識したい点を整理すると、次のようになります。
| 体制 | 特に重視したいこと | 起こりやすい課題 |
|---|---|---|
| 1人 | 承認者を分ける・必要に応じ外部レビューを入れる | 処理と確認が同一人物になる |
| 2人 | 主担当+副担当・相互レビュー | 担当業務が固定される |
| 3人 | 実務とレビュー・進捗管理を分ける | 担当ごとの縦割り |
| 共通 | 手順・権限・バックアップを明確にする | 属人化 |
人数が増えるほど業務は細かく分けられます。
一方で、「一人一業務」のように人へ仕事を固定しすぎると、人数が増えても属人化は残ります。
重要なのは、
- 誰が処理するか
- 誰が確認するか
- 誰が承認するか
- 不在時は誰が対応するか
を業務ごとに決めることです。
経理の業務分担表に入れたい5項目
経理業務の分担を決める際は、Excelやスプレッドシートで一覧にすると整理しやすくなります。
最低限、次の5項目を入れます。
- 業務
- 実務担当
- レビュー担当
- 最終承認者
- 不在時の担当・外注先
例えば次のような形です。
| 業務 | 実務 | レビュー | 承認 | バックアップ・外注 |
|---|---|---|---|---|
| 請求書発行 | A | B | 部門責任者 | 外注可 |
| 入金確認 | A | B | ― | B |
| 支払データ作成 | B | A | 経営者 | 外注可 |
| 記帳 | A | B | ― | 外注可 |
| 月次残高確認 | B | A | 責任者 | 外部レビュー可 |
| 月次資料 | B | A | 経営者 | 外部支援可 |
一覧にすると、
- 一人に集中している業務
- 確認者がいない業務
- 不在時に止まる業務
- 外部へ移しやすい業務
が見えやすくなります。
業務を分ける前に、まず現在の担当者が行っている仕事を書き出し、「処理」「レビュー」「承認」「バックアップ」のどこが不足しているかを確認すると整理しやすくなります。
外注しやすい経理業務
経理業務の中でも、毎月繰り返し発生し、手順や完了条件を決めやすい業務は外部へ移しやすい傾向があります。
例えば、
- 記帳
- 証憑整理
- 請求書発行
- 入金確認
- 支払予定表の作成
- 振込データ作成
- 経費精算処理
- 売掛金・買掛金の管理
- 月次資料の作成準備
などです。
一方で、
- 支払の最終承認
- 資金繰りに関する意思決定
- 例外的な取引の社内判断
- 経営判断
などは、会社側に残すのが基本です。
また、税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士が担当する業務です。
経理代行で依頼できる業務そのものを確認したい場合は、以下の記事をご覧ください。
合わせて読みたい:経理代行で依頼できる業務一覧|どこまで任せられる?
「社内か外注か」ではなく、一つの経理チームとして考える
外注を利用する場合も、
社内の経理
と
外部の経理代行
を完全に分けて考える必要はありません。
例えば、
社内
- 最終承認
- 経営判断
- 各部署との調整
- 取引内容の確認
外部
- 日常的な経理処理
- 月次作業
- 残高確認
- 進捗管理
という形で、一つの経理チームとして役割を設計する方法があります。
社員を採用してすべての業務を社内へ持つ方法だけでなく、会社側でしか判断できない仕事を社内に残し、定型業務を外部チームへ任せる体制も選択肢です。
採用・外注・併用を含めて経理体制全体から検討したい場合は、以下の記事をご覧ください。
合わせて読みたい:中小企業の経理体制の作り方|採用・外注・経理代行の選び方
公認会計士の視点|「誰がやるか」より「誰が確認するか」まで決める
経理の業務分担を考えるときは、
「誰が入力するか」
だけでなく、
「誰がその処理を確認するか」
まで決めることが重要です。
例えば、担当者が3人いても、全員がそれぞれ自分の業務を処理するだけで、他の人が確認していなければ、ミスを発見する仕組みは十分とはいえません。
一方で、一人経理でも、
- 最終承認は経営者
- 定型業務は外部
- 月次処理には外部レビューを入れる
というように役割を分ければ、担当者一人ですべてを完結させない体制を作ることができます。
経理体制は、
人数 → 業務
の順番で考えるよりも、
業務 → 処理 → 確認 → 承認 → 必要人数
の順番で考える方が整理しやすくなります。
人数を増やす前に、現在の業務のどこに処理負担や確認不足があるのかを確認することが、経理体制を見直す第一歩です。
よくある質問
Q. 一人経理でも業務分担はできますか?
できます。
社内に経理担当者が一人しかいなくても、最終承認を経営者が担当したり、定型業務やレビューを外部へ任せたりすることで役割を分けられます。
ポイントは、一人で処理から最終承認まで完結する業務を必要以上に増やさないことです。
Q. 経理が2人の場合、業務別に完全に分けた方がよいですか?
完全に分ける必要はありません。
主担当は決めつつ、副担当も業務内容を把握しておく方が、休職・退職時にも対応しやすくなります。
また、互いの処理内容を確認できるようにすることで、2人体制でもレビュー機能を持たせられます。
Q. 外注するならどの業務から始めるとよいですか?
毎月繰り返し発生し、手順と完了条件を明確にしやすい業務から整理すると進めやすくなります。
例えば、
- 記帳
- 請求書作成
- 支払データ作成
- 経費処理
などです。
どの業務を社内に残すかも同時に決めておくと、外部との役割分担が曖昧になりにくくなります。
採用と外注そのものを比較したい場合は、以下の記事をご覧ください。
合わせて読みたい:経理を採用する?外注する?年間コスト・メリット・デメリットを比較
まとめ
経理担当者の業務分担は、単に「誰がどの仕事を担当するか」を決めるだけではありません。
重要なのは、
- 誰が実務を行うか
- 誰がレビューするか
- 誰が最終承認するか
- 担当者が不在のとき誰が対応するか
- 外部へ任せられる業務はないか
まで整理することです。
1人体制では、社内承認者や外部サービスを活用し、一人ですべてを完結させない体制を作ります。
2人体制では、主担当・副担当と相互レビューを意識します。
3人体制では、実務担当だけでなく、月次レビューや進捗管理を担う役割を設けることで、経理業務を安定させやすくなります。
人数を増やす前に、まず現在の経理業務を書き出し、処理・確認・承認・バックアップの4つに分けてみると、自社に必要な体制が見えやすくなります。
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