鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

経理を自社で行うか外注か、年間コスト差の要因

経理を自社で行う場合と外注する場合の年間コスト差が生まれる要因を解説する記事の表示画像
目次

経理を「自社でやるべきか」「外注すべきか」

多くの中小企業が悩むテーマです。

一見すると、

  • 自社でやれば安い
  • 外注は高い

というイメージがあります。

しかし実際には、 見えにくいコストやリスクが積み重なり、年間で大きな差が生まれる ことがあります。

この記事では、 自社経理と外注の年間コストを比較し、 どこで最も差がつくのかを分かりやすく解説します。

1. 自社で経理を行う場合の年間コスト

経理担当者を1名採用して自社で経理を回す場合、必要なコストは次の通りです。

給与(年300〜420万円)

— 経理担当者を雇う場合の“最も大きな固定費”

経理担当者の給与は、企業規模や地域によって差はありますが、 一般的には月25〜35万円が相場です。 この給与は、業務量が増えても減っても 毎月必ず発生する固定費 であり、 経営にとって最も重いコストになります。

社会保険料(会社負担:年50〜70万円)

— 給与以外に必ず発生する“見えにくいコスト”

給与の約15%前後が会社負担となるため、 実際の人件費は給与額よりも高くなります。 この社会保険料は、従業員を雇う限り避けられないため、 外注と比較すると 固定費の差が大きくなる要因 になります。

賞与(年30〜60万円)

— 年間コストを押し上げる“変動固定費”

賞与は業績によって変動しますが、 支給する企業が多いため、年間コストとして考慮する必要があります。 賞与は一時的な支出に見えて、実際には 年間の人件費を押し上げる要素 です。

採用コスト(年30〜100万円)

— 採用市場の競争が激しい今、無視できない費用

求人広告、紹介会社の手数料、面接工数など、 経理担当者を採用するには多くのコストがかかります。 特に経理は採用難易度が高く、 採用に数ヶ月かかるケースも珍しくありません。

教育コスト(年10〜30万円)

— 経理は“育成に時間がかかる職種”

経理は専門性が高いため、 新しい担当者が業務を覚えるまでに時間がかかります。 引き継ぎや育成にかかる時間は、 実質的には 既存社員の人件費を圧迫するコスト です。

退職リスクによる再採用コスト(不定)

— 最も見えにくく、最も重い“属人化コスト”

経理担当者が退職すると、 再び採用・教育コストが発生します。 さらに、引き継ぎが不十分だと 経理が止まるリスク もあります。

これは金額に表れにくいものの、 実際には非常に大きな負担です。

年間合計:400〜650万円が一般的

自社経理は、 固定費が大きく、属人化リスクが高い という特徴があります。

2. 経理を外注する場合の年間コスト

外注費用は依頼範囲によって大きく変わります。

記帳代行:月1〜3万円(年12〜36万円)

— 入力作業だけを外に出す“最小限の外注”

領収書や通帳を渡して入力だけ依頼するタイプです。 コストは安いものの、判断業務は含まれないため、 経理の負担が大きく残る ことが多いです。

一般的な経理代行:月5〜15万円(年60〜180万円)

— 入力+周辺業務を任せられる“部分的な外注”

請求書管理や支払データ作成など、 入力以外の作業も任せられることがあります。 ただし、業務範囲は会社によって大きく異なり、 経理の判断業務は含まれないことが多い です。

経理部アウトソース型:月20〜50万円(年240〜600万円)

— 経理部の機能を外部に持つ“フル外注”

経理の管理・改善・月次の精度向上など、 経理部に近い役割を担うタイプです。 自社で経理部を持つよりもコストを抑えつつ、 安定した品質を確保できる のが特徴です。

外注の特徴

  • 採用コスト:0円
  • 教育コスト:0円
  • 退職リスク:0円
  • 必要な範囲だけ依頼できる(柔軟性が高い)

外注は「高い」と思われがちですが、 固定費が発生しない点が大きなメリット です。

→ 経理は社員を採用する? それとも経理代行サービスに任せる?

3. 年間コストが最も変わるポイントは「人件費+属人化リスク」

① 人件費(給与+社会保険+賞与)

— 自社経理のコストの大半を占める“固定費の塊”

自社で経理担当者を雇う場合、 最低でも年間400万円前後の固定費が発生します。 これは、外注の年間60〜180万円と比べると、 2〜6倍の差 になることもあります。

② 属人化リスクによる追加コスト

— 外注には存在しない“見えない負担”

経理担当者が退職すると、 再採用・再教育・引き継ぎのダブルコストが発生します。 さらに、経理が止まると請求漏れ・支払遅延などのリスクも増えます。

外注の場合は、担当者が変わってもサービスは継続するため、 属人化による追加コストがゼロ です。

→ 経理の属人化はなぜ危ない?会社に起こるトラブルと対策

→ 経理の属人化を解消する方法5選

4. 年間コスト比較(モデルケース)

項目自社で経理外注(一般的な経理代行)
年間固定費400〜650万円60〜180万円
採用・教育コスト30〜130万円0円
退職リスク高いなし
業務の安定性担当者に依存サービスとして安定

年間で 200〜500万円以上の差 が出ることも珍しくありません。

5. コストだけでなく「経営の安定性」も変わる

外注のメリットはコストだけではありません。

  • 経理が止まらない(退職リスクゼロ)
  • 専門家が関与するためミスが減る
  • 月次が早くなるため経営判断がしやすい
  • 業務改善や効率化の提案が受けられる

自社で経理を抱える場合、 担当者のスキルに依存しやすく、 品質のばらつきや属人化リスクが避けられません。

→ 経理業務をまるごと任せても安心な理由

まとめ:年間コスト差は「人件費」と「属人化」で決まる

経理を自社で行うか外注するかで、年間コストは大きく変わります。

特に差がつくポイントは次の2つです。

  • 人件費(給与+社会保険+賞与)
  • 属人化リスクによる追加コスト

外注は「高い」と思われがちですが、 年間で見ると自社採用よりもコストを抑えられるケースが多いのが実態です。

経理体制を見直す際は、 月額ではなく年間コストで比較することが重要 です。

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