鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

現金残高と帳簿残高が合わない原因|差額が出たときの確認手順

現金残高と帳簿残高が合わない原因と差額の確認手順

「金庫にある現金を数えたら、会計ソフトの残高と合わない」

「現金出納帳では5万円あるはずなのに、実際に数えると4万8,000円しかない」

このような現金の差額が見つかったとき、金額だけを合わせるために修正仕訳を入れるのは避けたいところです。

現金残高が合わない背景には、経費の記帳漏れや売上の入力漏れ、金額の入力ミス、現金以外で支払った取引を現金として処理しているなど、さまざまな原因があります。

原因を確認しないまま帳簿残高だけを実際の現金に合わせると、元の取引が誤ったまま残り、翌月以降も差額が繰り返されることがあります。

この記事では、手元にある現金と帳簿上の現金残高が合わないときに考えられる原因と、差額を調べる順番を実務に沿って解説します。現金過不足が見つかった場合の仕訳例や、同じ差額を繰り返さないための管理方法も紹介します。

経理全体が滞っており、現金以外にも未処理や残高不一致が広がっている場合は、こちらの記事から全体の立て直し方を確認してください。

合わせて読みたい:経理が回らない会社の立て直し方|優先順位と7つの改善手順

目次

現金残高と帳簿残高が合わないとは

現金残高の確認では、同じ時点の「実際にある現金」と「帳簿上の現金残高」を照合します。

例えば、会計ソフトの現金残高が50,000円なのに、金庫の現金を数えると48,000円しかなければ、2,000円の不足です。

反対に、帳簿では50,000円なのに実際には51,000円ある場合は、1,000円多い状態になります。

帳簿上の現金実際の現金差額
50,000円48,000円2,000円不足
50,000円51,000円1,000円超過

差額が見つかったら、まず確認したいのは「なぜ合わないのか」です。

不足しているから経費、余っているから売上と決めつけることはできません。実際には複数の記帳漏れや入力ミスが重なり、最終的に一つの差額として表れている場合もあります。

なお、この記事で扱う「現金」は、金庫やレジ、小口現金など会社が手元で管理している現金を想定しています。

銀行口座の実際の残高と会計ソフトが合わない場合は、確認する資料や原因が異なります。

合わせて読みたい:銀行口座の残高と帳簿残高が合わない原因|確認する順番と修正方法

現金残高が合わない8つの主な原因

現金の差額は、単純な数え間違いだけで発生するものではありません。

帳簿への入力と実際の現金の動きがどこかでずれていないか、原因を一つずつ確認していきます。

1.現金で支払った経費を記帳していない

よくあるのが、実際には現金を使っているのに、その支払いが帳簿へ反映されていないケースです。

例えば、

  • 文房具を現金で購入した
  • 郵便代を現金で支払った
  • 少額の交通費を現金で精算した
  • 来客用の備品を現金で購入した

といった取引です。

領収書は残っていても、会計ソフトへの入力が後回しになっていれば、実際の現金だけが減り、帳簿残高の方が多くなります。

差額が不足になっている場合は、未入力の領収書やレシートが残っていないかを確認します。

2.現金売上や現金での入金を記帳していない

現金を受け取った取引が帳簿へ入っていないと、実際の現金の方が帳簿残高より多くなります。

店舗での現金売上だけでなく、

  • 商品代金を現金で受け取った
  • 従業員から立替金の返金を受けた
  • 仮払金の残額が返金された

など、現金が会社へ戻ってきた取引も確認対象です。

「現金が多いから売上漏れ」とすぐ判断するのではなく、何の入金だったのかを資料から確認します。

3.金額を間違えて入力している

取引そのものは入力されていても、金額が違っていれば残高は一致しません。

例えば、2,800円の支払いを会計ソフトへ2,300円と入力すると、500円の差額が残ります。

差額の金額と同額の取引だけを探すのではなく、「入力金額と実際の支払額との差」が一致する取引がないかを見ることもポイントです。

領収書と現金出納帳、会計ソフトを並べて確認すると見つけやすくなります。

4.現金以外の支払いを現金として処理している

実際にはクレジットカードや銀行振込で支払ったにもかかわらず、仕訳では現金を減らしているケースです。

この場合、現金そのものは動いていないのに帳簿上の残高だけが減るため、実際の現金の方が多くなります。

特に複数の支払方法を使っている会社では、

  • 現金
  • 法人カード
  • 個人立替
  • 銀行振込
  • 電子マネー

などを混同しないように確認します。

領収書だけでは支払方法が分からない場合もあるため、カード明細や銀行明細などと照合することがあります。

5.従業員への立替精算や仮払いが記録されていない

従業員へ現金を渡したものの、その動きが帳簿へ反映されていない場合も差額が発生します。

例えば、出張前に30,000円を渡したにもかかわらず仮払いの記録がなければ、金庫の現金は30,000円減っているのに帳簿は変わりません。

経費精算についても、「領収書を処理したか」だけでなく、実際にいつ、いくら現金を渡したのかまで確認します。

6.銀行から引き出した現金の処理が片方だけになっている

銀行口座から現金を引き出し、小口現金や金庫へ補充した場合は、預金と現金の両方に動きがあります。

例えば100,000円を銀行から引き出したのに、預金の減少だけを記帳して現金の増加を反映していなければ、帳簿上の現金残高は実際より少なくなります。

反対に、帳簿上では現金を増やしたものの、実際には別の金庫へ入れていたというケースもあります。

複数の現金保管場所がある会社では、どの現金を照合しているのかも確認しておきます。

7.同じ取引を二重に入力している

同じ領収書を2回入力していれば、帳簿上では現金が実際より多く減ります。

紙の領収書と電子データを両方取り込んでいる場合や、会計ソフトへ手入力した後にデータ連携でも登録した場合などは、重複が起こることがあります。

同額・同日・同じ取引先の仕訳が複数ないかを確認すると、重複を見つけやすくなります。

8.現金の受け渡しや保管時に差額が生じている

帳簿上の処理に問題が見つからない場合は、実際の現金の取り扱いも確認します。

例えば、

  • 釣り銭を多く渡した
  • 現金の受け取り額を間違えた
  • 別の金庫へ移したことを共有していなかった
  • 現金を紛失した

などです。

差額が少額でも、毎月繰り返している場合は「いつものこと」として処理せず、現金を扱う流れを確認した方がよいでしょう。

特に複数人が同じ現金を扱っている場合、誰がいつ入出金したのか分からない状態では原因を追いにくくなります。

現金残高が合わないときの7つの確認手順

原因を調べるときは、現金取引を最初からすべて見直す必要はありません。

最後に残高が一致していた時点を探し、そこから現在までの取引に範囲を絞っていくと確認しやすくなります。

1.実際の現金をもう一度数える

最初に、現在ある現金を数え直します。

紙幣と硬貨を種類ごとに分け、

  • 10,000円札 × ○枚
  • 5,000円札 × ○枚
  • 1,000円札 × ○枚
  • 硬貨

というように集計すると、数え間違いを防ぎやすくなります。

金庫、小口現金、レジなど複数の保管場所がある場合は、混ぜずにそれぞれ確認します。

2.帳簿と同じ基準日時点で比較する

現金を数える時点と帳簿の基準日が違えば、残高は一致しません。

例えば、会計ソフトでは9月30日まで入力されているのに、実際の現金には10月1日の支払いが反映されている場合、差が出るのは当然です。

「何月何日の何時点を合わせるのか」を決めてから比較します。

3.最後に残高が一致した日を確認する

次に、実際の現金と帳簿が最後に一致していた時点を探します。

例えば9月20日までは一致しており、9月30日に差額が出ているのであれば、まず確認するのは9月21日から30日までの取引です。

この方法なら、数カ月分の領収書を最初からすべて見直す必要はありません。

日々または週単位で現金残高を確認しておくと、差額が発生した場合の調査範囲も小さくできます。

4.現金出納帳と領収書を照合する

対象期間が決まったら、現金出納帳や会計ソフトの現金勘定と、領収書・レシートを照合します。

確認するのは、

  • 日付
  • 金額
  • 取引内容
  • 入金か出金か
  • 支払方法

です。

領収書はあるのに帳簿にない取引、帳簿にはあるのに領収書や支払記録が見つからない取引を分けて確認します。

5.現金の入金記録を確認する

次に、現金が増えた取引を確認します。

現金売上のほか、仮払金の返金や銀行からの引き出しなどが対象になります。

レジや販売管理システムを使っている場合は、その売上記録と現金の入金が一致しているかも確認します。

6.差額と一致する取引や入力ミスを探す

ここまで確認しても原因が見つからない場合は、差額の金額を手掛かりにします。

例えば2,000円不足しているのであれば、

「2,000円の未入力取引」

だけではなく、

「12,000円を10,000円と入力した取引」

のような金額差も確認します。

一つの取引だけが原因とは限らないため、複数の差額が合計されて現在の不足額・超過額になっている可能性も考えます。

7.原因が分かったら正しい取引へ修正する

原因が見つかったら、差額だけを消すのではなく、元の取引が正しくなるように修正します。

例えば消耗品を現金で購入した取引が記帳漏れになっているのであれば、その消耗品購入を帳簿へ反映します。

修正後は、もう一度実際の現金と帳簿残高を比較し、一致しているか確認します。

原因がすぐに分からない場合は現金過不足で一時的に処理する方法がある

現金を数えた時点で差額が判明しても、その場ですぐ原因を特定できないことがあります。

このような場合、一般的な簿記では「現金過不足」という勘定を使って、一時的に差額を処理する方法があります。

例えば、帳簿では50,000円あるものの、実際の現金が49,000円しかなく、1,000円の原因が分からない場合です。

借方金額貸方金額
現金過不足1,000円現金1,000円

その後、1,000円が消耗品の購入を記帳していなかったために生じたと判明した場合は、次のように原因となった取引へ振り替えます。

借方金額貸方金額
消耗品費1,000円現金過不足1,000円

反対に、実際の現金が帳簿より1,000円多い場合は、発見時に現金を増やし、貸方を現金過不足とする処理が考えられます。

仕訳例はあくまで一般的な考え方です。原因となった取引によって勘定科目や消費税の扱いが変わるため、実際の処理は会社の会計方針に沿って確認してください。

決算まで原因が分からない差額はそのまま放置しない

現金過不足は、原因を調べている間の一時的な処理に使われる勘定です。

決算まで原因が分からない場合、一般的な簿記では不足額を雑損失、超過額を雑収入などへ振り替える処理があります。

ただし、「原因が分からないから雑損失にして終わり」という扱いには注意が必要です。

差額の金額や発生状況によっては、現金管理の方法そのものを確認した方がよい場合があります。また、会計・税務上の処理について判断が必要なときは、税理士や公認会計士などの専門家へ確認してください。

現金残高を無理に合わせるだけの修正は避ける

現金差額が見つかったときに避けたいのが、原因を調べる前に帳簿残高だけを実際の現金へ合わせることです。

例えば2,000円不足しているからといって、理由を確認せず2,000円を経費として処理すると、本当は別の取引の入力漏れだった場合、その誤りが残ったままになります。

さらに、翌月になって元の領収書を入力すると、今度は二重計上になる可能性もあります。

現金の差額確認では、

実際の現金を数える
↓
最後に一致した時点を探す
↓
対象期間の取引を照合する
↓
原因となった取引を修正する

という順番で進める方が、差額の理由を追いやすくなります。

売掛金や買掛金についても同じで、残高を無理にゼロへ合わせるのではなく、どの取引で差額が生じているのかを確認します。

合わせて読みたい:売掛金の入金消込が合わない7つの原因|差額を解消する6つの確認手順

合わせて読みたい:買掛金・未払金の残高が合わない7つの原因|請求・支払・帳簿を照合する6つの手順

現金残高の差額を繰り返さないための5つの対策

一度差額を解消しても、現金の管理方法が変わらなければ同じ問題が繰り返されることがあります。

原因調査と合わせて、日常の運用も確認しておきます。

1.現金を数えるタイミングを決める

現金を扱う頻度が高い会社では、毎日または定期的に実際の現金と帳簿を照合します。

確認間隔が長くなるほど、差額が出たときに調べる取引も増えてしまいます。

2.現金を扱う人を明確にする

複数人が自由に金庫から現金を出し入れしていると、差額が見つかっても誰に確認すればよいか分からなくなります。

現金を扱う担当者や、現金を渡すときのルールを決めておくと履歴を追いやすくなります。

3.領収書やレシートをその日のうちにまとめる

現金を使ったら、領収書やレシートを後で提出するのではなく、決められた場所へすぐ保管します。

現金の支出と証憑が離れてしまうと、「何に使ったのか」が分からなくなりやすいためです。

4.差額が出た記録を残す

現金差額が見つかった場合は、

  • 発見日
  • 差額
  • 原因
  • 修正内容
  • 確認者

などを必要に応じて記録しておきます。

同じ原因が何度も発生していることが分かれば、個別の修正だけでなく業務ルールの見直しにつなげられます。

5.現金取引そのものを減らせないか検討する

小口現金の利用が多いほど、現物管理や領収書との照合も増えます。

銀行振込、法人カード、経費精算システムなどへ置き換えられる支払いがあれば、現金取引そのものを減らす方法もあります。

すべてをキャッシュレスにする必要はありませんが、「なぜこの支払いを現金で行っているのか」を一度確認すると、管理を簡素化できる取引が見つかることがあります。

現金以外の残高も合わない場合は経理全体を確認する

現金だけに差額があり、原因も特定できているのであれば、その取引を修正して現金管理を見直せば対応できる場合があります。

一方で、

  • 銀行口座の残高も合わない
  • 売掛金や買掛金にも古い残高がある
  • 未処理取引が多く残っている
  • 月次決算が数カ月遅れている
  • 誰も残高の内容を説明できない

といった状態が重なっている場合は、現金だけの問題として対応するより、経理全体の処理状況を確認した方がよいでしょう。

一つひとつの差額をその場で修正しても、記帳や資料管理の仕組みに原因があれば、別の科目で同じ問題が起こる可能性があります。

まずどこまで経理処理が完了しているのかを確認し、未処理、残高不一致、確認待ちを分けたうえで優先順位を決めると、立て直す範囲が見えやすくなります。

経理体制そのものを見直したい場合は、こちらの記事も参考にしてください。

合わせて読みたい:経理体制を見直すと会社はどう変わる?利益・資金繰り・生産性を改善する方法

まとめ

現金残高と帳簿残高が合わないときは、差額だけを見て帳簿を修正するのではなく、最後に一致していた時点まで戻り、そこから後の取引を確認していきます。

現金で支払った経費の入力漏れ、現金売上の記帳漏れ、金額の入力ミス、支払方法の間違いなど、原因は一つとは限りません。

普段から実際の現金と帳簿を定期的に照合しておけば、差額が生じたとしても確認する期間を短くできます。

一方、現金だけでなく預金、売掛金、買掛金など複数の残高が合わず、月次処理にも遅れが出ている場合は、個別の差額修正だけでは解決しにくいことがあります。

まるまる経理では、記帳や残高確認などの日常業務だけでなく、未処理がたまっている経理の整理や、毎月数字を確認できる体制づくりもサポートしています。

「差額の原因を調べるだけで毎月時間がかかっている」「経理担当者だけでは過去の残高まで確認しきれない」といった場合は、現在の経理業務を整理するところから見直してみてください。

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