鷲見明(公認会計士) この記事の監修者:鷲見明(公認会計士)

EC・決済サービスの売上と入金が合わない原因|精算明細の確認手順を解説

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ECサイトやオンライン決済サービスを利用していると、「管理画面では30万円売れているのに、銀行口座への入金額が30万円になっていない」ということがあります。

売上と入金額が違うと記帳漏れを疑いたくなりますが、必ずしも経理処理のミスとは限りません。

決済サービスでは、売上代金から決済手数料が差し引かれたり、複数日の取引がまとめて振り込まれたりします。返品・返金があれば、その金額がその後の精算に反映されるケースもあります。

この記事では、ECサイトや決済サービスの売上と銀行への入金額が合わないときに、精算明細を使ってどのように原因を確認すればよいのかを解説します。

目次

EC売上・決済サービスの精算額・銀行入金額は分けて確認する

ECサイトや決済サービスを利用している場合、管理画面に表示される「売上」と、決済サービスが算出する「精算額」、実際に銀行口座へ振り込まれる「入金額」は分けて考える必要があります。

決済サービスによって仕組みは異なりますが、概念的には次のような流れです。

売上
- 決済手数料
- 返金・取消など
± その他の精算調整
= 精算・振込の対象額

さらに、売上が発生した日と銀行へ振り込まれる日も同じとは限りません。

例えば、ECサイトでは月末までの売上が表示されていても、決済サービスでは一定期間ごとに取引をまとめて精算することがあります。

そのため、「今月の売上合計」と「今月の銀行入金合計」をそのまま比較しても、数字が一致しないケースがあります。

売上と入金の間にある「決済サービスの精算明細」を確認することが、差額を特定する最初のポイントです。

売上と入金を照合するときに用意したい資料

差額の原因を探す前に、次の資料をそろえます。

資料主に確認する内容
ECサイトの売上データ注文日、売上金額、決済方法
決済サービスの取引明細決済日、決済金額、取引状況
精算・振込明細今回の精算に含まれた取引、手数料、調整額
返金・取消の明細返品、返金、決済取消の有無
銀行明細実際の入金日と金額

特に確認したいのが、決済サービス側の精算・振込明細です。

ECサイト上の売上総額から直接銀行入金額を合わせようとするのではなく、「今回の精算にどの取引が含まれているのか」を先に確認すると、差額の原因を絞り込みやすくなります。

EC・決済サービスの売上と入金が合わない主な原因

売上と入金額に差が出る場合、EC・決済サービス特有の仕組みが関係していることがあります。

決済手数料が差し引かれている

よくあるのが、決済サービスの手数料が差し引かれた状態で銀行へ入金されるケースです。

例えば、売上が110,000円でも、決済手数料3,300円が差し引かれていれば、実際の入金額は106,700円になります。

この場合、銀行に入った106,700円だけを売上として記録すると、本来の売上額や決済手数料が帳簿上で分かりにくくなる可能性があります。

決済サービスの精算明細から、

  • 精算対象となった売上
  • 決済手数料
  • その他の控除・調整
  • 最終的な振込額

を分けて確認します。

売上日と精算対象期間が違っている

ECサイト上では注文日や売上日を基準に数字が集計されていても、決済サービス側では別の締め期間や支払いスケジュールで精算される場合があります。

例えば、月末に発生した売上が翌月の精算対象になれば、当月の売上と当月の銀行入金額は一致しません。

この場合は処理ミスとは限らず、比較している期間そのものが異なります。

「いつ売れたか」だけでなく、「その取引がどの精算に含まれたか」を確認しましょう。

複数日の売上が1回の精算にまとめられている

決済サービスによっては、複数日の取引をまとめて1回の振込として処理します。

銀行明細には1件の入金しか表示されていなくても、その中には数十件、数百件の取引が含まれていることがあります。

この状態で銀行入金1件とECサイトの売上1件を照合しても一致しません。

決済サービスの精算明細を確認し、同じ精算に含まれた取引をまとめて確認します。

返品・返金・決済取消が含まれている

購入後に商品が返品された場合や決済が取り消された場合、返金額がその後の精算へ反映されることがあります。

元の売上と返金が同じ精算期間に含まれるとは限らないため、売上だけを集計していると差額の理由が分からなくなる場合があります。

返金が発生している場合は、

  • 元の注文
  • 売上の記録
  • 返金処理
  • 返金が反映された精算

まで確認します。

ECサイトの売上に別の決済方法が含まれている

ECサイトの売上レポートには、特定の決済サービスを利用した取引だけでなく、銀行振込や代金引換など別の決済方法が含まれていることがあります。

一方、特定の決済サービスから精算されるのは、そのサービスを利用した取引です。

ECサイト全体の売上と特定の決済サービスからの入金を比較すると、そもそも対象となる取引の範囲が違っている可能性があります。

まず決済方法別に売上を分けてから確認すると整理しやすくなります。

まだ精算されていない取引が含まれている

ECサイト上では売上として確認できても、決済サービス側ではまだ次回以降の精算対象になっているケースがあります。

特に月末付近の取引では、「売上には含まれているが、まだ銀行には入っていない」という状態が生じることがあります。

売上と入金に差があるときは、未入金と判断する前に、次回以降の精算予定に含まれていないか確認しましょう。

精算明細を起点に銀行入金と対象取引を照合する

EC・決済サービスの照合では、1カ月分の売上総額から差額を探すよりも、決済サービスの精算明細を1件ずつ確認する方が原因を整理しやすくなります。

1.確認する精算・振込明細を決める

まず、決済サービスの管理画面から確認したい精算を1件選びます。

サービスによって名称は異なりますが、精算ID、振込ID、支払いIDなどが付いている場合は、その番号も確認しておきます。

2.精算対象となった取引を確認する

次に、その精算にどの取引が含まれているのかを確認します。

例えば、

  • 取引日
  • 注文番号
  • 決済金額
  • 決済ステータス

などを見ます。

ここで、ECサイトの売上データと決済サービスの取引データが対応しているかを確認します。

3.手数料や返金などの調整項目を確認する

精算対象となった売上が確認できたら、精算明細に記載された手数料や返金などを確認します。

例えば、

内容金額
精算対象の売上330,000円
決済手数料▲9,900円
返金▲11,000円
振込額309,100円

であれば、

330,000円-9,900円-11,000円=309,100円

となります。

この金額が実際の銀行入金と一致していれば、売上と入金額が違う理由を説明できます。

4.銀行明細で実際の入金を確認する

精算明細の振込額が分かったら、銀行明細に同額の入金があるか確認します。

精算明細では振込済みになっていても、金融機関側の処理によって口座への反映まで時間がかかる場合があります。

そのため、日付だけでなく金額もあわせて確認します。

5.一致しない取引だけを未処理として分ける

精算明細を確認しても数字が合わない場合は、

  • 精算明細にはあるが帳簿にない
  • 帳簿にはあるが精算明細にない
  • 金額が違う
  • 返金の処理が確認できない
  • どの売上に対応するか分からない

といった取引だけを分けます。

原因が分からないものを推測で処理せず、確認が必要な取引として一覧にしておくと管理しやすくなります。

合わせて読みたい:経理の未処理一覧とは?月次決算までに解消する管理方法

決済手数料が差し引かれる場合は売上と手数料を分けて確認する

決済手数料が差し引かれて入金される場合、銀行への入金額と売上金額は異なります。

単純化した例で確認してみましょう。

商品を110,000円で販売し、決済サービスの手数料3,300円が差し引かれて106,700円が銀行へ振り込まれたとします。

売上を計上するときの例

借方金額貸方金額
売掛金110,000円売上高110,000円

決済サービスから入金されたときの例

借方金額貸方金額
普通預金106,700円売掛金110,000円
支払手数料3,300円

この例では、売上110,000円と決済手数料3,300円を分けて記録するため、銀行への入金額が106,700円でも差額の内容を確認できます。

一方、銀行へ入った金額だけを見て処理すると、本来の売上総額や決済サービスへ支払った手数料が分かりにくくなる場合があります。

なお、これは仕組みを説明するための単純化した仕訳例です。決済サービスに対する債権を売掛金ではなく未収入金などで管理する場合もあります。また、売上計上の時期、使用する勘定科目、決済手数料の消費税区分などは、取引内容や契約、会社の会計方針によって異なります。実際の処理については、利用しているサービスの明細を確認し、必要に応じて税理士等の専門家へ確認してください。

決済サービスごとに入金サイクルや精算方法は異なる

EC・決済サービスを利用するときは、それぞれのサービスがどのタイミングで精算・振込を行うのか確認しておく必要があります。

例えばSquareでは、決済手数料が登録銀行口座へ売上金を振り込む前に差し引かれます。

また、日本のShopify Paymentsでは週単位または月単位の支払いスケジュールを選択する仕組みで、返金やチャージバックによってマイナス残高が発生した場合は、その後の支払いに影響することがあります。

このように、同じEC・オンライン決済でも精算方法は同じではありません。

経理担当者は、利用しているサービスごとに、

  • 精算対象期間
  • 振込スケジュール
  • 決済手数料
  • 返金・取消の反映方法
  • 精算・振込明細の確認場所

を把握しておくと、売上と入金の差額を確認しやすくなります。

決済サービスを新しく追加したり変更したりした場合も、以前と同じ方法で処理できるとは限らないため、精算ルールを一度確認しておきましょう。

毎月の照合作業をしやすくする管理方法

EC事業では取引件数が増えるほど、売上と入金を目視で追うことが難しくなります。

毎月の確認方法をある程度統一しておくと、差額が発生した場合も原因を探しやすくなります。

決済サービスごとに管理する

複数の決済サービスを利用している場合は、すべてをまとめて照合するのではなく、サービスごとに確認します。

どのサービスからの精算なのか分かる状態にしておけば、差額が発生した範囲を絞り込めます。

精算明細を毎月保存する

銀行の入金記録だけでは、その金額がどの取引から構成されているのか分からないことがあります。

決済サービスの精算・振込明細を毎月保存し、銀行明細や売上データと一緒に確認できる状態にしておきます。

精算IDや対象期間を記録する

会計ソフトの摘要欄や社内の管理表などに、精算IDや精算対象期間を残しておく方法もあります。

後から差額が見つかったときに、「この入金はどの売上に対応しているのか」をさかのぼりやすくなります。

CSVなどのデータを利用して照合する

取引件数が多い場合は、ECサイトや決済サービスからCSV等を出力し、注文番号や決済IDなどを使って確認する方法があります。

ただし、システムを導入しただけで数字が自動的に合うわけではありません。

どのデータを基準にして、誰が、いつ照合するのかまで社内で決めておく必要があります。

合わせて読みたい:中小企業の経理DX|導入のための実践7ステップ

銀行残高や売掛金が合わない場合は別に確認する

EC・決済サービスの精算明細と銀行入金額が一致していても、会計帳簿上の銀行残高そのものが合わない場合は、決済サービスとは別の原因を確認する必要があります。

その場合は、銀行取引の記帳漏れや二重計上など、預金帳簿側を確認します。

合わせて読みたい:銀行口座の残高と帳簿残高が合わない原因|確認する順番と修正方法

また、請求書を発行して取引先から直接入金を受ける取引については、決済サービスの精算とは分け、売掛金と入金データを照合します。

合わせて読みたい:売掛金の入金消込が合わない7つの原因|差額を解消する6つの確認手順

EC・決済サービス以外にも複数の残高差異や未処理が残っている場合は、個別の差額だけを直すのではなく、経理業務全体をどの順番で正常化するか整理する必要があります。

合わせて読みたい:経理が回らない会社の立て直し方|優先順位と7つの改善手順

よくある質問

Q1. ECサイトの売上と銀行への入金額が違っていても問題ありませんか?

決済手数料が差し引かれている、返金や取消が反映されている、複数日の売上がまとめて精算されているなどの理由で、売上と銀行入金額が一致しないことはあります。

そのため、差額があること自体ですぐに経理処理ミスとは限りません。

ただし、理由が説明できないままにしておくのは避けたいところです。
決済サービスの精算明細を確認し、売上、手数料、返金、振込額を分けて照合することが大切です。

Q2. 決済手数料を差し引いた入金額だけを売上として処理してもよいですか?

入金額だけで処理すると、本来の売上額や決済手数料の金額が帳簿上で分かりにくくなることがあります。

そのため、売上と決済手数料は分けて確認できる形で処理するのが基本です。

ただし、使用する勘定科目や処理方法、消費税の扱いは、取引内容や会社の会計方針によって異なる場合があります。
判断に迷う場合は、利用している決済サービスの明細を確認したうえで、税理士等の専門家へ相談すると安心です。

Q3. 月末の売上が翌月に入金された場合、その売上は翌月分になりますか?

銀行へ入金された月だけを基準にして、売上の月を決めるとは限りません。

ECサイトで売上が発生した日と、決済サービスが精算・振込を行う日は異なることがあるためです。

売上をいつ計上するかは、取引内容や会社の会計方針によって変わることがあります。
月をまたぐ取引が多い場合は、売上データ、精算明細、銀行明細をそれぞれ確認できる状態にしておくと整理しやすくなります。

まとめ|売上と入金の間にある精算明細を確認する

ECサイトや決済サービスでは、管理画面上の売上額と銀行への入金額が一致しないことがあります。

差額が出たときは、売上と銀行入金を直接比べるのではなく、

  • 今回の精算対象となった売上
  • 決済手数料
  • 返金・取消
  • 精算対象期間
  • 次回以降の精算となる取引
  • 実際の銀行入金額

を順番に確認します。

特に大切なのは、売上と銀行入金の間にある「精算明細」を確認することです。ここを起点にすれば、手数料による差額なのか、返金なのか、まだ精算されていない取引なのかを切り分けやすくなります。

取引件数が増えてくると、複数のECサイトや決済サービスからデータを取得し、毎月照合する作業だけでも負担が大きくなります。

「売上は増えているのに毎月の入金確認に時間がかかる」「決済サービスごとに処理方法が違い、担当者しか分からない」といった場合は、記帳や入金確認を含めた経理業務を外部へ任せることも選択肢の一つです。

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