「期限どおりに経理業務は終わっているのに、後から修正が何度も発生する」
「担当者によってチェックする内容が違う」
「月次決算を締めた後に、入力漏れや残高差異が見つかる」
経理業務では、予定どおり作業を完了させるだけでなく、処理した内容が正しいかを確認することも重要です。
請求書の金額や計上月を間違えていたり、同じ取引を二重に入力していたりすると、作業自体は完了していても、後から修正が必要になります。
そこで必要になるのが、経理業務の品質管理です。
経理ミスを防ぐためには、担当者の注意力だけに頼るのではなく、何を確認するのかを決め、経理のチェック体制を整えておく必要があります。
この記事では、通常運用している経理業務について、ミスや漏れを防ぐために確認したい7つのチェック項目と、無理なく継続するための運用方法を解説します。
経理業務そのものが滞っており、何から手を付ければよいか分からない場合は、先に業務全体の優先順位を整理します。
合わせて読みたい:経理が回らない会社の立て直し方|優先順位と7つの改善手順
経理業務の品質管理とは?
本記事でいう経理業務の品質管理とは、処理した経理業務について確認する基準を決め、ミスや漏れがない状態を保つための管理を指します。
例えば、請求書を会計ソフトへ入力した場合でも、
- 金額は合っているか
- 取引日は正しいか
- 同じ取引を二重に入力していないか
- 必要な証憑が保存されているか
- 必要な承認が完了しているか
などを確認する必要があります。
「入力済み」「支払済み」といった作業状況だけでは、その処理が正しいかまでは判断できません。
そのため、経理業務では、完了したかどうかと、正しく完了したかどうかを分けて確認することが大切です。
進捗管理・月末業務チェックリスト・品質管理の違い
経理業務にはさまざまな管理方法がありますが、それぞれ確認する目的が異なります。
| 管理方法 | 主に確認すること | 例 |
|---|---|---|
| 進捗管理 | 業務が予定どおり進んでいるか | 担当者、期限、ステータス、完了日 |
| 月末業務チェックリスト | 月次決算までに必要な業務が完了しているか | 請求、支払、経費精算、残高確認など |
| 品質管理 | 完了した処理が正しく行われているか | 金額、証憑、重複、承認、残高 |
例えば、会計入力のステータスが「完了」になっていても、入力内容に誤りがあれば品質上の問題は残っています。
また、月末に必要な業務をすべて実施していても、請求書と入力金額が一致していなければ、正しく処理できているとはいえません。
月末業務チェックリストが、月次決算までにやるべき業務が完了しているかを確認するのに対し、品質管理では、完了済みの処理を含め、金額・証憑・承認・残高などが正しいかを確認します。
この違いを分けて管理することで、「遅れている業務」「まだ行っていない業務」「修正が必要な業務」を整理しやすくなります。
毎月の定型業務について、担当者・期限・ステータスなどを管理する方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:経理業務の進捗管理とは?遅れを防ぐ7つの管理項目と運用方法
経理業務の品質が安定しない4つの原因
経理ミスが繰り返される場合、担当者の注意力だけが原因とは限りません。
業務の進め方や確認方法そのものに原因がある場合があります。
1.何を確認するのか決まっていない
「入力後に確認する」というルールがあっても、確認項目が決まっていなければ、人によって見る場所が変わります。
金額だけを見る人もいれば、取引日や証憑まで確認する人もいる状態では、品質を一定に保ちにくくなります。
2.担当者ごとに判断基準が違う
同じ種類の取引でも、担当者によって処理方法や確認方法が異なると、結果にばらつきが生じます。
特定の担当者しか判断基準を知らない状態では、担当者の変更や不在時にも処理方法を確認しにくくなります。
3.処理と確認をまとめて月末に行っている
日々の処理内容を月末にまとめて確認すると、修正が必要な取引が多かった場合に手戻りが増えます。
処理してから確認するまでの期間が長くなると、当時の取引内容を再確認するために時間がかかることもあります。
4.修正した内容が次の業務へ反映されていない
一度ミスを修正しても、その原因や正しい処理方法が共有されなければ、翌月も同じミスが発生する可能性があります。
経理ミスの再発防止には、修正するだけでなく、同じ原因が繰り返されないよう業務ルールへ反映することが重要です。
経理ミスを防ぐ7つのチェック項目
経理業務のチェックリストを作る場合は、まず次の7つを確認します。
1.証憑がそろっているか
まず確認したいのは、取引の根拠となる資料です。
例えば、
- 請求書
- 領収書
- 契約書
- 発注書
- 経費申請
- 入出金明細
など、処理内容に必要な資料がそろっているかを確認します。
会計ソフトへ入力されていても、後から根拠となる資料を確認できない状態では、再確認に時間がかかります。
証憑の保存場所や管理方法も、社内で確認しやすい状態にしておくことが重要です。
2.金額・日付・取引先が一致しているか
入力内容と証憑の基本情報を確認します。
特に、
- 金額
- 取引日
- 支払日
- 取引先
- 摘要
などは、元資料と照らして確認します。
「入力したから完了」ではなく、入力された情報と元資料が一致しているかまで確認します。
3.入力漏れや二重計上がないか
経理では、金額の入力間違いだけでなく、入力そのものが漏れている場合や、同じ取引を二重に処理している場合もあります。
例えば、
「請求書をメールと郵送の両方で受け取り、同じ取引を二重に登録した」
「銀行データを取り込んだ後に、同じ取引を手入力した」
といったケースです。
入力方法が複数ある場合は、どのデータを基準に処理するのかを決めておくと、重複や漏れを確認しやすくなります。
4.処理方法が社内ルールと一致しているか
同じ種類の取引について、毎月異なる方法で処理されていないか確認します。
社内で会計処理や費用の分類について決めている基準がある場合は、その基準に沿って処理されているかを確認します。
判断が必要な取引については、担当者だけで処理方法を決めず、確認する責任者や専門家を明確にしておくことも重要です。
5.必要な承認が完了しているか
支払や経費精算など、社内承認が必要な業務では、必要な承認を経ているか確認します。
「入力が終わった」「支払データを作った」ことと、「必要な承認が完了した」ことを混同しないようにします。
誰が承認するのか、どの段階で承認するのかを決めておくと確認しやすくなります。
6.帳簿残高と実際の残高が一致しているか
会計入力が終わった後は、帳簿上の数字と実際の残高を確認します。
例えば、
- 預金
- 売掛金
- 買掛金
- 未払金
などです。
仕訳が入力されていても、残高が一致していなければ、入力漏れや重複、消込漏れなどが残っている可能性があります。
特に売掛金では、請求額と入金額が一致していても、異なる請求へ入金を充当しているなど、消込方法に原因がある場合があります。
売掛金の差額が残っている場合は、金額だけを合わせるのではなく、どの請求と入金で差異が発生しているのかを確認します。
合わせて読みたい:売掛金の入金消込が合わない7つの原因|差額を解消する6つの確認手順
7.修正内容と確認結果が残っているか
チェックで誤りが見つかった場合は、修正して終わりにせず、何を修正したのか分かる状態にします。
例えば、
- 修正した日
- 修正した内容
- 修正理由
- 確認した担当者
- 再確認の結果
などを必要に応じて残します。
同じ種類の修正が毎月発生している場合は、個別のミスではなく、業務ルールや入力方法に原因がある可能性があります。
経理業務のチェックリストは必要な項目だけで作る
品質管理を始めるために、最初から複雑なシステムを導入する必要はありません。
Excelやスプレッドシートなどを利用し、確認が必要な業務とチェック項目を整理する方法があります。
例えば、次のように管理します。
| 業務 | チェック項目 | 確認基準 | 確認者 | 確認時期 | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 請求書処理 | 金額・取引先 | 請求書と一致 | 経理 | 入力後 | OK |
| 経費精算 | 証憑・承認 | 証憑あり・承認済み | 経理 | 精算前 | OK |
| 支払 | 金額・支払先 | 支払データと一致 | 責任者 | 実行前 | 要確認 |
| 会計入力 | 重複・漏れ | 元資料と一致 | 経理 | 月次締め前 | OK |
| 売掛金 | 帳簿残高 | 入金実績と照合 | 経理 | 月次締め前 | 差額あり |
重要なのは、チェック表そのものを作ることではありません。
誰が確認しても、何をもって「問題なし」とするのか分かる状態にすることが品質管理の目的です。
残高差異が見つかったら原因まで確認する
品質チェックで残高差異を発見した場合は、帳簿上の金額だけを修正して終わらせないことが重要です。
例えば、買掛金や未払金の残高が合わない場合には、
- 請求書の計上漏れ
- 同じ請求書の重複計上
- 支払後の消込漏れ
- 計上月の違い
- 支払金額と請求金額の差異
など、複数の原因が考えられます。
どこで差異が発生したのかを確認せずに残高だけを合わせると、同じ原因による差異が翌月以降も発生する可能性があります。
請求・支払・帳簿を照合し、差額が生じた取引を特定してから修正します。
合わせて読みたい:買掛金・未払金の残高が合わない7つの原因|請求・支払・帳簿を照合する6つの手順
経理のチェック体制を運用する4つのルール
1.確認項目と判断基準を具体的にする
「内容を確認する」だけではなく、
「請求書と入力金額が一致しているか」
「必要な承認が完了しているか」
のように、確認する内容を具体的にします。
担当者が変わっても、同じ基準で確認できる状態をつくることが大切です。
2.重要な業務を重点的に確認する
すべての取引を同じ方法で何度も確認する必要はありません。
金額が大きい取引、通常と異なる取引、過去にミスが発生している業務など、自社で重点的に確認する対象を決めます。
3.確認するタイミングを決める
確認は、問題が見つかったときに修正できるタイミングで行います。
例えば、
- 支払データは実行前
- 経費精算は精算前
- 会計入力は月次決算前
- 残高は月次締め時
などです。
月末にまとめて確認するのではなく、業務に応じてチェックする時期を決めます。
4.繰り返すミスを業務改善につなげる
同じ種類の修正が何度も発生している場合は、内容を記録し、原因を確認します。
例えば、
- 同じ取引先で処理方法の修正が続いている
- 支払データの金額修正が多い
- 証憑不足が毎月発生している
といった傾向があれば、個別に修正するだけでなく、入力方法や業務フローそのものを見直します。
これが経理ミスの再発防止につながります。
「チェックを増やす」だけでは経理ミスは防げない
経理ミスが発生すると、ダブルチェックや確認項目を増やそうと考えやすくなります。
しかし、同じ内容を複数人が繰り返し確認するだけでは、確認作業の負担が増える場合があります。
重要なのは、どの工程でミスが発生し、なぜ最初の処理で防げなかったのかを確認することです。
例えば、入力ミスが繰り返されている場合、入力後のチェックを増やすだけでなく、入力元となるデータや処理方法を統一した方が改善につながることがあります。
経理のチェック体制では、ミスを見つけるだけでなく、ミスが発生しにくい仕組みをつくることも重要です。
担当者によって品質が変わる場合は属人化も確認する
担当者によって処理方法やチェック基準が大きく異なる場合は、個人の経験だけに頼った運用になっている可能性があります。
確認項目や判断基準を共有し、誰が担当しても一定の方法で処理できる状態をつくることで、経理品質を安定させやすくなります。
経理業務が特定の担当者に依存している場合は、品質管理だけでなく、業務全体の属人化を見直します。
合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法
経理代行を利用するときも品質基準を決める
経理代行など外部へ業務を依頼する場合も、依頼した業務が終わったかどうかだけではなく、どの状態をもって完了とするのかを決めておくことが重要です。
例えば、
- 必要な証憑が確認されているか
- 確認が必要な事項が整理されているか
- 残高確認まで行うのか
- 修正が必要な取引を誰が確認するのか
- 月次資料を誰が最終確認するのか
などを整理します。
外部へ依頼する業務と、会社側で確認・承認する業務を分けておけば、双方の担当範囲も確認しやすくなります。
経理代行へ依頼できる一般的な業務内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説
公認会計士の視点|「何回チェックしたか」より「何を確認したか」を残す
経理ミスを防ぐために、「ダブルチェックをしているから大丈夫」と考えることがあります。
しかし、確認する項目が決まっていなければ、複数人で確認しても同じ箇所を見落とす可能性があります。
重要なのは、チェックした人数ではありません。
何を確認し、どの基準で問題なしと判断したのかが分かる状態にすることです。
例えば、
「確認済み」
だけではなく、
「請求書との金額一致を確認」
「承認済みを確認」
「帳簿と実際の残高の一致を確認」
のように、確認内容を明確にします。
確認項目が明確になれば、新しい担当者へ業務を引き継ぐときにも、必要な品質基準を共有しやすくなります。
よくある質問
Q1. 経理業務はすべてダブルチェックした方がよいですか?
必ずしも、すべての取引を同じ方法で二重に確認する必要はありません。
取引金額、業務の重要性、過去のミスの発生状況などを踏まえ、自社で重点的に確認する業務を決めます。
Q2. 品質チェックはいつ行うのがよいですか?
業務によって異なります。
支払であれば実行前、会計入力や残高確認であれば月次決算を確定する前など、問題が見つかったときに修正できるタイミングで行います。
Q3. 経理ミスが多い担当者だけチェックを増やせばよいですか?
担当者だけではなく、業務の仕組みも確認します。
確認基準が曖昧、資料の受け取り方法が統一されていない、処理方法が共有されていないなど、業務フローに原因がある場合があります。
Q4. Excelやスプレッドシートでも品質管理できますか?
はい。
重要なのは使用するツールではなく、確認する業務、確認基準、担当者、確認結果などを継続して管理できることです。
Q5. 進捗管理表と品質チェック表は一つにまとめてもよいですか?
業務量が少ない場合は、一つの表に「進捗」と「品質確認」の列を設ける方法もあります。
ただし、「完了」と「確認済み」を分けて記録し、作業が終わったことと内容が正しいことを区別できるようにします。
まとめ
経理業務の品質管理では、作業が終わったかどうかだけではなく、正しく処理されているかを確認します。
主に確認したいのは、
- 証憑がそろっているか
- 金額・日付・取引先が一致しているか
- 入力漏れや二重計上がないか
- 処理方法が社内ルールと一致しているか
- 必要な承認が完了しているか
- 帳簿残高と実際の残高が一致しているか
- 修正内容と確認結果が残っているか
の7項目です。
進捗管理では「予定どおり進んでいるか」、月末業務チェックリストでは「必要な業務を実施したか」、品質管理では「完了した処理が正しいか」を確認します。
それぞれの目的を分けて運用することで、経理業務の遅れだけでなく、入力ミスや残高差異、修正の繰り返しも把握しやすくなります。
また、同じ経理ミスが繰り返されている場合は、チェックを増やすだけでなく、発生している工程や業務ルールそのものを見直すことが再発防止につながります。
「月次決算を締めた後に修正が多く発生している」
「担当者によって経理処理の品質に差がある」
「経理業務のチェック項目が決まっていない」
このような場合は、現在の経理業務とチェック方法を整理するところからご相談いただけます。
まるまる経理では、日々の経理業務だけでなく、確認項目や役割分担を整理し、継続して運用できる経理体制づくりをサポートします。
