「記帳が数カ月分たまっているので、急いで整理したい」
「月次決算が遅れているが、社内だけでは追いつけない」
「経理担当者が対応できず、過去月の処理まで残っている」
経理業務がすでに遅れている場合、通常の業務を進めながら過去分まで処理する必要があるため、社内だけではなかなか追いつけないことがあります。
このような場合、経理代行などの外部支援を利用して、たまっている業務の整理や処理を進める方法があります。
ただし、「急いでいるので全部お願いします」と依頼するだけでは、すぐに作業を始められるとは限りません。
どの月まで完了しているのか、何が残っているのか、必要な資料がどこにあるのかを整理しておくことで、外部担当者も状況を把握しやすくなります。
この記事では、すでに遅れている経理業務を外部へ引き継ぐ場合に、最初に整理したい6つの準備と進め方を解説します。
経理業務全体が滞っており、何から手を付けるべきか分からない場合は、まず業務全体の優先順位を整理します。
合わせて読みたい:経理が回らない会社の立て直し方|優先順位と7つの改善手順
経理が遅れていても外部へ相談できる
経理代行を利用する会社が、必ずしも経理業務を正常に運用できているとは限りません。
例えば、
- 数カ月分の記帳が残っている
- 月次決算が過去月で止まっている
- 請求書や領収書が整理されていない
- 売掛金や買掛金の残高が合っていない
- 確認待ちの取引が多く残っている
といった状態から、外部支援を検討するケースもあります。
ただし、対応できる範囲や開始時期は、依頼先の体制、残っている業務量、資料の状態などによって異なります。
そのため、最初に必要なのは「何カ月分あります」と伝えることだけではありません。
現在どこまで完了しており、どこから立て直す必要があるのかを明確にすることが重要です。
通常の経理代行導入と「急ぎの立て直し」は目的が違う
通常の経理代行と、経理がすでに遅れている状態から利用する場合では、最初に整理する内容が異なります。
| 状況 | 主な目的 |
|---|---|
| 通常の経理代行導入 | 今後発生する経理業務を継続して外部へ依頼する |
| 急ぎの立て直し | 過去から残っている業務を整理し、通常運用へ戻す |
通常の経理代行では、今後の請求書発行、支払、記帳、月次決算などについて役割分担やスケジュールを決めます。
一方、すでに経理が遅れている場合は、その前に、
「最後に完了している月はいつか」
「過去月に何が残っているか」
「資料がどこまでそろっているか」
を確認する必要があります。
この記事では、経理代行へ依頼できる一般的な業務範囲ではなく、遅れている経理を外部へ引き継ぐ前の整理方法を中心に扱います。
経理代行そのものの業務内容や一般的な導入の流れについては、以下の記事で解説しています。
合わせて読みたい:経理代行とは?業務内容・導入の流れを解説
急ぎで経理代行へ依頼する前に整理したい6つの準備
1.最後に完了している月を確認する
最初に確認したいのは、経理業務がどこまで終わっているかです。
例えば、
「記帳は6月まで終わっている」
「預金残高は5月まで確認済み」
「月次決算は4月まで確定している」
というように、業務ごとに進んでいる月が異なることがあります。
そのため、
| 業務 | 最後に完了している月 |
|---|---|
| 記帳 | 6月 |
| 預金残高確認 | 5月 |
| 売掛金確認 | 5月 |
| 買掛金・未払金確認 | 4月 |
| 月次決算 | 4月 |
のように整理します。
「会計入力は終わっているから6月まで完了」と判断するのではなく、どの月まで数字を確定できているかを確認することが重要です。
過去月の月次決算そのものが遅れている場合は、外部へ依頼する前に、どこから通常月へ追いつかせる必要があるのかを把握します。
合わせて読みたい:月次決算の遅れを取り戻す方法|過去月から通常月へ追いつく6つの手順
2.たまっている業務を分ける
次に、残っている経理業務を種類ごとに分けます。
例えば、
- 会計ソフトへの記帳
- 請求書の整理
- 経費精算
- 預金残高の確認
- 売掛金の入金確認
- 買掛金・未払金の確認
- 不明取引の確認
- 月次決算
などです。
「経理が3カ月遅れている」という情報だけでは、必要な作業量を判断しにくくなります。
3カ月分の仕訳入力だけが残っている会社と、資料整理から残高確認まで必要な会社では、同じ3カ月でも状況が異なります。
記帳自体がたまっている場合は、未入力期間や必要資料を整理してから外部へ引き継ぐと状況を共有しやすくなります。
合わせて読みたい:経理の記帳がたまっている会社の対処法|会計入力を立て直す5つの手順
3.必要な資料がどこまであるか確認する
経理業務を外部へ依頼する場合でも、処理の根拠となる資料が必要です。
例えば、
- 請求書
- 領収書
- 銀行明細
- クレジットカード明細
- 売上一覧
- 経費精算データ
- 給与関係の資料
- 契約書
- 過去の会計データ
などです。
この段階で、すべての資料を完璧に整理できている必要はありません。
重要なのは、
「ある資料」
「不足している資料」
「どこに保存されているか分からない資料」
を分けることです。
資料が不足していること自体よりも、何が不足しているか分からない状態の方が、作業開始後の確認に時間がかかりやすくなります。
4.確認待ちや不明事項を一覧にする
遅れている経理には、資料があれば処理できるものだけでなく、社内への確認が必要な取引が含まれることがあります。
例えば、
- 入出金の内容が分からない
- 請求書が届いていない
- 経費の用途を確認する必要がある
- 売掛金の入金内容が分からない
- 買掛金や未払金の残高に差異がある
- 社内承認が終わっていない
といった項目です。
これらを通常の処理と混ぜたまま渡すと、外部担当者も一件ずつ確認しながら進めることになります。
確認が必要な事項については、
- 対象月
- 内容
- 確認先
- 担当者
- 期限
- 現在の状況
を一覧にします。
未処理事項の整理方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい:経理の未処理一覧とは?月次決算までに解消する管理方法
5.会社側の窓口と確認者を決める
経理代行へ依頼しても、外部担当者だけですべてを判断できるわけではありません。
例えば、
「この入金は何の売上か」
「この支出はどの案件に関係するか」
「この請求内容で問題ないか」
といった事項は、会社側で確認する必要があります。
そのため、急ぎで経理を立て直す場合ほど、
- 経理代行との窓口
- 資料を集める担当者
- 取引内容を確認する担当者
- 最終的に判断・承認する人
を決めておくことが重要です。
問い合わせ先が毎回変わると、確認に時間がかかり、外部へ依頼しても作業が止まる可能性があります。
通常の経理業務について、特定の担当者だけに依存しない体制や引き継ぎしやすい状態を整えたい場合は、以下の記事も参考にしてください。
合わせて読みたい:経理の属人化を解消する方法
6.「いつまでに、どこまで戻したいか」を決める
最後に、今回の立て直しのゴールを決めます。
例えば、
「3カ月分の記帳を終わらせたい」
だけではなく、
「7月分まで月次決算を完了させたい」
「今後は毎月翌月10日までに数字を確認できる状態へ戻したい」
というように、完了状態を具体的にします。
経理の立て直しでは、作業件数を減らすことだけがゴールではありません。
通常の経理業務を継続できる状態まで戻すことが重要です。
資料が全部そろっていなくても整理は始められる
経理が長期間たまっている場合、必要な資料が最初からすべてそろっているとは限りません。
この場合、
「資料が全部そろってから経理代行へ相談しよう」
と考えると、さらに時間が経過してしまうことがあります。
まずは現在ある資料を整理し、不足しているものを明確にします。
例えば、
| 対象月 | 資料 | 状況 |
|---|---|---|
| 5月 | 銀行明細 | あり |
| 5月 | カード明細 | あり |
| 5月 | A社請求書 | 不足 |
| 6月 | 銀行明細 | あり |
| 6月 | 経費精算 | 一部未提出 |
のように整理します。
これにより、すぐ処理できるものと、資料回収が必要なものを分けやすくなります。
重要なのは、資料不足を隠したまま渡すのではなく、何が不足しているかを最初から共有することです。
急ぎで相談するときに伝えたい情報
経理代行へ問い合わせる場合は、「急ぎでお願いします」だけではなく、現在の状況を具体的に伝えます。
最低限、次の情報を整理すると相談しやすくなります。
| 項目 | 伝える内容の例 |
|---|---|
| 最後に完了した月 | 月次決算は4月まで完了 |
| 遅れている期間 | 5月〜7月 |
| 主な未完了業務 | 記帳、残高確認 |
| おおよその取引量 | 月300仕訳程度 |
| 使用している会計ソフト | freee、マネーフォワードなど |
| 資料の状態 | 銀行・カード明細あり、請求書一部不足 |
| 未処理事項 | 社内確認待ち5件 |
| 希望する状態 | 7月まで月次決算を完了したい |
| 希望時期 | ○月までに通常運用へ戻したい |
この情報があれば、依頼先も必要な作業を把握しやすくなります。
現在どこまで処理が完了しているか分からない場合でも、確認できる資料から状況を整理できます。どこから立て直せばよいか分からない場合は、現在の状況からご相談いただけます。
「全部まとめて渡す」より優先順位を決める
経理がたまっていると、過去の資料をすべて外部へ渡して一気に処理してもらいたくなることがあります。
しかし、作業量が多い場合は、最初に優先順位を決めた方が状況を整理しやすくなります。
例えば、
- 最も古い未完了月を確認する
- 処理できる記帳を進める
- 確認待ちを分ける
- 残高を確認する
- その月の数字を確定する
- 次の月へ進む
という順番です。
特に月次決算が複数月遅れている場合は、古い月の残高が翌月につながるため、どの月から確定するかを明確にします。
外部へ依頼する場合でも、「量を一気に減らす」ことより「確定した月を増やす」ことを意識すると、通常運用へ戻るまでの状況を把握しやすくなります。
急ぎで依頼しても会社側の確認は必要になる
経理代行へ外注しても、社内でしか分からない取引内容や、重要事項の判断・承認まで外部へ任せられるとは限りません。
特に過去分を立て直す際は、不明取引や確認事項が発生しやすいため、会社側で回答できる担当者を確保しておくことが重要です。
外部へ任せる作業と、会社側に残る判断を分けて進めます。
過去分を処理しながら当月業務を止めない
急ぎの立て直しで注意したいのは、過去月だけに集中して現在の経理を止めないことです。
例えば、過去3カ月分を処理している間にも、
- 今月の請求
- 今月の支払
- 経費精算
- 入出金
- 証憑の回収
は発生します。
過去分を1カ月処理している間に、新しく1カ月分がたまれば、全体の遅れは縮まりません。
そのため、過去分の立て直しと当月業務をこれ以上遅らせないことを分けて管理します。
外部へ依頼する場合も、過去分だけを依頼するのか、当月分も同時に依頼するのかを最初に整理します。
立て直した後は通常運用へ切り替える
過去分の処理が終わったら、そこで経理の立て直しが完了するわけではありません。
翌月から再び遅れれば、同じ状態に戻ってしまいます。
通常月へ追いついた段階で、
- 資料の提出期限
- 記帳の完了日
- 確認事項への回答期限
- 残高確認日
- 月次決算の完了日
- 社内と経理代行の役割分担
を決めます。
「過去分を処理する緊急対応」から「毎月遅れずに経理を回す通常運用」へ切り替えることが重要です。
公認会計士の視点|「いつ始められるか」より「どこまでを完了とするか」を決める
経理業務が遅れていると、どうしても「最短でいつから対応してもらえるか」が気になります。
しかし、立て直しでは開始日だけでなく、何をもって完了とするのかを明確にすることが重要です。
例えば、
「6月分の記帳を入力した」
だけでは、預金や売掛金・買掛金の残高確認、未処理事項の解消などが残っている可能性があります。
一方、
「6月の仕訳入力、主要残高の確認、未処理事項の整理まで終わり、月次資料を確認できる」
という状態であれば、次の月へ進む基準が明確になります。
急ぎの依頼ほど、作業量だけを追うのではなく、
どの月まで、どの状態へ戻すのか
を依頼先と共有することが大切です。
よくある質問
Q1. 数カ月分の記帳がたまっていても経理代行へ相談できますか?
対応範囲は依頼先によって異なりますが、まず未入力期間、取引量、資料の状態を整理して相談します。
過去分の記帳だけが残っているのか、残高確認や月次決算まで必要なのかも伝えると状況を共有しやすくなります。
Q2. 資料が全部そろっていなくても相談できますか?
最初からすべての資料がそろっているとは限りません。
現在ある資料と不足している資料を分け、何が足りないのかを共有します。
Q3. 経理代行へ依頼すれば会社側の作業はなくなりますか?
すべてなくなるとは限りません。
取引内容の確認、資料の回収、社内承認など、会社側でしか対応できない業務があります。
Q4. 急ぎの場合は何から整理すればよいですか?
最初に「最後に月次決算が完了している月」を確認します。
そのうえで、残っている業務、必要資料、未処理事項を整理します。
Q5. 過去分だけ経理代行へ依頼することもできますか?
対応方法は依頼先によって異なります。
過去分だけを依頼する場合でも、その後の当月業務を誰が担当するのか決めておかないと、新しい遅れが発生する可能性があります。
まとめ
経理業務がすでに遅れている場合でも、外部支援を利用して立て直す方法があります。
ただし、急ぎで経理代行へ依頼するときほど、最初に現在の状況を整理することが重要です。
確認したいのは次の6つです。
- 最後に完了している月
- たまっている業務
- 必要資料の状態
- 確認待ちや不明事項
- 会社側の窓口と確認者
- いつまでにどこまで戻したいか
「経理が何カ月遅れているか」だけではなく、何が完了しており、何が残っているのかを明確にすると、外部担当者へ状況を共有しやすくなります。
また、過去分を処理している間も現在の経理業務は発生します。
過去分の立て直しと当月業務を分け、新しい遅れを増やさない状態へ切り替えることまで考えることが大切です。
「記帳が数カ月分たまっている」
「月次決算が遅れている」
「どこから経理を立て直せばよいか分からない」
このような場合は、現在どこまで処理が完了しているのかを整理するところからご相談いただけます。
まるまる経理では、現在の経理状況や業務量を確認したうえで、対応可能な範囲を整理し、過去分の立て直しから通常運用への移行をサポートします。
