経理代行を導入したものの、
「思ったほど社内の負担が減らない」
「確認のやり取りが増え、かえって手間がかかる」
「月次資料が予定どおり完成しない」
と感じる会社があります。
こうした問題は、経理代行会社の品質だけが原因とは限りません。
社内と経理代行会社の役割が曖昧だったり、資料提出や承認のルールが整っていなかったりすると、どの会社へ依頼しても運用が滞りやすくなります。
この記事で扱うのは、会社選びや契約条件ではありません。
経理代行を導入した後に起こりやすい、社内運用上の失敗に焦点を当てます。
会社選びから契約、引き継ぎ、乗り換えまでの注意点を確認したい方は、親記事をご覧ください。
合わせて読みたい:経理代行で失敗しないための完全ガイド|導入前後に知っておきたい注意点
経理代行で失敗する会社は社内運用が曖昧になっている
経理代行は、社内の作業を外部へ分担するサービスです。
契約しただけで経理業務が自動的に回るわけではありません。
経理代行会社が記帳や請求書管理、支払データ作成などを担当しても、取引内容の確認、資料提出、支払承認、経営判断は社内で行う必要があります。
導入後に失敗しやすい会社には、次のような共通点があります。
- 導入目的が社内で共有されていない
- 社内と経理代行会社の役割分担が曖昧
- 証憑提出や承認のルールが統一されていない
- 経理代行会社へ丸投げしている
- 同じ手戻りや質問を放置し、社内ルールを見直していない
ここからは、それぞれの特徴と回避策を詳しく見ていきます。
1.導入目的が社内で共有されていない
経理代行を導入した目的が社内で共有されていないと、部署や担当者によって対応がばらばらになります。
経営者は「月次決算を早めたい」と考えていても、現場の担当者が導入目的を理解していなければ、請求書や領収書の提出方法は変わりません。
経理担当者の負担を減らすことが目的でも、従来の社内作業をそのまま残していると、経理代行会社と社内の両方で同じ作業を行うことがあります。
「経理代行を入れた」という事実ではなく、導入後に何を変えたいのかを共有する必要があります。
例えば、目的を次のように具体化します。
- 社長が行っている振込データ作成を外部へ移す
- 翌月10日までに月次資料を確認できるようにする
- 経理担当者が休んでも業務が止まらない状態にする
- 紙で回収していた証憑をクラウド上に集約する
- 社内担当者は入力作業ではなく、確認業務に集中する
目的が明確であれば、現在の運用がうまくいっているかも判断しやすくなります。
回避策
導入目的を一文で整理し、経営者、社内担当者、経理代行会社の間で共有します。
目的を増やしすぎず、導入後に優先して改善したい項目を一つか二つに絞ると、運用状況を確認しやすくなります。
2.社内と経理代行会社の役割分担が曖昧
経理代行で最も起こりやすい失敗の一つが、役割分担の曖昧さです。
「経理業務を任せる」とだけ決めても、実際の業務には複数の工程があります。
例えば、支払業務には、請求書の受領、内容確認、支払承認、振込データ作成、最終承認、会計処理があります。
どこまでを経理代行会社が行い、どこからを社内が行うのかが決まっていなければ、作業の重複や対応漏れが起こります。
| 業務 | 経理代行会社 | 社内 |
|---|---|---|
| 請求書の回収状況確認 | 対応可能 | 未提出時の社内確認 |
| 支払内容の確認 | 形式・金額を確認 | 取引の妥当性を判断 |
| 振込データ作成 | 対応可能 | 内容確認・最終承認 |
| 記帳 | 対応可能 | 不明取引への回答 |
| 月次資料作成 | 対応可能 | 数値確認・経営判断 |
会社ごとに役割分担は異なりますが、誰が最終的な判断を行うかは必ず決める必要があります。
回避策
業務名だけでなく、作業工程ごとに担当者を決めます。
「請求書管理は経理代行」のような大まかな分け方ではなく、「請求書を誰が提出し、誰が内容を確認し、誰が承認するか」まで整理します。
担当者が不在の場合の代替担当者も決めておくと、業務が止まりにくくなります。
3.証憑提出や承認のルールが統一されていない
経理代行会社が処理を進めるためには、請求書、領収書、経費精算資料などが期限までにそろっている必要があります。
しかし、資料提出のルールが決まっていない会社では、部署や担当者によって提出方法が異なります。
ある部署はメール、別の部署はチャット、経営者は紙で提出するという状態では、資料が未提出なのか、別の場所に届いているのかを判断できません。
支払承認についても、承認者や回答期限が決まっていなければ処理が止まります。
次のような状態は、月次決算の遅れや支払漏れにつながります。
- 証憑の提出先が複数ある
- 提出期限が決まっていない
- ファイル名や保存場所が統一されていない
- 支払承認を誰へ依頼するか分からない
- イレギュラー取引の相談先が決まっていない
回避策
資料の提出方法、提出先、期限を一つにまとめます。
「毎月5日までに、指定されたクラウドフォルダへ保存する」など、誰でも同じ行動を取れるルールにします。
例外的な取引については、誰が判断するかをあらかじめ決めておきます。
月次決算が遅れている場合は、経理代行会社の作業だけでなく、資料提出や社内承認の工程も確認してください。
合わせて読みたい:経理代行で月次が遅れる罠!失敗事例5選と契約前の対策
4.経理代行会社へ丸投げしている
経理代行は、社内の経理作業を減らすためのサービスです。
ただし、すべての判断や承認を外部へ任せることはできません。
経理代行会社は、取引の背景や経営者の意図をすべて把握しているわけではありません。
不明な入出金、通常と異なる支払、経費として認めるか判断が必要な取引などは、社内で確認する必要があります。
社内の確認担当者が決まっていないと、経理代行会社から質問が来るたびに回答先を探すことになります。
その結果、次のような問題が起こります。
- 不明取引が残り、月次資料が完成しない
- 支払承認が遅れる
- 仮の勘定科目で処理されたままになる
- 経営者が数字を確認しなくなる
- 経理代行会社への不満だけが増える
経理代行会社へ作業を任せることと、経理管理そのものを放棄することは異なります。
回避策
社内に最低一人、経理代行会社との窓口となる担当者を置きます。
担当者はすべての実務を行う必要はありません。
不明取引への回答、支払の承認、月次資料の確認など、社内でしかできない判断を行います。
経営者や管理責任者も、月次資料を確認する機会をなくさないことが大切です。
5.同じ手戻りや質問を放置し、社内ルールを見直していない
経理代行の導入直後は、取引内容や社内ルールを確認するため、経理代行会社からの質問が増えることがあります。
導入時の確認は必要ですが、同じ質問や手戻りが毎月繰り返されている場合は、社内ルールが十分に整理されていない可能性があります。
例えば、次のような状態です。
- 同じ不明取引について毎月確認が発生している
- 社内と経理代行会社で同じ資料を作成している
- 証憑提出のルールが部署ごとに異なる
- 連絡先や回答担当者が統一されていない
- 月次資料を確認する担当者が決まっていない
このような問題をそのままにすると、経理代行会社からの確認が減らず、社内の負担も軽くなりません。
例えば、毎月同じ取引先への支払いについて勘定科目の確認が発生している場合は、判断結果をその場限りの回答で終わらせず、次回から使える処理ルールとして残す必要があります。
証憑提出の方法が部署ごとに違う場合は、メール、チャット、紙などに分かれている提出先を一つに統一します。
社内と経理代行会社の双方で同じ管理表を作成している場合は、どちらを正式な管理資料とするかを決めます。
回避策
同じ質問や手戻りが発生したときは、その都度対応するだけでなく、原因を記録します。
主に見直したいのは次の点です。
- 繰り返し発生する質問を処理ルールとしてまとめる
- 証憑の提出先・方法・期限を統一する
- 不明取引への回答担当者を一本化する
- 社内と経理代行会社で重複している作業をなくす
- 月次資料の確認担当者と確認期限を決める
社内ルールは、最初から完全な状態にする必要はありません。
運用を始めてから分かった問題を一つずつルールへ反映することで、質問や手戻りを減らし、経理業務を安定させやすくなります。
社内運用がうまくいっているか判断するポイント
経理代行の導入効果は、「作業を任せている」という事実だけでは判断できません。
次の状態になっているかを確認します。
| 判断するポイント | 確認内容 |
|---|---|
| 資料提出 | 証憑が決めた期限・方法で集まっている |
| 確認対応 | 不明取引への回答先が明確になっている |
| 質問・手戻り | 同じ質問や修正が毎月繰り返されていない |
| 月次処理 | 月次資料が予定した時期に完成している |
| 役割分担 | 社内と経理代行会社の作業が重複していない |
| 数字の確認 | 月次資料を確認する社内担当者が決まっている |
予定どおり運用できていない項目があれば、経理代行会社の処理だけでなく、社内の資料提出、回答、承認の流れも確認します。
同じ質問や手戻りが繰り返されている場合は、その都度回答するだけでなく、次回から同じ判断ができるように社内ルールへ反映することが大切です。
引き継ぎ時に必要な情報が不足している場合は、日常の運用ルールだけを変更しても解決しないことがあります。
合わせて読みたい:経理代行への引き継ぎで失敗する5つの原因と対策
公認会計士の視点|経理代行は社内体制と組み合わせて機能する
「経理代行を導入したのに、思ったほど楽にならない」という相談を受けることがあります。
状況を確認すると、経理代行会社が作業を進めるために必要な資料や回答が、社内から提供されていないケースも少なくありません。
請求書の提出が遅れれば支払処理は進みません。不明な取引への回答がなければ、月次資料も完成しません。
だからといって、経理代行を利用する意味がないわけではありません。
社内で行うべき判断と、外部へ任せられる作業を分けることで、社内担当者の負担を大きく減らせます。
経理代行は「何もしなくても経理が回る仕組み」ではなく、「社内の判断と外部の実務を組み合わせて経理を回す仕組み」です。
役割とルールを整えることで、導入効果を得やすくなります。
よくある質問
Q1. 経理代行を利用しても社内担当者は必要ですか?
はい。
資料提出、不明取引への回答、支払承認、月次資料の確認など、社内でしか行えない業務があります。
専任の経理担当者が必要とは限りませんが、経理代行会社との窓口になる担当者は決めておく必要があります。
Q2. 経理代行会社からの質問が多いのは失敗でしょうか?
導入直後は、取引内容や社内ルールを確認するため、質問が増えることがあります。
同じ質問が毎月繰り返される場合は、判断基準や処理ルールが共有されていない可能性があります。
質問内容を記録し、ルールとして整理することで、確認回数を減らせます。
Q3. 同じ質問や手戻りが毎月発生する場合は、どうすればよいですか?
同じ質問が繰り返される場合は、その都度回答するだけでなく、判断した内容を次回から使える処理ルールとして残します。
例えば、同じ取引について勘定科目の確認が毎月発生する場合は、判断基準を記録し、社内と経理代行会社で共有します。
あわせて、次の点も整理してください。
- 証憑の提出先・提出方法・期限
- 不明取引へ回答する社内担当者
- 勘定科目や処理方法の判断基準
- 月次資料を確認する担当者と期限
- 社内と経理代行会社のどちらが正式な資料を作成・管理するか
同じ作業を双方で行っている場合は、正式な管理資料と担当者を一つに決めることで、二重作業や確認の手戻りを減らせます。
まとめ
経理代行で失敗する会社には、導入後の社内運用に共通する問題があります。
- 導入目的が社内で共有されていない
- 社内と経理代行会社の役割分担が曖昧
- 証憑提出や承認のルールが統一されていない
- 経理代行会社へ丸投げしている
- 同じ質問や手戻りを放置し、社内ルールを見直していない
経理代行は、契約しただけで経理業務が自動的に回るサービスではありません。
外部へ任せる作業と社内で行う判断を分け、資料提出、確認、承認の流れを整える必要があります。
導入後に同じ質問や修正が繰り返されている場合は、個別に対応し続けるのではなく、判断基準や提出方法を社内ルールとして残すことが大切です。
運用上の問題を一つずつ整理することで、確認作業や手戻りを減らし、経理代行の効果を得やすくなります。
現在の経理代行の運用にお悩みの方や、社内と外部の役割をどのように整理すべきか分からない方は、まるまる経理へお気軽にお問い合わせください。
現在の業務フローや社内体制を確認したうえで、無理なく継続できる運用方法をご提案します。
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