経理業務では、仕訳や会計ソフトへの取込データを作成した後にも、内容に誤りがないか確認するレビュー工程が必要です。
特に、複数のExcelファイルや多くの仕訳データを扱う月次業務では、確認する箇所が増えやすく、担当者が画面を見ながら一つずつ確認しているケースもあります。
今回ご紹介するのは、こうしたレビュー業務について、
「機械的に確認できる項目」と「人が判断すべき項目」を分け、確認工程そのものを標準化した事例です。
すべての確認を自動化するのではなく、ルールで判定できる確認は仕組みに任せ、異常候補や新しいパターンなど、判断が必要な部分を人が重点的に確認する運用へ見直しました。
改善前の課題|確認項目が多く、レビューが担当者の経験に依存
月次経理では、仕訳データが作成できれば業務が完了するわけではありません。
たとえば、
- 対象月は正しいか
- 必要なデータが漏れていないか
- 日付や金額に異常がないか
- 勘定科目や税区分は正しいか
- 部門や取引先などの設定が漏れていないか
- 元データと仕訳データの合計が一致しているか
- 同じデータが重複していないか
といった確認が必要です。
Excelを使った業務では、数式のエラーや貼付範囲のずれ、必要なデータの欠落なども確認しなければなりません。
こうした確認を担当者の目視だけに頼ると、確認範囲が広くなるだけでなく、「どこまで確認するか」が担当者の経験や注意力に左右されやすくなります。
業務量が増えた場合や担当者が変わった場合にも、同じ品質で確認を続けることが難しくなります。
そこで今回の業務では、行数、数式、部門設定、重複、合計差異など、毎月確認すべき項目を整理し、レビュー工程そのものを仕組み化しました。
機械が確認する項目と、人が判断する項目を分ける
今回の改善で重視したのは、すべてを自動化することではありません。
チェック項目ごとに、
ルールで判定できるものは機械的に確認する
背景や理由を考える必要があるものは人が確認する
という役割分担を明確にしました。
対象月、日付、金額、必須項目、データ間の合計などは、あらかじめ条件を設定することで機械的に確認しやすい項目です。
一方で、
- 今月だけ金額が大きく増えた理由は何か
- これまでなかった取引をどのように処理するか
- 元資料そのものに違和感がないか
- 過去と異なる処理が必要ではないか
といった内容は、単純な条件だけでは判断できません。
そのため、定型的な確認を仕組みに任せ、人は判断が必要な項目に時間を使えるようにしました。
実際の処理では、仕訳を作った後にも複数の観点で確認する
例えば、請求データから会計ソフト取込用の仕訳を作成する業務では、取込前に、
- 対象月
- 日付
- 金額
- 勘定科目
- 税区分
- 部門などの管理項目
について、想定した条件に沿っているかを確認します。
さらに、元データと仕訳データの合計や管理番号などの整合も確認します。
条件に合わないデータや不整合が見つかった場合には、そのまま次の工程へ進めるのではなく、原因を確認して修正したうえで再実行します。
このように、「データを作る」だけでなく、「作られたデータが想定どおりかを確認する」工程まで組み込むことが今回の改善のポイントです。
異常があれば、次の工程へ進ませない
レビューでは、異常を発見するだけでなく、異常が残った状態で後工程へ進ませないことも重要です。
警告を表示するだけでは、担当者が見落とした場合、そのまま誤ったデータを会計ソフトへ取り込んでしまう可能性があります。
そのため、一部の重要なチェックでは、
正常
↓
次工程へ進む
という流れに対して、
異常を検出
↓
処理・出力を停止
↓
原因を確認
↓
修正
↓
再実行
という流れにしています。
たとえば、出力対象となるデータ範囲でExcelエラーが検出された場合には、会計ソフト取込用のファイルを作成せず、処理を停止します。
また、日付や金額、勘定科目、税区分などについても、取込用データとして問題がないかを確認します。
異常を知らせるだけではなく、異常が残った状態で成果物を作りにくくするフェイルセーフの考え方を取り入れています。
自動チェックを過信せず、人によるレビューも残す
自動チェックは、人によるレビューをなくすためのものではありません。
機械的に判定できる項目を増やしても、経理には人が判断しなければならない事項が残ります。
たとえば、
- 売上や費用が前月から大きく変動している
- これまで存在しなかった取引パターンが発生している
- 過去にない摘要や取引先が出てきた
- 数値上は問題がなくても経済的に違和感がある
- 差異が発生しているが原因を機械的に特定できない
といったケースです。
今回の業務でも、新しい処理パターンや原因不明の差異などは、定型的な自動処理だけで完結させず、人が確認する項目として分けています。
つまり、
機械に任せるのは「ルールで判定できる確認」
人が見るのは「理由や背景を考える必要がある確認」
という考え方です。
自動チェックは人をなくすための仕組みではなく、人が本当に確認すべき項目へ集中するための仕組みとして利用しています。
改善後|目視のレビューから、異常候補の重点確認へ
今回の改善では、単にチェック項目を増やしたのではなく、レビューの進め方そのものを見直しました。
| 改善前 | 改善後 |
|---|---|
| Excelや仕訳を広く目視確認 | 機械的に判定できる確認を仕組み化 |
| 担当者の経験によって確認方法が変わりやすい | 確認項目と停止条件をあらかじめ定義 |
| 異常がない箇所も含めて広く確認 | 異常候補・新規パターンを重点確認 |
| ミス発見後に後工程から戻ることがある | 一部の重要な異常では出力前に停止 |
これにより、
「全体を目で見ながら異常を探すレビュー」
から、
「仕組みで機械的な確認を行い、人は例外や判断が必要な項目を重点的に確認するレビュー」
へ変更しました。
経理の品質は「注意深く作業する」だけでは安定しない
経理では、担当者が注意深く作業することはもちろん重要です。
一方で、品質を個人の経験や注意力だけに依存すると、担当者が変わったときや業務量が増えたときに、同じ品質を維持することが難しくなります。
単に作業を自動化するだけでなく、「正しく処理できているかを、どう確認するか」まで仕組みにすることが、経理業務を安定して運用するうえでは重要です。
まるまる経理では、
スタッフによる実務処理
↓
仕組みによる機械的な検証
↓
例外・異常候補の確認
↓
必要に応じた公認会計士レビュー
を組み合わせ、担当者個人の経験だけに依存しにくい経理体制を設計しています。
関連する業務改善事例
仕訳を作成する工程そのものを効率化・標準化した事例については、
でご紹介しています。
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